清和政策研究会の政策委員会(私が委員長)「安全保障・防衛費PT」が24日、「来年から5年間の防衛費の総額を48兆円にする」などの提言をまとめました。

 この政策委員会では、故・安倍晋三元総理がやろうとし、果たせなかった政策課題(「防衛費の対GDP比2%」など安全保障、憲法改正など)を論じます。

※2021年の日本のGDPは約540兆円で、2022年度防衛予算は補正を含めて6.1兆円

 

 

 「対GDP比2%」は夏の参院選でも党の公約に明記しました。財源は、公約で直接的な増税でまかなうことなどは盛り込んでいないため、今回の提言では言及していません。安全保障に特定の財源を当て込むのはおかしいと私達は考えています。

 

安全保障情勢は日本の内政事情で決まるものではなく、「お金がないから防衛力は整備できない。危険なままでも仕方ない」というわけにはいきません。

「反撃能力」を備え、「日本を攻撃したら大変な反撃を受ける」と、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力を強化し、攻撃を受けるリスクを減らす上で、着実な防衛力の強化が必要です。

 

 日本は今、極めて厳しい安全保障環境に置かれています。

中国は尖閣諸島周辺で領海侵入を常態化し、今年8月に台湾方面に向けて発射した9発の弾道ミサイルのうち、5発は日本のEEZ(排他的経済水域内)に着弾しました。

北朝鮮は今年に入り30回以上ミサイル発射を繰り返し、性能を向上させて迎撃を困難にさせています。

ロシアは中国軍と連携して日本周辺の海や空で軍事演習を行っています。

 

 こうした状況下で、アメリカのインド太平洋軍は、「2025年には西太平洋で米中の戦力バランスが中国優位になる」と予測し、米海軍作戦部長は「台湾有事は2027年ではなく、2022年、23年になる可能性もある」と発言するなど、緊迫感が高まっています。

 

 そこで、自衛隊の能力向上、研究開発や港湾・空港整備など、安全保障に資する取り組みを省庁横断で推進し、様々な面から対策を講じます。

 

 自衛隊の装備面では、弾薬数の確保・生産能力の向上、輸送能力、メンテナンス体制を強化します。施設面では、戦前からある隊舎が今も約600か所で使われており、老朽化の著しい隊舎・庁舎の改善、主要な司令部の地下化、弾薬の保管能力の強化、戦傷医療対処能力を向上させます。

 

 多数のミサイルを一斉に発射された場合、迎撃はとても困難なため、攻撃をためらわせる抑止力として、反撃能力を整備します。また、反撃するタイミングや対象として、過去の大臣答弁にあるよう、相手が「東京を火の海にしてやる」と言って、ミサイルに燃料を注入するなど、実際に着手した段階での対応や、発射基地に留まらず、指揮所なども含めるなど、憲法や国際法の範囲内で、反撃目標に過度な制約を課さないようにします。

 

 また、技術革新による「戦い方」の変化に対応します。AIや、無人機、ハイブリッド戦、サイバー、インテリジェンスなど、各分野での対応能力を強化し、武力攻撃に至らないような侵害にも対処するための環境整備を進めます。

 

防衛産業に対しては重点的な投資、支援と合わせて、防衛装備移転三原則の運用を見直します。移転規制の目的は、日本の安全保障に資するか否かの一点であると明確にし、ダウングレードや、ブラックボックス化による対応をしながら移転対象を拡大。防衛産業が安定的に研究・生産体制を維持できるよう支援します。

 

現在は不安定な発注や、低い利益率に加え、防衛装備移転三原則により、外国への移転も進まず、これまで完成品が移転した例は、フィリピンにレーダーを1件移転しただけです。こうした事情から防衛産業からの撤退が相次いでいます。

 さらに研究予算不足で、研究や装備化が進められず、装備の調達は米国からの輸入に強く依存し、国内産業がさらに弱体化しています。このような悪循環を止めます。

 

 PTの座長を務める大塚拓衆議院議員の事務所で、私も同席して公表し、質疑応答を行いました。