私が会長を務める住宅土地・都市政策調査会を14日、「医療・教育を一体化した街づくり」をテーマに開きました。
 「ふなばし森のシティ」(千葉県船橋市、野村不動産ホールディングス)、「虎ノ門・麻布台プロジェクト」(東京都港区、森ビル)、分譲マンション「クロッセ秋田」(秋田市、ミサワホーム)について話を聴きました。

 「ふなばし森のシティ」は東武野田線の新船橋駅に接し、工場跡を開発、マンション(5棟1497戸)や戸建て(42戸)、イオンモール船橋のほか、保育園、サービス付き高齢者住宅、薬局、船橋総合病院が隣接しています。船橋総合病院は市内から移転、増築しました。終生暮らせる街を目指しています。

 購入者は4割が30代の子育て世代、次いで50代。街の中心には「クラブハウス」があり、保育園が入っているほか、ママさんたちが集まり、ファミリー向けイベントも開催されます。
 入居から8年で、1500世帯に、小学生は700人になりました。「子ども2人以上は当たり前」という雰囲気で、船橋市としては36年ぶりの小学校が新設されました。「なぜか子どもが増える」と新聞にも取り上げられました。
 「最初の3年間は野村不動産などが社員を貼り付け、『街づくり協議会』を主導。コミュニティの形成をサポートし、その後は自治会にバトンタッチしました。子育て世代の横のつながりが安心感を生んだ、コミュニティの成果です」と沓掛英二社長は胸を張りました。
 
 同社はこの成功例をもとに、横浜市日吉にコミュニティ施設や新設する公立小学校、スポーツクラブを備えるマンション群(1318戸)も開発しました。


 アークヒルズや六本木ヒルズをつくってきた森ビルは「虎ノ門・麻布台プロジェクト」を、来年竣工予定です。高さ330m(東京タワーは333m)のメインタワーを構えます。8.1haの敷地に住居1400戸を設け、3500人が居住、2万人が就業する見込みです。

 慶應義塾大学病院予防医療センターが信濃町から移転します。森ビルとの共同研究講座で、実際の街をフィールドにした研究活動を行い、森ビルの社員40名も先行研究に参加中です。成果をもとに、受診者一人ひとりのニーズやリスクに応じた健診プログラムを提供します。

 また、インターナショナルスクールの「ブリティッシュ・スクール・イン・東京」(学校法人渋谷教育学園、田村哲夫理事長)が、渋谷と三軒茶屋にそれぞれある保育部と小学部をここに移転、集約します。
 英語で学べる学校は、海外から赴任する高給ビジネスマンから強い要望があります。学校を新設するには運動場のスペースが必要なうえ、「建物の所有」や途中で倒産することがないように「準備金」など高いハードルがありますが、私学教育で評価の高い田村理事長の信用と、既存の学校の移転ということで、なんとか実現したそうです。



 ミサワホームがコンサルタントを行った「クロッセ秋田」は、秋田駅前のアーケード街の中間にあり、17階建て、60戸の分譲マンションです。
 「高齢者が健康な段階で入居し、終身暮らすことができる生活共同体」として産官学で構想された「コンパクトシティ」です。下層部には銀行、薬局、内科や歯科、「暮らしの保健室」があります。「暮らしの保健室」は訪問看護の事業者が運営しています。

 購入者の平均年齢は62歳。すでに郊外に一戸建てを持つ人が、「買い物や医療機関に行くのに便利なマンションへ」と購入しているそうです。60戸といえ「5年間マンションが建たなかった」地区にできたインパクトは大きく、秋田駅周辺の活性化が期待されています。


 ミサワホームでは病院の上に分譲マンション(80戸)が乗る形の「アスマチ神戸新長田」(JR新長田駅前、阪神・淡路大震災で倒壊した高速道路沿い)も開発中です。

 コンパクトシティも、立地(都心、郊外都市、地方)によって多様だと、大変興味深いものでした。