「タイに渡った鑑識捜査官」  戸島 国雄


警視庁で働いていたベテラン捜査官が、
妻の死をきっかけに、一人でいても寂しいし…と
JAICAでのシニアボランティアプログラムに参加して、
タイの現地警察を指導して、日本式鑑識を伝えていく、という私好みの本。

前任者は引き継ぎもせず去っていき、タイ語も分からず右往左往。
それまでのシニアボランティアが、ただ眠たくなる講義だけしていたのを、
こんな上から目線じゃなんの役にも立たない!!と
タイ警察と実際に事件現場に赴いて自分も捜査に参加することで
タイ警察の人々の心をいつの間にかつかみ、
一度の帰国を挟んで、気づいたらタイ警察大佐にまでなって
12年間?かな、タイ警察で働いていた、という
根性の入ったおじさんです。 尊敬!!


タイでは死体が出ると警察が行く前に、死体を搬出するボランティアの葬儀団が
勝手に死体をいじってたり、マスコミが写真をとったり
現場を保存するという意識がなかったので
そこから日本式に現場を保存して、死体を触る人はゴム手袋をして…というところから
日本式を教えるのではなく、伝えていこうと日夜奮闘。


ところどころ興味深いのは、
たとえばタイの葬儀団。
タイでは死体の処理を手伝うことで仏教的功徳が得られる、と考えられているので
なり手はいっぱいいるらしい。
さらにマスコミが来る前に死体のうまい写真を撮っておくと
それが高値で売れるという小遣い稼ぎもあるらしい。
文化ですな!!

ちなみにおじちゃんは、結構果敢に現地の屋台とかでも食べて、
本当に危ない目に合っている。
くだらなすぎてここで紹介しなかった世界各国をまわっていろんなものを食べては
おなかを壊している女レベルじゃなく、
普通に手術をしてぎりぎり助かったレベルの体験をしていたり、
とにかくかっこいいのだ。

極めつけはタイのリゾート地を襲った大津波の時。
とにかく一人でも多くの身元を明らかにしようと、
鑑識官としての経験から、
一人ひとり丁寧に指紋をとる方式ではなく、
あえて死体の指紋の部分の皮をはいだり、指をきりとるという
一部の人には遺体への尊厳がないと非難されかねない方法で指紋を採取し、
身元判明の為に指紋をとりまくる。
タイでは15歳になるとIDカード作成のため指紋を登録するので、
指紋さえわかればどんなに ひどい状態になっていても身元の判明は不可能ではないのだ。
実際タイに行ったことがあるからわかるが、タイは本当に暑い。
死体の尊厳と言っている間に死体は全部腐って指紋なんて全く取れなくなることは確実だ。
彼がそれまでに気付いてきた信頼関係のおかげで
この方式にもちゃんとタイ人の部下は付いてきてくれ、
タイ警察チームは身元判明に多大な貢献をした。
まさに職人!! 感涙を禁じえない。


日本には指紋登録がないから、
東日本大震災の時はこのような荒技は使えなかったようだけれど、
この熱さ!! 
正直、本一冊では彼の活躍の一端しか見ることはできない。
彼自身、そんなにいちいちのエピソードを拾おうともしていない。
こういう人、かっこいいな、と素直に思う。


それから、軽いミステリーを見て、
鑑識を馬鹿にしてるのか?? って時々イラついてみる。
「謎解きはディナーの後で」 東川篤哉



売れましたね。ドラマも調子が良かったようです。
ブームが去ってから読む、これが私です。


あらすじ。
お金持ちの御曹司上司と事件現場を訪れる女刑事はもっとお金持ちのお嬢様。
ちょっとあほな二人にはとけない謎を、毒舌の執事が解決してくれる。
我ながらうまいこと短くまとめたな。


読後感としてはとても楽です。
夜寝る前、歯を磨きながら片手で読むのにはちょうどいい。
個人的に寝る前にはあまり重いものを読みたくないので(内容も、重量的にも)
このサイズの、この程度の内容はとてもよい。


けど、満足するかっていったら正直「…」です。
謎解きってほど謎解きでもないし、こういうなんというか軽いミステリーは
発想にはいつもすごいね、って思うけど、
本来の警察の捜査に失礼じゃないかな~~って思うんだよね。
そんな気づきで推論だけで決まっちゃう??みたいな。
まあそれは承知の上で読んでるからいいんですけどね。


問題は執事ですよ、執事。
この毒舌執事が、お嬢様に向かって「あほですか」とかいうのが受けているんだけど、
正直ねぇ。それが違和感あって、あって。
昨今の風潮と言えばそれまでだけど、


執事は毒舌じゃないだろ!!
ご主人さまに従順であれ!!


執事物と言えば、イギリスのユーモア作家、P・G・ウッドハウスの
ジーヴスものに尽きると思う。
ジーヴスは、主人公のあほぼっちゃま(本当のあほだが憎めないやつ)の
新しすぎる服装センスだけはどうしても許せないものの、
いつも冷静にして沈着、博識にして慧眼の士で非の打ちどころのない使用人。
ウッドハウスの作品では殺人事件だのぶっそうなことはほぼおこらないけど
日常のささいな謎やごたごたを切れ者執事が
最終的には見事に解決しちゃう。
あほの主人公がしょっちゅう状況を悪くするのがまた面白くて、
今更ながらちょこちょこシリーズを集め始めている。

というわけで、ウッドハウス作品の面白さがあると、
どうもこの執事のしつけのなっていない感じがだめで…

今どきなのでしょう。っていうかいまどき執事なんているのかな??
文章や、軽く読むにはいいけど、なんだか手放しで
これお勧め!!というレベルがすごくいやだな。 偉そうですな。

仕方ない、だって私には切れ者執事と呼んでいい
下僕が一人おりますのでな…


忠義者です☆


余談だけど、お金持ちと言えば筒井康孝の富豪刑事が個人的には一番!!
筒井康孝節がききまくった短編集一冊しか出てないのが残念だけど
悪いことばかりして財産を築いた大富豪の父が、
天使のような?息子の為に、金で解決できる問題なら、と私財をなげうって
難事件解決に協力する。
どうしてもトリックがわからない事件の時は、
容疑者が同じ方法で再び殺人に手を染めないかと
被害者と同程度の会社を作って
現行犯逮捕が出来たのはいいものの、会社が利益をあげちゃって大富豪逆におこるとか、
とにかく発想が斬新。 筒井康孝、天才すぎ。
(説明下手なわたし…)


あと、誰のなんて作品か忘れたんだけど、
アンソロジーに入ってた別の貴族探偵も面白かった。
そっちは完全に貴族?かなんかの息子が、
使用人に謎を解かせるだけの話。
でも使用人だから、まるで自分が考えたかのように謎解きをさせて悦に入ってる。
個人的にはこっちのほうがシチュエーション的に面白かった。
多分「謎解きは~」より先だったと思うのに、
「謎解きは~」が売れすぎたために、二番煎じのような扱いを受けてるんじゃないかと
いらぬ心配。


「殺人ピエロの孤島同窓会」 水田 美意子


もう、恥ずかしいよ!! タイトルからしてださださじゃん!!
かーっ!! って感じだよ!!
三村かよ!!!


あらすじ。
とんでもない設定の孤島で行われる同窓会(設定は無理ありすぎ)で
次々殺される同級生、その数、うーんと…32人プラス1人かな??
ひどい。




この本がちょっぴり話題になったのは、宝島社の2006年このミスで
この回限りで設けられた「特別奨励賞」を受賞したからなんだけど。
その理由は話の中身ではなかった。
ちょっと話の中身なのかなって、そうはいってもちょっとは期待してたんだけど、やっぱり違った。



売りは「作者が執筆当時12歳でした」ってとこだけだった。ひどい…


なんといっても文章力のひどさ。
人物が多すぎるため、混乱するのにかき分けできない筆力のなさ。
話を盛り上げるための調整で、わけのわからない行動をとる登場人物たち…


最初読もうかと思った時は、最初の数ページで駄目で、
でも今回頑張って読んでみた。
本当に「頑張って」って感じになった…



このクズ感、山田悠介や王様ゲームの人に通ずるものがある。
それで売れるんだから、本当に程度の低い人間が増えているのだな…

12歳の時にこれくらいかけたか、って言われればまあ無理だったかもしれないが
だからってお金をとっていいレベルではあきらかにないからな~~。
友達にだけ読ませて自己満足の世界にいてほしかった。


ちなみに彼女の2作目もあるらしいのだけど
そちらもやはりひどいみたいで。
芥川龍之介レベルなんて求めないけど、そもそも龍之介とか、読んだことある??って聞きたい。