私は議員発第2号 

2025日本万国博覧会の大阪・関西への誘致に係る決議」に反対の立場から討論します。

 

 決議案には「大阪での開催は文化・産業の両面から国内外をリードしてきた大阪から世界中の人々の健康にかかる課題を克服し、人類の未来に向けてよりよい生活を送ることが出来る」として大きな意義があるとしています。

 

しかし、東京電力福島原発事故の収束に何百年かかるかわからない、甲状腺がんの多発など子どもの健康被害の広がりや、連日放射能の汚染水が流れ込んでいる実態を放置し、大飯・高浜原発など再稼働を推進する政府を見るとき、「健康にかかる課題・解決」には違和感を覚えるものであります。

 

さらに、加えて、万博推進者の多くがイコールカジノ賭博の推進者で、「今だけ、金だけ、自分だけ」の風潮を煽っている姿を見ていると、「美辞麗句」を用い、大ぼら吹きを演じているにすぎません。

 

  以上は決議案に対する私の印象ですが、大阪万博をどうしても誘致しなければならないのか、幾つかの懸念と反対の意見を申し上げたいと思います。

その1点目は、朝日新聞に掲載されていましたが、一般の人々の興味が減退し盛り上がりに欠けている点です。

 

 同紙には、過去、5回の万博で日本館をプロデュースした「現代芸術研究所」の平野暁臣(ひらの あきおみ)主宰は、「万博は死にかけている。現場の活気の衰退はすごい。70年万博では岡本太郎や横尾忠則など何をやるかわからない人たちに任せ、社会にも気概と志があった。しかし70年の成功で万博はビジネスになり、その後の国内の万博は大阪万博の変形でしかない」と警鐘を鳴らしているとあります。

  また、大阪万博では、アポロ11号が持ち帰った月の石は大人気で、展示されたアメリカ館は簡単には入れなかったが、愛知万博(05年)では、今や国内の常設展示でも見られる月の石を展示する新鮮味のなさ。大阪府は25年万博のコンテンツとして、健康、長寿、和食、スポーツ、サブカルチャー、大阪流のお笑いなどを掲げているが、“ごった煮”感があるのは否めないと指摘されています。想定入場者3000万人、経済効果は6、4兆円と目論んでいますが、絵にかいたモチである。

 

安倍首相は「経済の起爆剤となる」と述べ、20年東京五輪後の景気浮揚策としての期待感を示していますが、経済効果を狙った誘致は万博の理念にそぐわないと指摘するものです。

 

2点目は、財政面の不安です。

 基本構想で会場建設費用は当初は約1300億円、現在は約1250億円で進められ、政府、大阪府・市、経済界が昨年3者の等分負担で大筋合意したと報道されています。

 05年の愛知万博でも今回同様、会場建設費1350億円を政府、愛知県・名古屋市、経済界の3者で450億円ずつ等分負担することで同意していました。しかし経済界から集まった寄付金は234億円にとどまり、競輪、競艇など公営競技の収益から199億円を集めた経緯があります。

 

 関西の経済界は当初、巨額の費用がかかることに難色を示しており、経済界の応分の負担は大丈夫かと指摘するものです。

 

また2020年東京オリンピック・パラリンピックもオリンピック誘致の際は7340億円の予算だったものが、どんどん膨れ上がり、2兆円となり、今では3兆円と、4倍に跳ね上がっています。

 会場建設費用が結果として1250億円にとどまるのか、政府、大阪府・市、経済界の3者等分負担でうまくいくのか、不透明だと思っています。

 

次に国や自治体が巨額な費用を負担することについてであります。

 

 東北や熊本への震災復興が道半ばの段階で、政府がやれ東京オリンピックだ、やれ大阪万博だと、うかれていることに怒りに近い違和感があります。巨額の税金を市民生活向上に使うべきです。

 

 大阪府・大阪市に対しても同様です。

 財政難を口実に住吉市民病院の廃止や特別養護老人ホームの補助金を削減、敬老パスの有料化、赤バスの廃止、学校警備員の廃止、文楽の補助金打ち切りを進めながら、万博推進だけは多額の予算の大盤振る舞いでは誰のための自治体運営かといわなければなりません。

 

 次に地下鉄中央線を夢洲まで延伸する費用です。当初の700億が、直近では540億円とされています。これについて大阪府と大阪市は1月31日にカジノを中心とする統合型リゾート(IR)業者に一部負担を求める方針を示しました。

これは府と市がIR推進法の成立を受け、早ければ24年にも夢洲にカジノを含むIRを整備する計画で、夢洲までの地下鉄延伸はIR業者にも利益が大きいと判断し、負担を求めることになったものです。しかし540億円で済むのかの疑問に加え、カジノがらみであることには納得できません。

 

第3点目はカジノを中心とする統合型リゾート(IR)とセットであることです。

 

 大阪府と大阪市が地下鉄延伸の費用負担を求める以上、これまで以上にカジノを中心とする統合型リゾート(IR)に突き進んでいくことは火を見るより明らかです。

 

 2014年厚生労働省発表によれば、国内でギャンブル依存症の疑いのある人は536万人、日本は「ギャンブル依存症国家」といわれるほどに、ギャンブル依存症の疑いのある人の率が成人の5%と高く、米国の1.6%、オーストラリアの1%に比べても高い数字です。ここにカジノが参入すれば、ギャンブル依存の傾向はさらに進みます。 

 

 NHK「クローズアップ・現代」の「“ギャンブル依存症”明らかになる病の実態」では、家族を巻き込む悲惨な実態とともに、依存症患者の脳機能のバランスが崩れてしまうと紹介されていました。またカジノ・ギャンブルと「いのち輝く未来社会」は相反すると指摘するものです。

 安倍首相がいう「カジノは成長戦略の目玉」という発想は根本的に間違っています。この点では、アベ新聞といわれる読売新聞でさえ、社説で「そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルに、はまった人や外国人観光客らの“散財”に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である」と書いています。

 

カジノへの批判を避けるために、万博を抱き合わせてイメージアップを図りたいとの思惑も感じ、地道な行政を怠り、イベントでごまかすことばかりの姿勢を認めるわけにはいきません。

 

第4点目は果たして大阪に決定するのかということです。

当初、 大阪以外にフランス、ロシア、アゼルバイジャンが名乗りを挙げていましたが、

 

フランスは開催地をパリ、そしてテーマは地球温暖化対策を始めとする「環境」、そして「健康」「教育」「文化」と決めており、最大のライバルとみられていますが、費用と効果に疑問を感じ早々と撤退しました。

 

 舞洲は大阪市が誘致に失敗した08年の五輪会場用に埋め立て開発されましたが、2001年7月モスクワでのIOC総会第一回投票で、得票数がたった6票で惨敗しました。

 

 当時の関助役はほとんど市議会にも出ず、誘致名目で年から年中、職員らを連れて外遊していましたが、無残な結果に終わっても磯村市長、関助役以下、市幹部らはなんの責任も取っていません。

 

 五輪や万博などの誘致は、「うまくやれば誘致できるかも」という幻想を市民にふりまき、御用学者がはじき出す「獲らぬ狸」の経済効果を吹聴して進められます。首長以下、役人や議員らは公費で欧州外遊などを堪能する。記者たちも海外出張できるから反対しない。財団法人のかたちをとった大阪五輪の招致委員会には、ほぼすべての大手マスコミの大阪支社長など幹部が名を連ねていたといわれています。

すでに一昨年のミラノ万博を視察した松井知事は「パリ詣で」もしています。今後も府や市の職員、議員らは視察名目で欧州旅行を予定しているものと思われます。しかし欧州旅行をたっぷり楽しんだあげく、誘致には失敗して莫大な税金をつぎ込むことで終わらせることは許されません。

最後になりますが、本市並びに和歌山県にも市民生活に寄与するが期待できるとしていますが開催期間は6カ月余りで在り一過性の何物でもありません。

 高度成長期の1970年の大阪万博は私の記憶にも強く残っていますが、今は高度成長期ではありません。「夢よ、もう一度」と無責任に大阪万博を推進すべきではありません。

 議員各位に決議反対の立場をとるようお願いして私の討論を終わります。