墨田商工会議所会長の阿部貴明・丸源飲料工業社長(60)が、11月1日付で東京商工会議所副会頭に就任します。

 

 東商の会頭及び10人の副会頭のうち、中小企業の経営者は2人だけです。初めて地元から出ることをとても誇りに思います。

 

 

 20年来の友人。私が経済産業副大臣として「社長の個人保証なしで中小企業が金融機関からお金を借りられるようにするための『経営者保証に関するガイドライン』」(2014年2月に実施)策定にかかわった際、日商代表として、つまり全国の中小企業を代表し、「個人保証なし」への移行をしぶる全国銀行協会とやり合う役目を担ったのが、偶然にも阿部さんでした。

 

 私は、中小・小規模事業者の多い東京・下町で政治家として歩む中で、「お金を借りるときに全財産を担保に取られ、もし経営に失敗したら、身ぐるみ剥がされ、長年住んだ家も追い出されるということのない社会」を作ることに執念を燃やしてきました。

 阿部さんは、メガバンクのサラリーマン幹部たちに「全国の中小企業のオーナー経営者は命を、担保にしているんですよ」と迫りました。

「共に戦った同志」として貴重な思い出です。

 

 

大正5年(1916年)に、町のラムネ屋さんとして創業して106年目の会社の4代目社長。今は、コーヒーショップやファーストフード店、ファミリーレストランなどの外食チェーンや、コンビニエンスストアなどに、ジュースやシェイクの原料、アイスクリームや、デザートにかけるソースなどを納入しています。最近では居酒屋や回転すしのチェーン店からの注文もくるようになり、デザートが重視されるようになったと驚いたそうです。

 

丸源の社名は一般に無名ですが、多くの人がその商品を口にしているわけです。もう1人の中小企業出身の副会頭が高級果物で誰もが知る千疋屋さんなのとは対照的です。

 

果汁の仕入れ先開拓のため、フロリダやカリフォルニア、メキシコ、コスタリカ、ペルー、チリなどに自ら出向くなど、経営者として前線にも立ち、私が携帯に電話をかけると「今、メキシコで真夜中です」という答えが返ってきたこともあります。12月には早々の米国出張が待っています。

 

地元の活動にも熱心で、社長歴20年のかたわら、東吾嬬小学校PTAや町会役員、地味で難儀な国勢調査員なども引き受け、小村井香取神社のお祭りでは、短パン風の上下白のスタイルでお神輿や獅子頭をかついだりしている「下町っ子」です。

 

東京都小学校PTA協議会会長のあと、文科省の中央教育審議会・初等中等教育分科会の専門委員として特別支援学級のテーマにかかわり、都特別支援教育体制・副籍モデル事業評価委員会委員も務めました。

この時、中教審会長だったのが日商会頭(東商会頭)を今回、退任した三村明夫氏(日本製鉄名誉会長)でした。

 

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 中小企業政策を専門とする私は、事業承継税制についても阿部さんを通じて政策に生かしてきました。

「使いやすい税制」への制度改正や、事業承継した際の補助金創設などです。私にとって大事な知恵袋です。

 

 また、阿部会長は、安倍晋三元総理が、大企業だけでなく中小企業経営者にも賃上げをお願いする目的で開いた「中小企業経営者」との意見交換会に招かれたこともあります。

 墨田区立花の同社に副会頭就任のお祝いを述べに行った際、安倍元総理の思い出にも浸りました。