犯罪被害者や遺族に国が支給する「犯罪被害者等給付金」が、やっと、交通事故で支払われる自賠責保険並みの額に引き上げられることが決まりました。また、都道府県に「犯罪被害者等支援コーディネーター」を配置し、事件直後の心身のケアや裁判への参加、給付金など様々なことをワンストップで支援できるようにします。
 犯罪被害者等基本法(2004年)制定にかかわるなどしてきた私は、自民党の部会などで長年主張していたことが、やっと実現できそうだと、ほっとしましたが、まだ問題も残っています。

 犯罪被害者等給付金には、遺族給付金と、障害が残った被害者に対する「障害給付金」、被害者に医療費などを支給する「重傷病給付金」などがあります。
遺族給付金は、事件当時の収入や扶養家族の数などで算定されるため、死亡した被害者に収入がなかった場合、給付額が低くなります。
 給付金の平均は約740万円(2022年度)で、自賠責保険の平均約2510万円(2021年度)に比べ、3分の1足らずでした。

 私は、「交通事故の被害者と格段の差があるのはおかしい」「遺族は、収入のない家族を失った場合でも、精神的なショックや捜査への協力、裁判への参加(被害者参加制度は私が強く推進したことの一つです)などで、従来通りに働けなくなる」「事件現場が自宅や近隣だった場合、心情的、物理的にも転居せざるを得ないことも多く、費用がかかる」などと主張し、増額を求めてきました。
 
 警察庁が4月下旬にまとめ、現在はパブリックコメント(意見公募)に付している「犯罪被害給付制度の改正案」では、
他の公的給付制度(公害により健康被害が出た人への給付等)の支給最低額と同水準にするため、遺族給付金、休業加算額、障害給付金算定の基礎額を引き上げる。
また、犯罪被害者本人の収入の途絶以外にも、経済的に大きな打撃を受ける実態があることを加味する。
[例1]扶養する家族のいない18歳未満の子どもが被害者の場合、両親に支払われる遺族給付金は
(現)320万円 → (新)1060万円
[例2]55歳、年収550万円(妻、子1人の生計を維持)の会社員男性が被害者の場合、妻が受給するのは
(現)2120万円 → (新)2964万円
[例3]36歳の無収入主婦が被害者の場合、夫が受給するのは
(現)530万円 → (新)1060万円
となります。
 障害給付基礎額(最低額)は現行の1.64倍、休業加算基礎額(同)は1.45倍に引き上げます。

ただ、今回の改正には医療費の引き上げが含まれていません。私は党の会議で、医療費などの「重傷病給付金」の上限(120万円)の引き上げを主張しました。
重傷病給付金は従来、療養の期間が1か月以上で、かつ、入院3日以上を要する場合に、3年以内の保険診療による医療費の自己負担分と休業損害を合算した金額です。また、発症から2年以内に申請することが条件です。

 しかし、障害給付の対象にならなくても、顔や体に火傷(やけど)や切り傷の跡が残った場合に、何度も皮膚科の自費診療に通うことになるし、性犯罪の場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で、精神科やカウンセラーなどにひんぱんに通い、高額の費用がかかることがあります。
自賠責保険制度とのバランスを考慮したことなどが理由のようですが、納得できません。

 今回の給付金引き上げは、法律改正を伴わないので、警察庁が現在行っているパブリックコメント(意見公募)を終えたら、6月中旬頃にも実施されることになります。

 また、適用されるのは、あくまで改正施行日以後に行われた犯罪によるものだけで、施行日以前の犯罪による死亡や重傷病、障害については従前の通りです。これはひどいと思います。
これまで十分苦しんできた人たちが様々な運動を行い、私たち議員も生の声を聞き、改正しようと推進する原動力になった方たちに適用されないのは、あんまりです。ぜひ、過去の給付金との差額を追加支給してほしい。
それがどうしても無理なら、せめて、最近の犯罪被害者で、まだ遺族給付金、休業・障害給付金の金額が決まっていない人については、新しい基準を適用すべきだと思います。