「魔女の宅急便」で知られる児童文学者・角野栄子さんを記念した「江戸川区 角野栄子児童文学館(魔法の文学館)」を訪れました。同館は昨年11月、南葛西に開館しました。

 角野さんは、1935年生まれ、3歳から23歳まで江戸川区北小岩で過ごしました。昭和20年代にブラジルで2年間過ごしたことがきっかけで、35歳で作家デビューし、代表作の「魔女の宅急便」は1989年にスタジオジブリがアニメ映画化。鎌倉在住の角野さんは、89歳の現在も毎日、パソコンでの執筆活動を続けています。

 

 到着して、まず目にした、アテンダント・スタッフの女性がまとっている、鮮やかないちご色(濃いピンク)のアトリエコートがかわいい!館内はいちご色を基調とした内装で、角野さんの長女でデザイナーの、くぼしまりおさんが手がけました。館全体の設計は、角野さんの物語のファンだったという建築家の隈研吾さんです。

 

 1階は「魔女の宅急便」のコリコの街をイメージしています。本棚は、絵が多い本は下段、字が多い本は上段に置き、さらに「ハイハイ」しながら本を探せるスペースもあるなど、子どもの発達状態に配慮した設計になっています。

 

 蔵書は約1万5000冊あり、角野さんの作品に加え、角野さんが選んだ、世界の児童書や絵本が配架されています。小学生時代から読書好きだった私は、「自分が子どもの頃に、近くにこういうところがあったら、どんなに良かったか!」と思いました。

 また、世界各国で翻訳された角野さんの作品があり、「魔女の宅急便」はアニメの影響もあって、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、スウェーデン語、トルコ語、タイ語、ベトナム語、中国語、韓国語に訳され、ここに展示されています。中国など外国メディアの取材もあるそうです。

 「源氏物語(十二単衣の絵など説明付き)が目立つ位置にあったのでびっくりしたところ、司書さんが「大河ドラマで話題だし、小学校5、6年生の女の子たちは興味を持って読みます」。そういえば、私もその年頃には、武家の栄枯盛衰を描いた「平家物語」を夢中で読んだものでした。平安の王朝文学には馴染みませんでしたが。

 

 2階へ上がる大階段の脇には小さなクッションが置かれ、そこに座って読むこともできます。2階に寝転んだりしながら本を読めるスペースがあり、自然の広がる小窓に向かって親子が読み聞かせている光景がとても美しかったので写真を撮らせてもらいました。「いとちゃん」とお母さんは浦安から来たそうです。

 私が行ったのは夏休み前の空いている平日でしたが、母と子、父母と子、祖父母と孫の楽しそうな組み合わせがいっぱい見受けられました。

 私は既婚ながら子どもがいないことを、ふだんは何とも感じていませんが、本を囲む家族の姿を目にすると、ふと「子どもがいたらなあ」「孫がいたらなあ」と思ってしまいました。

 

 半期ごとに入れ替わる展示室や、角野さんのアトリエのほか、とても楽しいシアターもあります。

シアターでは絵本のキャラクターと会話できる参加型のアトラクションが上演されます。私が訪れた時は、赤い服の「りんごちゃん」が登場し、私もりんごちゃんに「好きな果物は何?」と聞かれたので、「真っ赤なりんごちゃんが好き!」と即答しました。子どもたちも「りんごが好き」と答えたので、りんごちゃんも幸せそうでした。(実は私は同じ赤でもリンゴより、イチゴやスイカの方が好きですが)

 

 3階には「カフェ・キキ」があり、角野さんの作品にちなんだサンドイッチやデザートなどをいただきながら、旧江戸川のほとりの景色を眺め、ひと息つくことができます。

 一般的な貸し出しはなし。今は暑いけど、館の外の広場で自然を感じながら読むことはできます。

角野館長もたまにふらっといらっしゃることがあるそうです。ぜひ、夏休みに一度訪れてみてはいかがでしょう。(基本的に要予約)

【魔法の文学館HP】https://kikismuseum.jp/