規制緩和論者が主張しているライドシェアは安全性や低賃金労働などの面で問題が多いので、国土交通省は4月から、タクシーがつかまらない不足地域、時間帯に限定して「一種免許しか持たない人が、自分の乗用車を使ってタクシー会社のアルバイトとして働く」制度をスタートさせます。現在タクシー各社でドライバーを募集、選考中です。

 アプリ配車のみで、料金は一般のタクシーと同じ。健康チェックやアルコールの呼気検査はタクシー会社が遠隔で行います。お客さんを乗せる時には、「ライドシェア」のシールを貼ります。

 

 東京(23区と武蔵野市、三鷹市)では、昨年10月から12月の各社の配車アプリのデータに基づき、マッチング率を計算、90%を確保するために必要な台数を「不足車両数」と見なしています。

①   月~金の7時台~10時台は78%で1,780台が不足

②   金・土曜の16時台~19時台は85%で1,100台が不足

③   土曜は(金曜の深夜に当たる)0時台~4時台が66%で2,540台が不足

④   日曜の10時台~13時台が88%で270台が不足

とし、それぞれの時間帯に対応可能なドライバーに働いてもらいます。

 平日朝8時は東京のかなりの地域でタクシーが足りていますが、世田谷区を中心に新宿区、目黒区などで不足が目立ちます。

今後、3か月ごとに配車アプリデータを更新して、最新の対応をしていきます。

 

 私自身の体感としても、コロナ禍のあと、東京では昨年秋口には「足りない」「つかまらない」感があり、業界団体との会合でも、「スカイツリーのある押上駅のほか、浅草、錦糸町など拠点駅でさえも休日の夕方など、特に雨が降った時には、タクシー待ちの行列が長くなる」「明治通りでさえタクシーがつかまらない」と訴えていました。

 また、東京駅では、高速バスの経路との兼ね合いなどから、「タクシーがずらりと並んでいるのに、お客さんがはけない」といった苦情がありました。

さらに、平日の朝、6―8時頃、走っているタクシーは回送ばかりでした。

 

 これらの問題点は、この半年でほぼ解消されたのが実感です。運賃の引き上げもあり、この1年で東京のタクシー運転手さんが、昨年6月からこれまでに2000人弱増えたことが大きいです。また、東京駅の乗り場はJRと業界団体の交渉により、客の列の前に5台並べるようになりました。(あとはお客さんがテキパキと同時に乗り込む習慣をつければよいのです)

 さらに、各社が従来の朝6時などに「一斉帰社、勤務交替」だったのを、「朝10時に交替」など、シフトの多様化を進めたそうです。(1月に地元のタクシー会社の会合でうかがいました)

♢♢

 私は、「ライドシェア」問題は、全国の地域ごとにまったく異なる事情を抱えているため、対応も、それらに合わせたやり方をとるべきものだと考えています。

 テレビ番組で、「地方で病院に通う手段がない」と嘆いていた高齢女性を、40-50代の子育てを終えた世代の女性が、自分の車を使い、有料でガラガラに空いている道路を定期的に乗せている、のどかな光景を見ました。地元の協議会がルールを定めているようです。

 しかし、東京のような大都会で、どこの誰かわからないドライバーの車に乗ることは、特に女性の場合、性犯罪などのおそれから、抵抗感があります。また、知らないルートや渋滞している道路や運転の難しい高速道路などは、事故のリスクが高まります。もし、事故に遭った時に補償の問題もあります。

 自転車やバイクでモノを運ぶウーバーイーツでさえ、事故などのトラブルがあるのですから。

 また、一定のルールがなければ、運賃競争が激しくなる恐れもあります。
 タクシー会社が責任を持つ、4月からの東京での仕組みは、大都会に合ったよい制度だと考えます。