私が会長を務める住宅土地・都市政策調査会は、「空き家問題」をテーマに、NPO法人「空家・空地管理センター」代表理事の上田真一さんと、カチタス社長の新井健資さんから話を聴きました。

 空家・空地管理センターでは「100円管理」として、空家で月1回玄関や庭木などの状態を撮影して送る外観点検や、近隣からのクレームの一時対応を月100円で請け負っています。東京都や墨田区など自治体とも連携し、空家問題のワンストップ相談窓口を運営しています。



 空家は、住んでいた高齢者が施設に入ったり、相続した子供が親の残した物を処分できず、「置き場」のままとしたり、「争族」(相続をめぐる親族の争い)で手が出せなかったりして、発生します。
 貸し家にするには、修繕やリフォームにお金もかかるので、地価の高い都会では、解体して土地を売却するケースが多いそうです。売却の要望があれば、不動産業者に引き継ぎます。

 また、センターでは、事業者が空家を固定資産税額と同額で、5~10年の定期借家契約で借り上げ、リフォームし、転貸する制度も運営しています。利益は出ませんが、自分でリフォームの投資をしなくても維持、管理され、固定資産税の負担がなくなり、家は必ず返ってくるというメリットがあります。不動産に詳しくない人にも、リスクが少なく取り組みやすい活用法です。



 カチタス(ベンチャーから東証一部、現在はプライム上場)は、空家を買い取ってリフォームし、販売する「買い取り再販」ビジネスの最大手です。社名は「価値+足す」。人口5万から30万人程度の地方都市で、戸建てに限定し、月に500件ほど買い取っているそうです。



 売値は「土地+家」で500万円とか900万円とか、新築の半分程度と安いのが特徴。地価の安いところをねらっています。「世帯収入200万から500万の層の人が、アパートの家賃並みの住宅ローンで買える」ことを条件に、まず売値を定めて、その範囲で収まるリフォームだけ行います。
 売れる家にするためには、「清潔感」を出すことが大切だそうです。カチタスではキッチンやバス、トイレに共通の資材を使うことや、各地の工務店に継続的な発注をすることでコストを低減し、必要なリフォームを行います。

 また、地方では共働きで車2台を使うことが多く、どちらが先に出勤してもよいように、駐車場を並列駐車に変えるそうです。

 カチタスでは空家を売りやすいように、「中の荷物はそのままでいいです。散らかっているお宅が多いですから」とアピールし、残置物の処分も行います。空家を相続する人自身、60代以上など高齢で、片付ける気力がなくて放置するうえ、それを人に見られたら恥ずかしいという気持ちを持つ人が多いことが、空家がそのままになる一因のためです。

 



 私は調査会の会長として、空家が放置されず、住宅または土地として市場に出ていくよう、必要な政策を進めていきます。