世界で大人気の、マンガやアニメの原画やセル画を収集、保存、研究を行う「メディア芸術ナショナルセンター」(仮称)の建設を文化庁が神奈川県相模原市で進めることになりました。

 これは、私が会長代理を務める自民党文化立国調査会が5月に行った提言の内容が反映されたものです。将来的には、都心などで特別展示を行うことになります。

 

 マンガやアニメ、ゲームといったメディア芸術を含む日本のコンテンツ産業は、広く世界で愛され、その輸出額は2022年で4.7兆円。半導体産業(5.7兆円)、鉄鋼産業(5.1兆円)に迫る勢いで、輸出の主力品目といえるまでに成長しています。

 世界で人気のメディアミックス(さまざまな媒体を組み合わせて展開するコンテンツ手法)ランキング・ベスト25(2019年データ)によれば、ポケモンが1位、ハローキティが2位。ランキングにはガンダム、ドラゴンボール、北斗の拳などが入っており、日本のキャラクターは、これまでに約50兆円の使用料を稼いできました。(ちなみに私はキティちゃんが大好きです)

 海外では、韓国、中国、台湾でマンガやアニメの博物館が整備されたほか、フランスでも2027年に開館予定です。これらの施設では、現地でも人気の高い、日本のマンガやアニメのコーナーを設け、収集した原画やセル画など、日本から流出した資料を展示しているそうです。

 

 

 最近では、サウジアラビアにドラゴンボールの巨大なテーマパークが建設されるという報道もありました。

マンガやアニメは、日本が誇る一大産業であるとともに、世界に大きく発信する文化、芸術でもあるのです。

 私自身、ヨーロッパに出かけた際、片言の日本語で話しかけられ、アニメキャラクター名を連発された経験がしばしばあります。マンガを原書で読みたいために、日本語を習っているという若い人も少なくありません。

 

 ただ、これまで、文化庁ひいては日本政府において、マンガやアニメは文化、芸術としての位置づけは、あまり高くありませんでした。

 例えば、国立映画アーカイブには、日本初の長編カラーアニメ映画である「白蛇伝」や手塚治虫の「鉄腕アトム」、スタジオジブリ作品などのフィルムが収蔵されていますが、約8万7000本のフィルムのうち、アニメ映画は約3000本にすぎません。これまでに膨大なアニメ映画がつくられているにも関わらず、です。

 また、マンガであれば印刷、アニメであればフィルムの撮影・編集によって完成するまでに出る、「ネーム」、「原画」や「セル画」、「絵コンテ」などの中間生成物については、収集、保存、研究といった、体系的な活用の取り組みが国ではあまり行われてきませんでした。

 近年、マンガやアニメの文化的な価値がやっと認められ、1970年代以前の古い資料の散逸や劣化を防ぐため、「あしたのジョー」などのちばてつやさんが提供した資料を使った調査研究や、資料の保管場所(温度や湿度を一定に保つ必要がある)の確保などの取り組みが進んできています。

 

 かつて、麻生政権時代に、今回の「メディア芸術ナショナルセンター」と類似の事業を行おうとしたところ、当時の民主党から、「国営マンガ喫茶」などと揶揄(やゆ)され、断念したことで何年も遅れてしまったのです。

 

 それでも、日本国内には、コレクターの方々が、マンガ家の原画展などで購入した原画や色紙、雑誌の付録での入手やアニメショップで購入したセル画など、貴重な資料が多く存在しています。

 現在もシリーズが続いているアニメでは、「宇宙戦艦ヤマト」は50年前の1974年、「機動戦士ガンダム」は45年前の1979年テレビ放送開始、「サイボーグ009」の映画はなんと58年前の1966年上映で、それぞれかなりの時間が経っています。

 また、海外での人気が高い、押井守監督の「AKIRA」や「攻殻機動隊」も、比較的新しいと思っていたら、それぞれ上映が1988年、1995年と、35年から30年も前の作品でした。

 

 当時からのファンが高齢化して、保管しているグッズや資料の整理などが進むと、散逸や海外への流出のおそれが高まってしまいます。

 

 再度事業化するまでに多くの時間がかかりましたが、拠点となる「メディア芸術ナショナルセンター」の整備などにより、資料の散逸や海外への流出を防ぐことができると思います。

 こういった取り組みによって、世界に冠たる日本のマンガ、アニメのこれまでの歩みを次世代のマンガ家やアニメーターに伝えていくことが、将来の日本のマンガ・アニメ文化の更なる発展につながるはずです。