フリーランスとして働く人を保護する政策の必要性について、自民党内で主張してきました。コロナの感染拡大期にフリーランスの支援策を考えたのがきっかけでした。
会社の従業員でなければ入れない「労災保険」の特別加入に加え、今国会で契約に関する新法が審議されることになりました。
日本では４６２万人がフリーランスとして働いていると、政府では試算しています。
デザインやコンテンツの制作、データ入力、アニメーション制作、ITエンジニア、講師、インストラクター、芸能関係のほか、営業や配達、建設など職種の幅も広く、働く形態も様々ですが、「人に雇われていない」「人を雇っていない」「店でモノを売るのではなく、自分の技術や能力を売って報酬を得る」というのが、フリーランスの方々を対象にした政府の調査から浮かび上がっている定義です。
国の相談窓口として「フリーランス・トラブル１１０番
https://freelance110.jp/ 0120-532-110」があります。公正取引委員会、厚生労働省、中小企業庁が予算をつけて弁護士会に委託しているもので、相談料は無料。さらに、あっせんのための仲介をしてもらう場合もタダです。非常にいい仕組みだと思います。
相談に当たっている弁護士の方によると、相談者の業種としては、「軽貨物、いわゆるミニバンによる配送」が断トツに多く、次いで、ホームページを制作したり、プログラミングなどIT関連の仕事です。
大手ネット通販の２次、３次下請けの運送業の大半は社員を持たず、フリーランスへの委託で配達をこなしているそうです。
「『明日から来て。車はあるから』と言われて働き、報酬を受け取る際に、『車のリース代』が差し引かれていることを初めて知る。『仕事をやめたい』と申し出ると、『最後の報酬は払わない』と言って払ってくれない」というような相談が寄せられています。
フリーランス・トラブル１１０番では、相談者が未払い報酬の支払いを求めて、無料で（国の負担で）弁護士に「和解あっせん」を頼むこともできます。３０万円とか４０万円の未払い報酬を取り戻すために裁判を起こす気にはなりにくいでしょうから、この「和解あっせん」はいい手だと思います。
「１１０番」に電話やメールで相談する人の中には、労働基準監督署に行ったら、「ここは労働者を守るところ。あなたは労働者ではないから」と言われ、１１０番を教えられた人もいるそうです。
未払い問題などがなくなるよう、政府は今国会に、「フリーランス・事業者間取引適正化法案」を提出しました。
法人にしか適用されない下請法の対象を広げ、
①給付内容や報酬額を書面などで明示
②60日以内の支払期日を設定する
③特定受託事業者（フリーランス）に責任がないのに、報酬を減額したり返品したりしてはいけない
などが内容となっています。
また、フリーランスの「働く人」としての側面も重視し、「業務委託に際し、育児や介護と両立できるよう配慮する」などの項目も含まれています。
違反し、かつ行政指導や命令にも従わない場合は、50万円以下の罰金規定も設けてあります。
フリーランスの人が仕事でけがをした場合の対応も拡充してきました。
労災保険はもともと、事業主がお金を出し、従業員が労働災害に遭った際に治療費や休業手当を支払ったり、障害が残った場合には障害年金を支給したりするものですが、従業員でなくても希望すれば加入できる制度があり、対象者を広げてきました。
まず、中小事業主や役員。そして、個人タクシーの運転手、大工、左官、とびなど一人親方、廃品回収、介護や家事支援、医療系の柔道整復師、あんまマッサージ、はりきゅうなどの方、歯科技工士。
さらに、コロナ下で「フリーランスの人たちが大変だ」という問題意識が高まる中、私も声高に叫び、芸能従事者、これは映画、演劇、番組、イベントなどの芸能制作に従事する人（俳優も舞台装置などのスタッフも）、さらにアニメーション制作従事者、また、自転車配達員、ITフリーランスの人たちも、自分が所属する団体を通じて、申し込めるようになりました。
この対象業種をさらに増やし、また、フリーランスの方々がこの制度を知り、もちろん多くない収入の中から保険料を支払うのは嫌だという方もいるでしょうが、ぜひ、その価値をわかってもらって、多くのフリーランスが実質的な労災にあったときにカバーされるようにしてほしいと願います。
厚生労働省 【令和３年９月１日から労災保険の「特別加入」の対象が広がりました】