私が会長を務める住宅土地・都市政策調査会を7日、「文化・芸術によるまちづくり」をテーマに開きました。
 寺田倉庫(高級ワインや美術品を適切な温度と湿度で保管する)などが「天王洲アイル」(品川区)を倉庫街から「インスタ映え」するモダンアートの街に変えた取り組みと、「日本のタイムズスクエアにしよう」と新宿ミラノ座跡地に建設中の「東急歌舞伎町タワー」を中心とした「楽しく歩く街」づくりについて聴きました。

 倉庫街だった天王洲地区は、バブル期に、「ウォーターフロント民間開発第1号」として、高層ビルを建設、東京モノレールの駅を誘致(1992年開業)し、水辺のある近代的な街づくりを行いました。しかしその後、都心部で再開発が進み、交通の便が悪い天王洲地区は、にぎわいが劣りました。ウッドデッキなどの維持管理にも費用がかかり、お金の工面も大変でした。

 そこで、寺田倉庫など地権者が立ち上がり、「アートになる島、ハートのある街」をスローガンに、「まち全体がミュージアムのような天王洲ISLE(アイル)」に作り変え、来訪者の増加に成功しました。

 運河を地域のシンボルとして表に出し、電柱の地中化を行いました。建物の所有者と交渉して、壁面に絵を描きました。2020年には都知事の指定を受け、運河を隔てた複数の建物の壁に、巨大なプロジェクションマッピングを表示できるようになりました。

 寺田倉庫は作家やコレクターから預かったアート作品を展示する「WHAT MUSEUM」や、国内最大級のアートギャラリーコンプレックス「TERRADA ART COMPLEX」2棟を開設、現在19のギャラリーがあるそうです。
 昨年の「バンクシーって誰?展」では16万人が来場しました。街中の多数のアート作品は、訪日外国人にも人気で、写真映えスポットになっています。ステージイベントやマルシェも定期的に開催し、毎回1万人が訪れます。


 東急は2014年末に、1956年開業の映画館「新宿ミラノ座」を閉鎖。同地に48階建ての「東急歌舞伎町タワー」を建設中で、2023年春に開業予定です。

 900人収容の劇場、8スクリーンの映画館、ソニーミュージックと連携した1500人収容のライブホールを設けます。
 上層部にはペントハウスのあるラグジュアリーホテルを含む、2つのホテルが入ります。客室へのライブの生配信も予定されています。歌舞伎町にラグジュアリーホテルは馴染まない気がしますが、新宿駅の東側には高級ホテルがなく、新しい需要を見込んでいるそうです。

 合わせてビル内に、リムジンバスの降車場を設け、羽田、成田空港と直結します。歌舞伎町と大久保の間は韓流ブームで人通りが多くなっており、靖国通り(西武新宿駅)から職安通りまでの道路を、観光動線として整備しています。バスの進入路としても利用します。
 これらが評価されて国家戦略特区に認定、容積率の緩和や巨大サイネージの設置が可能になりました。

 バレエや演劇、オペラが趣味の私は、東急の「Bunkamura」(渋谷)にたびたび足を運びますが、文化芸術の発信拠点として定着している東急百貨店を核としたこの施設は、来年から大規模な改修に入る予定です。こちらの再開発も楽しみですが、新宿の新しいタワーも、強い個性を持って定着することを願います。