音楽を遅くに始める者にとって、喜びも苦難も色々とありますが、最大の苦難と言っても過言でないのは、なんと言っても周りに追い付きたい、と思うプレッシャーだと思います。周りとの競争とも言い換えられるかもしれません。そもそも、子供の頃から音楽を空気のように感じてきた人たちを競争相手と思う自体が間違っているのですが、特にクラシック界では、テクニックや知識があることが当たり前で、一つのステータスであるように感じます。そもそも、クラシック音楽というもの自体、ハイアートと言われるので、その世界に身を置くということはステータス、競争と常に隣り合わせの日常です。

 

私は大学生の時からピアノを真剣に始め、元々よそ者の存在だったので、私はとにかく一定のステータス(極めて主観的で曖昧な定義ですが)を取得、維持しようと必死でした。知らないことだらけで、普通の音大生なら当たり前の知識がない。スキルもテクニックもない。レパートリーもない。ナイナイづくしでした。笑。

 

日本人にはついついありがちな、知らないことを知っているフリをするにも話があまりにも通じないのでやはり聞かねば、と思い、思い切って聞いてみても、「そんなことも知らないなんて」とバカにされたこともあります、、、そんな時、いちいち「私はピアノを始めたのが二十歳の時なんです」と説明するのも面倒で、というより、恥ずかしくて、我慢をしたもんです。

 

今だから思う。「私は始めたのが遅くて」と言うことは恥ずかしくともなんともない!そして、その情報を相手に与える、ということは、その人があなたに対しての期待だったり使う言葉だったりを変えることができるので、ぜひ積極的に相手に伝えてください。私は、実のところ、「大人になってからピアニストを目指す資格なんて私にはないのかも」と引目に感じていたので、堂々と人に言えなかったのです。勝手に、音楽は幼少時からの英才教育と才能の賜物で、それ以外は邪道、意味のないこと、と思っていたのです。いや、実際に私の周りには一人も私のように大人になってから音楽を目指した人はいませんでした。ロールモデルがいない状況だったので、本当に可能なことなのかどうかさえ、私にはわからなかったのです。

 

皆さんはぜひ堂々と、遅く始めたことを周りに伝えてください。恥ずかしいことでもなんでもない。ありのままを伝えてるだけなんです。反対に、よく大人になってからもやろうと決意した、そこまで頑張ってきた、と感心されるはずです。それが大切なんです。