太陽光発電や風力発電は、いくら増やしても天候によって発電量が左右され、電力需要に見合った供給ができません。私は「蓄電池の整備拡大が何より重要である」と、自民党の部会などで言い続けてきました。
 衆議院環境委員長だった2018年、「風の松原風力発電所」(秋田県能代市沿岸)を視察した際、巨大な蓄電池の建屋があり、「これがないと東北電力が電気を買い取ってくれなかった」と聞きました。不安定な電源は蓄電池によって変動を緩和しないと活用しづらいのです。

 蓄電池の主役であるリチウムイオン電池は、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さん(私の高校の先輩)らが発明したものです。1991年に実用化され、しばらくは日本が世界でも生産大国だったものの、2010年代には中国や韓国のメーカーの台頭により、どんどん抜かれてきました。

 


 自動車の電動化に向けて蓄電池の重要性が増し、各国政府が積極的な支援を進める中、日本政府もやっと大規模な支援を行うことになりました。

 日本が今回進めるのは、①蓄電池や材料を生産する建物、設備や研究開発、「都市鉱山」活用のためのリサイクルに1000億円を投資し、2030年までに国内製造能力を5倍にする②海外でリチウムなど資源を確保するため、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じた金融支援③電気自動車とプラグインハイブリッド車の購入支援(車種によって最大85万円)と充電インフラ施設(家庭用を含む)の整備に375億円④電力系統に直接接続する蓄電池(系統用蓄電池)の導入支援に130億円など。

 



 米国やEUには、シェアを握る企業がありませんが、中国や韓国のメーカーの誘致を含め、域内にサプライチェーンを構築して増産を図るため、それぞれ8000億円規模で工場の建設や研究開発の支援を始めています。
 世界的なシェアを握る企業を持つ韓国は、研究開発や設備投資に対する税額控除、中国はバッテリー工場への税率軽減などを行っています。

 2019年に5兆円だった蓄電池の世界市場は、2050年には100兆円にまで膨らむとの予測もあります。大規模な支援策により、再逆転に成功することを目指します。