明治以来の民法を改め、「女性の再婚禁止期間を廃止し、再婚後に生まれた子は新しい夫の子とする」「これまで父しか訴える権利がなかった『嫡出否認』を子と母に拡大する」などとする民法(親子法制)改正要綱が14日の法制審議会総会で取りまとめられることになりました。

 

 事情があって出生届が出せないことによる「無戸籍者」をなくすという、私が長年取り組んできた人権問題が大きく前進することになります。

 

 現行法では、離婚後300日以内に生まれた子は「前夫の子」とされますが、再婚した場合、出生時の夫が法律上の父となるよう改正します。

 新旧どちらの夫の子か重複しないよう、現行法では離婚後100日間の再婚を女性に禁じていますが、この規定も撤廃します。

 

 たとえば、夫のDVに苦しみ、しかも夫が離婚に同意してくれず、身を隠しているという立場の女性が、他の男性の子を宿し、出産した場合、出生届を出せば、法律上その夫の子となってしまうし、自分の居住地なども知られてしまいやすい。そんな理由で出生届を出していないのが「無戸籍者」発生の主な原因です。

 今年1月時点で、法務省が把握している無戸籍者825人のうち7割強に当たる591人が、こうした理由を挙げています。

 

 改正法では、うまく離婚、再婚できれば、再婚相手の子となり、血縁上の父と法律上の父を一致させることができます。

 離婚はしたが、相手の男性と再婚できなかった場合は、母の単独の戸籍に入れます。

 このとき、前の夫の子と推定されたくない場合、改正法では子(実質的には母が代理して行う)か母が「嫡出否認」の訴えを家庭裁判所に起こせるようになります。

 現行法では、父は「私の子でない」という訴えを起こせるが、母は「この子はあの人(法律上の夫)の子でない」と訴えることが認められなかったのです。

 

 明治期に現行法の嫡出推定の規定を設けたのは、家父長の権限が強かった時代に、父親の勝手で、「私の子ではない」などと言われたら、子どもの権利が守られないという「子どもの人権重視」の観点からだったそうです。

 立場の弱かった妻と離婚するのは自由だが、おなかの子どもの人権は守ろうということだったのかもしれません。

 

 しかし、今はDNA鑑定で親子関係が容易に判定できるようになり、また、かつてはなかった「夫の暴力から女性を守る」という考え方が当たり前となり、多くの規定の見直しが必要になりました。

 改正法では「嫡出否認」を申し立てられるのは原則、出生から3年間ですが、法律上の父とあまり同居したことがないような場合、子は例外的に21歳(成人後3年を経るという意味)まで嫡出否認の訴えを起こすことができます。

 

 民法改正案は、今年の秋以降、国会で審議されることになります。成立後、施行までに1年ほどかかる見通しです。

 現在、無戸籍になっている人が、この法改正で救われるよう、私は、法務省に対し、過去に遡及する経過措置を設けることを、強く求めています。