墨田区南部地区で、不動産管理業を営む方から「古い賃貸アパートが危険なので耐震性のあるマンションに建て替えたい。ほとんどの居住者は納得して出て行ってくれたけど、1人だけ、行き先がない、と残っている人がいる。都営住宅に入れないだろうか」と質問を受け、「難しいですね」と答えながら、たしかに、相当古いアパートで1世帯だけ残って壊せない、危険なところは他にもあるなあ、と思いました。
同時に、建て替えのために長年住んだアパートを出された高齢者が、(民間賃貸は高齢者の受け入れを敬遠するため)住宅困難者となる問題もあります。
その時、「墨田区内には再開発案件で、空き家の多い公営住宅があった!」と思い当たり、これを結びつける方法を考えました。
墨田区の京成曳舟駅周辺は近年、再開発が進んでいます、ここ京島地区はもともと、東京有数の木造密集住宅地でした。そこで再開発に同意して家を失った居住者用に、低家賃で住める「コミュニティ住宅」が、国交省の補助事業「都市再生住宅」として昭和末期から平成後半までに17棟173戸建てられました。
その後、居住者の高齢化などにより、空室が増え、現在、61戸が空き室となっています。3分の1以上です。
京島三丁目コミュニティ住宅(昭和61年度完成)
京島三丁目第2コミュニティ住宅(昭和63年度完成)
墨田区議会でも自民党議員から、コミュニティ住宅の空き家を活用することについて問題提起されました。
私が国交省に問い合わせたところ、「建設後10年が過ぎ、入居者がなく、将来も従前居住者用の住宅として保存する必要がない場合、自治体が『用途廃止』できる」との回答を得ました。
自治体としては「国から補助金をもらった事業だから、もともとの対象者以外に貸すわけにはいかない」との思い込みがあったようです。
全国的にも同様の事例が見込まれると考え、私は、木造密集住宅地の解消を担当している国交省の担当部局と相談したところ、「用途廃止後の都市再生住宅等のまちづくり施策への活用について」とする文をホームページに掲載してくれました。(12月6日付https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001574754.pdf)
用途廃止後の共同住宅は、入居対象者の制約はなくなるが、本来、密集市街地の整備改善の促進が目的なのだから、たとえ、その地域の再開発が進んでも、自治体内の他の地域の「まちづくり」施策に適した「仮住居」として賃貸することを勧める内容で、3つの例を挙げています。
① 市街地再開発、密集市街地整備、街路事業などの公共事業に伴い、必要となる仮住居
② 耐震性が不十分な老朽賃貸住宅等の建替えに伴い、必要となる入居者の移転先や仮住居
③ 耐震性が不十分な戸建て住宅の耐震改修や建替えに伴い必要となる仮住居
私が冒頭に挙げた事例は②に相当します。①の街路事業は、道路拡幅に伴い、住宅や店舗の敷地の一部を提供せざるを得ず、残った土地に建て替えるケースが相当します。③は個人住宅の建て替えで、各種補助金もあります。
今後、耐震化が課題の墨田区が、この国交省の提案を参考に、コミュニティ住宅の空き室解消に取り組んでくれるよう働きかけていきます。