寺で掃除をしていると中年のサラリーマン風の男が除霊をして欲しいとやってきた。「はあー?』である。除霊って神主が持っているびらびらでなんかお祓いみたいなことするんですか。(面倒くさい人だなあ)有名なK寺だとかN寺だとかT寺なんかの方でやってくれるんじゃないですかと言うと。

 

既にそこでやってもらったんですけど、今いち効果がないんですという。(そこでダメなら、うちの寺なんかもっとダメだよ)住職は出かけているし、副住職は本業の音楽活動で忙しいし。そもそも、霊なんてあなたのどこにも見えませんよ。いなくなちゃったんじゃないですか。

 

いると言い張る。何で、霊がついていると思うんですかと聞くと。仕事でしくじって会社に迷惑をかけた(どうやら営業の人らしい。このクソ暑いのにスーツを着ている)。また、最近、離婚したという。それも今年の2月に親を亡くしたことから。色々悪いことが続いているという。

 

一瞬、統一教会のように壺かお守りでもあれば、高額で買ってもらえるのになあなんて思いながら。そもそも、札もお守りも何にも置いてない。50センチほどの賽銭箱も私が外に出さなきゃ置いていない。

 

仕方がないので色々言って追い返すことに。「そもそも私は霊魂なんか見たことないです。見たことないのに除霊をしてくれと言っても無理でしょ、それに私がやっているお釈迦さんの宗教は霊魂を認めてないのよ。全ての成り立ちは、御縁だけなんよ(ふるさとの岡山弁が出る)。じゃけー、仏教的に言うとあなたのお母さんが95歳で亡くなったのは、単に寿命がきたから。あんたが離婚したのは夫婦間の問題があったんでしょ。仕事をミスったのも原因があるはずとどうだと言わんばかりに突き放す。

 

しかし相手は、なんかしてくださいと食い下がってくる。本当に面倒くせー。仕方がないから警策(坐禅の時に肩を叩く棒)を持ち出して除霊をしますと言って(霊なんて元々ないのにと思いながらも本人が納得するならまあいいかと)、「降伏一切大魔最勝成就(ゴウブクダイマイッサイサイショウジョウジュ)」ととなえながら、二回肩をバシバシ叩いた(痛いけどスッキリする)。

 

いかがですかと聞くと、何となくスッキリしたようなという(当たり前だ。普段やられないことをやられたのだから)。おいくらですかと言うから、金はいらんよと言ったが。ぜひにと言うので、じゃあ賽銭箱に入れてってと言うと財布から百円玉を一個出して帰って行った。どうやら除霊は失敗に終わったようだ🤣