自宅近くの隅田川、白鬚橋(墨田、荒川、台東区にまたがる)から少し上流で、白いユリカモメの群れを見かけることが多く、心がなごみます。別名「都鳥」(みやこどり)。新橋とお台場を結ぶ路線の名前にもなっている東京都の鳥です。バードウォッチングや写真撮影をする人の姿も見られます。

 



 都鳥の名が身近なのは、平安時代、絶世の美男子といわれた歌人、在原業平(ありわらのなりひら)の「伊勢物語」に登場するのを、かつて古文の教科書で学んだためです。

-「名にし負(お)はば いざ言問(ことと)はむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと」

 もっとも、当時の都は京であり、関東に行く「東下り」(あずまくだり)という話の中に登場します。
京を旅立った在原業平は隅田川にたどり着き、船で渡っていました。そこで目にしたのが、白い羽と赤いくちばし、赤い脚のきれいな鳥でした。これが都鳥という名だと知り、この歌を詠みました。
「都という名が付いているのであれば、ぜひ聞きたい。私が京に残してきたあの人は元気にしているか」と。

 ユリカモメを撮影した白鬚橋から南に2キロほど下流に言問橋(ことといばし、墨田区向島と台東区浅草を結ぶ)があります。言問橋のそばに東京スカイツリーがあり、業平(なりひら)という地名もすぐ近くです。在原業平はこのあたりで歌を詠んだとされ、都鳥すなわちユリカモメは墨田区に縁の深い鳥です。

 ちなみに業平小学校は野球の王貞治さんの出身校。言問橋の近くには「王貞治記念少年野球場」があります。私は墨田区少年野球連盟顧問を務めており、開会式など、この球場にたびたび出かけ、野球少年たちを励ましています。