安全保障上の懸念がある国境離島や防衛施設に関する「重要土地等調査法」に基づく初回の区域指定(58か所)が2月にされ、国による利用状況調査と、特に重要な区域(特別注視区域)における土地売買契約の届出義務が始まりました。区域指定の対象は、官報で住所と地図が示されています。
 いずれも国境離島で、領海を決める基線(領海基線)の周辺と、自衛隊や海上保安庁など領海警備の活動拠点の周辺が指定されています。「重要土地」として指定する土地は、個人が所有しているものに限られています。

 今後、数年かけて、残りの国境離島及び自衛隊、海上保安庁、原子力関連施設、空港(自衛隊も使用する施設だけ)など合わせて500~600カ所を指定する予定です。

 国境離島のうち所有者がいない273島については、すでに2017年3月までに名前をつけて国有化を完了しています。

 ちなみに日本の最東端の島と最南端の島は東京都にあり、いずれも国有化されています。
 最東端の南鳥島は房総半島の南東約1800kmにあり、自衛隊と気象庁の職員が常駐しています。
 最南端の沖ノ鳥島は東京都といっても、紀伊半島から南に約1500kmの無人島です。国土交通省が所管し、岩礁をコンクリートで固めて守っています。
 これらの島を基点として、日本列島の南に領海やEEZ(排他的経済水域)が確保されているのです。

 日本の最北端は北方領土の択捉(エトロフ)島で現実にはロシア人が住んでいて、日本が実効支配できていないので、「重要土地」の対象外です。
 最西端の与那国島は沖縄県に帰属しますが、石垣島より台湾に近い位置にあります。私は、2007年末、国土交通副大臣として与那国島を視察し、国境の島であるにもかかわらず、警察の駐在所があるだけで、あまりにも無防備だったのに驚き、陸上自衛隊の駐屯地開設を働きかけ、今では実現しています。

 この法律は、国会審議の前後に、水源地など、多くの「守るべきもの」が話題になったり、反対に、経済活動の制約を懸念する声が起きたりしました。

 結局、事前届出が義務づけられるのは、特別注視区域の200平方メートル以上の所有権移転にかかわる売買契約だけで、氏名、住所のほか、国籍や利用目的も届け出ます。違反した場合は刑事罰が課されます。そして、重要な土地・施設の「機能を妨害する利用」が目的の場合には、中止の勧告、命令がなされ、さらに国が土地を買い取るなどします。

 それでは、何をしてはいけないのか?
 「市ヶ谷の防衛省・駐屯地の周辺に高層マンションが建てられ、最上階を外国人が買い占めたら、問題となるか?」と聞かれたことがありますが、答えはノーです。
 また、私自身、コロナ以前、対馬で自衛隊基地の隣に韓国のホテル用地があり、また、全島に多くの韓国系資本によるドラッグストアや宿泊施設があったことに驚きましたが、これらも、ただリゾート施設や商業施設として使うだけなら、問題はありません。

 政府は、次の行為は機能妨害行為に当たらないとしています。
・施設の敷地内を見ることが可能な住宅への居住
・施設周辺の私有地における集会の開催
・施設周辺の商業ビル壁面に収まる範囲の看板の設置
・国境離島等の海浜で行う漁ろう など

一方、機能妨害行為に当たるのは
・自衛隊等の航空機の離着陸の妨げとなる工作物の設置
・自衛隊等のレーダーの運用の妨げとなる工作物の設置
・施設機能に支障を来すレーザー光等の光の照射
・施設に対する妨害電波の発射
・流出することにより係留施設の利用阻害につながる土砂の集積
・領海基線の近傍の土地で行う低潮線の保全に支障を及ぼすおそれのある形質変更 等です。