明治以来の民法を改め、「女性の再婚禁止期間(現在は年齢にかかわらず、離婚後100日間)を廃止」、「再婚後に生まれた子は新しい夫の子とする」「これまで父しか訴える権利がなかった『嫡出否認』を子と母に拡大する」などとした民法(親子法制)の改正が、臨時国会で成立し、16日に交付される予定です。

 

 「父親の暴力などが理由で、出生届を出せず、子が無戸籍者となってしまう問題を解消したい」と私が自民党司法制度調査会長だった2018年6月、法改正の提案書を上川陽子法務大臣に出したことがきっかけで、法相が法制審議会に諮問。明治29年以来の改正が実現しました。DNA鑑定で親子関係が容易に判定できる時代に合った改正ともいえます。

 

 これまで子の嫡出推定については「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」とされてきましたが、離婚前から夫婦の関係が破綻し、妻が将来の再婚相手との間の子を授かることも多いのが現実です。

 そこで、離婚後300日以内であっても、「再婚後生まれた子は現夫の子とする」例外規定を設けることになりました。

 

 離婚後、再婚しないで300日以内に出産した場合は、そのまま出生届を出すと、元夫の戸籍に「子」として入ってしまいます。そこで、先に「嫡出否認」の訴えを起こし、それが認められてから出生届を出すと、産んだ母親の戸籍に入れることができます。

 なお、たとえ婚姻中であっても、生まれた子の生物学的な父親が法律上の父と異なる場合、母が「嫡出否認」の訴えを起こすことができます。

 

 無戸籍者とは、日本人の子として日本で生まれ育ったにも関わらず、諸事情で出生届が出されず、戸籍のない人です。

 法務省の調査によると、11月現在で確認された無戸籍者793人のうち、7割以上に当たる581人が、無戸籍になった原因に「現行の嫡出推定の規定」を挙げました。

 

 改正法は2024年春を目途に施行される予定です。

 施行後1年間は、それまでに生まれたすべての人(もちろん、現在、生まれている人も)について、母、子ともに嫡出否認の訴えを起こすことができます。

 

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 私は法務大臣の時以来、「無戸籍の日本人をなくすことは、『人権問題の1丁目1番地』」と考えてきました。

 

 今は、無戸籍者でも学校に通ったり、住民票を取得したりすることができるようになりましたが、党司法制度調査会長の時のヒアリングでは、30代になってやっと戸籍を取得できた女性から、「子どもの時は、学校にも行けず、歯が痛くても保険証がないため治療できなかった。今、初めて小学校からやり直していますが、満足です」という話を聴き、同僚議員ともども涙が止まらなかった経験があります。

 

 コロナ禍初期の2020年4月、「住民票を持つすべての人に一律10万円の特別支給給付金」を給付することが決まった際、私は、森まさこ法務大臣、高市早苗総務大臣に「住民票を持たない『無戸籍の人』にも給付してほしい」と申し入れました。

 その結果、法務局が「無戸籍者として把握している」と市区町村に証明した場合は、給付金を受けられるという対応をしてくれることになりました。

 

 さらに、この対応は、私がひそかに願った「すばらしい副産物」をもたらしました。

 4月当時、法務省では、「住民票のない無戸籍者」として318人を把握していましたが、その年11月までに新たに186人を把握。合計504人のうち116人が11月までに新たに住民票に記載され、そのうち80人が家裁に申し立て、裁判手続きなどを経て、出生届を無事に出すことができました。戸籍を持つことができたのです。

 

 無戸籍の人の中には、過去に自治体などに相談して嫌な思いをした人も少なくありません。生活の忙しさもあって2度と役所にはかかわりたくない、という人も多かったでしょう。

 しかし、「10万円もらえるなら、手続きに挑戦してみよう」という人も出てくるにちがいない。それがきっかけで、住民票を取得したり、さらに法務局や法テラスに相談して戸籍取得までがんばってくれることを、私は期待していたのです。

 

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 今回の法改正、さらに「施行後1年間は、過去にさかのぼって『嫡出推定否認の訴えをおこせる』」という経過措置が、無戸籍者解消に大きく役立ち、不幸な日本人が1人でも減ることを心より願っています。