*転載

第5回動物愛護法改正PT

(2024.1.22)

1)「緊急一時保護」「飼育禁止命令」について関係者ヒアリング:
①運用面での課題について(警察庁・小野寺様)


◼️動物虐待事犯についての現状

  • 令和4年(2022年)動物虐待事犯については、166事件、187人を検挙。令和3年(2021年)と比較しほぼ同数。令和2年(2020年)の動物愛護法改正により、動物虐待罰則強化を背景として、動物愛護に関する国民の関心が高まっている、という事もあり、近年は検挙事件数が増加傾向にある。
  • 警察庁では、動物虐待事犯について、都道府県警察に対し迅速な捜査による被疑者の検挙を要請している。
  • 自治体の動物愛護管理部局との連携の強化を指示すると共に、環境省が策定した動物虐待等に対するガイドラインを周知するなど、適切な対応を指示している。

■「緊急一時保護」等について運用面での課題

  • 警察としては、所有者が判明しない犬猫、負傷動物等が拾得された場合、一時的に預かるという事はあるが、動物を継続的に飼養できる施設や、動物について専門的知識を有する人員などは有しておらず、虐待された動物を預かることは想定していない。
  • 動物虐待衰弱等のレベルの判断も専門知識を有していない。


②英国の緊急一時保護制度について(公社)(*英国王立動物虐待防止協会)(RSPCA)国際部長Paul Littlefair氏からヒアリング)


■緊急一時保護の法的根拠:動物福祉法2006

緊急一時保護の制度に関しては、動物福祉法2006に明記されている。

  • 獣医師の判断のもとで査察官や警察が保護できる。
  • 例外的に獣医師を待つことが現実的でなく緊急的に保護が必要な場合は、査察官や警察の判断で押収できる。

つまり、所有権に関わらず緊急一時保護が可能。
しかし、裁判で有罪にならない限り没収(所有権の剥奪)はできない。無罪の場合は、返還。

■英国での一般的な虐待対応の流れ

国民からの相談苦情等は、RSPCAナショナルコールセンターに集約。相談内容により対応部署が変わる。例えば・・・

  • 「犬が放浪していた」「怪我をしていた」⇒アニマル(ドッグ)ウォーデンへ(地方行政機関)
  • 飼養方法など簡単な内容⇒コールセンター職員が対応
  • 動物の救助や虐待疑い相談の場合(平易な案件)⇒アニマルレスキューオフィサーが対応
  • 動物の救助や虐待疑い相談の場合(深刻な案件)⇒RSPCA査察官が現場対応

■RSPCA査察官が対応した場合の流れ

  1. 詳細情報の確認(いつ、どこで、誰が、何を、どうしたかなどの情報確認、以前査察に入ったか、電話内容が正確かどうか等)
  2. 査察計画
  3. 現場訪問
  4. 動物の状態を確認(訪問した際に中に入ることを拒否された場合は、玄関先に連れてきてもらい必ず動物の状態を確認する)
  5. 飼養環境を確認

査察した約6割は問題ない、もしくは簡単な助言で解決するが、やや深刻な事案については「動物福祉評価表(Animal welfare assessment form)」を使用し、より深刻な事案については「動物福祉警告票(Animal welfare assessment WARNING NOTICE)」を使用し改善を促す。

  1. 評価表及び警告票に基づいて改善されているかの確認の為、1週間以内に再訪問。
  2. 非常に深刻な問題については、動物はただちに緊急保護され、所有者は法に基づき起訴される。

RSPCA査察官には法的権限がないため、強制立ち入りや緊急保護が必要と判断した場合は、警察と協働する。そのため、RSPCAと警察は事前に協働協定を締結している。

■虐待等の主な評価方法
虐待をどう評価しているかは、動物福祉法2006の第9条に5つの自由を発展させた動物の5つのニーズが明記されている。これらがしっかり満たされているかどうかが、最初の評価ポイントとなる。

  • 動物の5つのニーズ(第9条)
     (a)
    適切な環境に対するニーズ
     (b)
    適切な食事に対するニーズ
     (c)
    正常な行動パターンを示すことができることへのニーズ
     (d)
    他の動物と共に、又は他の動物から離れて飼育される事へのニーズ
     (e)
    痛み、苦しみ、怪我、病気から保護されることへのニーズ

動物虐待についても第4条に「不必要な苦痛を与えること」とある。

  • 苦痛の立証⇒獣医師による証言
  • 不必要の立証⇒獣医師のほか、司法関係者等からの証言

■保護した動物の移動・保管について

  • 保護した時に飼養されていた場所、または適切と考える他の場所。

英国には、大規模な保護団体があり、多くはそこに収容される。
行政や警察の収容スペースがあっても小さいので、通常、警察や行政で一時保護したとしても、その後、民間団体に保護依頼がある。

出来る限り速やかに動物を安全な場所に移動させる。特に死体があった場合はすぐに移動させる。つまり、基本は安全な場所への移動が最優先。

馬などの大型動物の場合など、すぐに移動できないケースは、飼われていた場所で民間団体のスタッフがその場で世話をすることもある。その際、トリアージをして状態の悪い個体から移動する。

●緊急一時保護の問題点は?
 ⇒ 保管場所の確保。そのため、平時から他機関や他団体との連携など準備をすることが重要。

●緊急一時保護と同時に所有権も奪えるのか?
⇒奪うことはできない。有罪が確定した場合は所有権を剝奪できる。(動物福祉法2006 33条)

●虐待疑いの現場への立ち入りや、真夏に鍵がかけられた車内等に放置された動物を発見した場合の対応は?
⇒強制的に立入りをする場合は、警察官と(法律上の)査察官は司法機関に令状を得て実施。
所有者の財産を壊さなければ救助できない場合は、基本的に警察が対応。
警察の到着まで間に合わない緊急を要する場合は、警察に電話で車等の窓を壊してレスキューする旨を必ず伝えて了承を得て実施する。


(2)意見交換

・動物は、証拠物としての押収となるのか?
⇒(町屋様)英国では証拠品としての押収となる。

・立入を拒んでいる飼い主にも動物を玄関口まで連れてきてもらう、という事だったが、それは査察官のコミュニケーションによって可能にしているのか、警察と一緒に行っているから飼い主も最終的には断れないのか?
⇒(町屋様)最初の訪問は警察とはいかない。本当に虐待なのかどうかという判断をするための訪問だから。行って虐待かどうか判断するためには、被害にあっているという動物をしっかり見ることが最優先事項。室内に入れなくても動物をみせてくれ、と必ずいう。それでも断られるようなら警察と共同で立ち入りをしていく。

・保護した動物を民間に預けるときの費用はどうしているのか?
⇒(町屋様)費用に関しては、RSPCAでほとんど賄う。有罪になった場合、経費に関して請求できるが、ケースバイケースだがRSPCAはほとんどしていない。無罪になったら請求することはできない。

・虐待者である所有者を排除することはできるのか?
⇒(町屋様)その場で世話をする場合は、所有者は身柄を確保されているか、虐待で訴えられていることが多いので、邪魔をするような方は、その場にいないか、法律で「保護した時に飼養されていた場所で飼養管理できる」と決められているから、中に入らないようにできるのではないか。

・家宅捜索時に入った時点で、所有権放棄させて、そのままセンターに収容すればかなり問題が解決する。勿論法律改正をどうするか、ですが、環境省が各県、動愛センターに家宅捜索時に所有権放棄をさせて収容するのことをスムーズにやって欲しい、と徹底するのはどうか。
⇒(環境省)虐待事案に際して必要に応じて所有権放棄を働きかけるというのは環境省の虐待ガイドラインの中には明記がある。
環境省が自治体に研修する際にも、所有権の壁で、現に被虐待動物が虐待者の元にいる訳ですから、その状態を脱するためにも必要に応じて、所有権放棄を働きかけていきましょう、ということは常に言っている。ただ、所有権放棄は相手の同意があっての事なのでスムーズにいかない事例もある事は聞いている。

<その他意見>

・日本の場合は、沢山虐待されている動物がいるのに、ごく一部だけを裁判で有罪にするというケースばかりなので、全ての動物を救うには裁判の没収言い渡しでは無理だと思うので、飼育禁止命令が必要だと思っている。

・家宅捜索時に動物たちが虐待されている状態にあるかを確認することは、その後の処罰に関わってくる。家宅捜索時に獣医師・動愛センター共に同行するよう、全案件で徹底すべき。

・行政が適切に虐待を判断してくれない。行政が「やらなくはいけない」と法律を書き換えてほしい。罰則も付けてほしい。行政を厳格に運用していくところにより注力してほしい。

・ドイツでは、動物福祉をしっかり学んだ者が動物福祉に特化した公務員獣医になる制度。
研修できる機関の構築が必要。


(3)環境省よりマイクロチップ進捗状況の報告

20231222日に政令を改正。令和641日からマイクロチップの手数料を改訂。
電子の申請に関しては300円を400円というような改訂となる。

*転載おわり