昨今のコーヒー業界はカップ評価最優先みたいになっており、どちらかと言えば喉ごしや後口の良いフルーティなあっさり系のものが高評価を受ける傾向にあります。ただ、このカップ評価というのは西暦2,000年ころから徐々に市民権を得て来たものでそれ以前はと申しますと酸味・苦味・香り・コクなど5つほどの要素が強いか弱いかを判断するだけで総合的な「美味しさ」を測る尺度そのものがありませんでした。従って今ならとても評価されないエグミや泥臭さなどがあったとしても堂々と市場に出回っておりました。そのため昔からのコーヒーマニアの方の中には酸味の質の上品さや香りの高さ、後味の良さなどはどうでも良くて、寧ろまとわりつくような土の匂いがするこってり系のコーヒーを好まれる方が少なからずいらっしゃいます。その代表的なものが多分インドネシア スマトラ島のマンデリンということになるのですが、これにも実は裏がありましてそうした「昔ながらの」マンデリンでいられるコーヒーはだんだん少なくなっております。コーヒーと言うのは実際にキッチリしたセオリー通りの精製を行うとエグミや泥臭さは出て来ないですからマンデリンなのにフルーティでスッキリ系になってしまうはずなのです。「昔ながらの」マンデリンを求めるなら昔ながらの精製法を行っている農園を探すべきで、この精製法と言うのが俗に言うスマトラ式(ウエットハル)と言うことになります。これは要するにスマトラ島のアチェなど貧しい農民が自前の精製施設を持っていないため、収穫した実を果肉除去しただけでそのまま仲買人に渡していたことに起因するもので、そうした取引法がその地域の気候風土と相俟って独自の発酵に繋がっていたのでしょうか。もう20年も昔に「マンデリン・トバコ」という比較的安価なスマトラ式の商品がありました。当店ではその内容をよく知っていますので常に購入の選択肢から外れておりましたが実は今もスペシャルティとして結構な価格で生き残っております。それだけスマトラ式の豆が入手しづらいからなのでしょう。「もう今はそんな時代じゃないよ」とそんなアーシーな豆を仕入れる気にはなれずにいたのですが、出入りの商社がこのスマトラ式でフルーティさも備えた豆を輸入したというので少し買ってみることに致しました。産地がスマトラではなくスラウェシ島なので昔風の括りで言えばマンデリンではなくトラジャということになるのですが、さてどんなコーヒーなのか届いてみてのお楽しみと言うことで...。サンプルも無しでお試し買いしましたのでごく少量...、お客様の反応次第で後日正袋をいただこうかと考えております。ご興味ある方はご来店いただくか(うまく行けば)正袋の入荷するであろうひと月後くらいに通販でどうぞです。人生いろいろ、コーヒーいろいろですよね。