2024年7月11日
川越市立美術館Midori S. Inoue『記憶と空想』個展にて開催しました、
ソニー初の女性修士エンジニア 石川耀弓(きくよ)さんとの対談。
今回の動画はこちらになります:
写真家Midori S. Inoueがデジカメ電子シャッター発明者の石川さんに
当時の発明や現在に至る感性や発想、石川さんから見たMidoriとフォト絵本について伺いました。
今回は、和歌をなさっている石川さんの画号からとったニックネーム「らくちゃん」
の相性で呼ばせていただきました。インドの美と豊かさの女神「ラクシュミー」からの由来だそうです!
・経歴:
・女性修士エンジニア第1号。SONYでないと叶わない、
CCDイメージセンサーを使ってやりたいことがあり、
応募枠にないところに切り込んで入社が決まる (諦めないで想いを突き通す…)。
その時言われたことは、「知識は後からでも身につけられるが、『取り組み姿勢』はなかなか人から学べない」。
同じものを開発するのも、たくさんの部署で切磋琢磨させてとんがったものを作っていった
あの頃のSONY文化の一つのようなお話です。
らくちゃんの育った環境 (研究につながる感性が育った環境):
・お父様が音楽家の環境で成長し、耳から聴く音楽でも感性が培われた。
また、女優になりたかったらくちゃんは毎月2~3本、
歌舞伎や文楽から新劇や宝塚まで、ありとあらゆる舞台を見て育つ。
→感性の土壌はここでも培われた。
自由に発想し、感性豊かに育つ中で『なんとなく』浮かんだものが研究や発明につながってきた。
最初は論理的ではなくて、後から理論をつけて発明につなげていくとのこと。
・幼少期から空想好きだった。
ラジオでもパーソナリティーを務めるペタちんくんの先輩たちのぬいぐるみが(100人ほどいるとのこと)、空想妄想の手助けをした。「問いを立てる」、「質問をする」。この子達の中のリトルらくちゃんが、「こんなことあったんだけど」「これってどう思う?」みたいな話をいつもしていて、ぬいぐるみたちに問うていると、しばらくしていいアイディアが浮かんできたりして解決。幼少期から自分と対話をしていた(自問自答)。
・アイディアは実行力がないとダメだけれど、発見力が必要。
全く関係ないものを関連付ける力、観察力が必要。
それを幼少期から無意識のうちに駆使していた。
・異分野ミミクリー (mimicry真似する)
電子シャッターを発明につながったのは、水洗トイレ。
いつも頭にある考えていることが、関係ないものと結びついて、化学反応が起こって発明につながる感じ。
ニュートンのりんごが落ちるのを見て万有引力の法則が生まれたのと一緒。
・発想が生まれるためには:
いつも頭の中のスペースを大切にしている。
リュックを背負って、両手に荷物があったら、何かアイディアから降ってきても受け取れないから、とにかく手放すことが大切。らくちゃん自身は、瞑想法をしているが、いつも学生たちにやっている呼吸法を一緒にやっていただきました。
「坐骨の上に座って、丹田に力を入れて、手はいろいろなものが受け取れるよう上に上げて、膝はひと拳あけて、目を閉じる。」
呼吸を整えることで、体も気持ちも楽になって、目の前が明るくなる。
→日常の中で、呼吸を整えていくと、心が落ち着き整う。
・アイディア発想法:
アイディアを妨げるものは?
大人になる程生まれる「固定概念」「いいアイディアを出そうとする」こと。
何かをやってやろうとか、「思い込み」「自分で制限をかける」こと。
その思い込みを外すと、今まで見えなかったものが見えてくる。「思い込み」は日々どこにでもある。
・思い込み外しゲーム:見方を変えたり、視点を変えたり、方向を変えてみる、
・俯瞰してみる、精査してみる(視点ズーミングの法則)
カメラで言うと、ワイドで撮るか、マクロで、グーっと絞り込んで撮ってみるかの違い。
・全然違うところのものが、ヒュっとくっついて浮かんでくる。
それは、自分の中にスペースを作っておかないと浮かんでこない。
「一杯一杯でスペースがないとせっかくアイディがきても、受け取れない」手放しておく。
ぼーっとしている時にアイディが浮かんでくる。
・一回浮かんだら寝かす。
田子あきら先生曰く
「アイディが生まれたら地下に潜れ」
ワインの如く寝かしておいて、もう一度見ると客観視してみることができるということ。
・49歳の時に生死に関わる交通事故に遭い、「やり残したことをやるための人生」に変わる。
SONYの「企業戦士」だったらくちゃんが、「存在するだけで価値がある」という価値観に変わり、
1年半後SONYに復職したが、2009年衆議院議員選挙に声がかかり、SONYを辞めて出馬する。
残念ながら当選はしなかったが、そこで、大田区の中小企業の職人さんたちと出会い、次のセレンディピティーが生まれる。
2008年のリーマンショックで仕事が激減していた、ものづくりの街大田区の中小企業の
「きらりとひかる技術を発掘して」それをビジネスに変える事業を始める。
「匠の技×かわいい」フィールウェアーという発想が生まれる
20世紀はものと心が分離して、ものが一人歩きしていた。
21世紀はものが心を取り戻す時代になる。
目に見えないものを大切にする会社、SONYからの教えだった。
そこからビジネスを展開し、
発明も続け、
今は大学や学校での授業や講演会に引っ張りだこ。
1時間では伺いきれなかったことがいっぱい。
また続きをどこかで伺いたいと思います。
最後に、今回の個展について伺いました。
「緑ちゃんは瞬間を捉えるのが天才」、それが最初の出会いだった。
「今を生きる」その瞬間を捉えるのが抜群な写真家。
『記憶と空想』フォト絵本は、スペースがたくさんある。
それって間(ま)。間合い(間の取り方)がいい本。
日常的に書き込むタイプなので、スペースに書き込んじゃいたくなる。
そういうことを感じさせてくれる、独特なパワー、うちから込み上げてくるような、何か掴み込んでくれるような写真たち。
吹き出しに書いた言葉から、「あ〜これってこうかも」ってセリフが浮かんでくる。
「あっ」と思ったのが、その人にとっての必要なメッセージかもしれない。
「今」にフォーカスしている。日本人は、本来は間の取り方が上手いはず、「日本間」がそのいい例。
一見無駄のように見える「床の間」、歌舞伎/狂言/お能、間の芸術だから、本当は得意なんだと思う。
(間を感じたり書き込んだりして)昔の日本人の魂を思い出してほしい。
そんなきっかけになる本。
との素敵な言葉をいただきました。ありがとうございます。
私にとっては初の公開インタビュー、色々と勉強させていただきました。
もっとこうすればああすれば…というのがいっぱいですが、肩を貸してくださったらくちゃんに感謝です。
そして、当日いらしてくださった皆様、ありがとうございます。
このような機会をいただきました川越市立美術館と川越市、実行委員の皆様に御礼申し上げます。
参加者の皆様と川越市立美術館個展実行委員の皆様