中学生の頃、渋谷陽一の「ロックミュージック進化論」なんて本を読んでいた。表紙にドアーズの2枚目や(うわっ、暗っ!)ツェッペリンの4枚目のアルバムが載っている。
この本に感化されて、ジョン・レノンの「ジョンの魂」をよく聴いていた。
「ジョンの魂」は、暗い曲ばかり。それでも、当時の俺には心の隙間に入り込む曲ばかりで、暗い曲好きになってしまった。よくカラオケのある飲み屋で「暗い歌ばっかり歌うのね。」と呆れられるが、もともとは、この本のせいだ。
そういえば、この本を読んでいた頃、中学校の生徒会の選挙があって、俺は別に望んでもいないのに勝手に副会長候補にさせられた。それで「僕は、前任と同じことしかしない。いろいろとやるって、ほかの候補者は言っているけれど、バクバク口を動かしているだけで、そんな特別なことなんか出来っこない。ダボハゼと同じだ。」なんてことを演説した。選挙では当然落ちた。1ミリも悔しくなかった。
ダボハゼがどんな魚なのかも知らなかった。この単語も、使い方も、渋谷陽一の「ロックミュージック進化論」で覚えた。今から考えると、本当にろくでもない本との出会いだった。
僕が自分では読む割に、そんなに人には読書を勧めないのは、こういった不幸な出会いもあることをよく認識しているからだ。
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高校時代にはビートルズをよく聴いていた。大学生になって数年経ってから、友達に「ビートルズは聴かないの?」と聞いたところ「俺はストーンズ派だから。」と言われた。
この一言で、俺のビートルズ熱は一気に冷めた。確かに飽きていたし、ビートルズの曲っぽい曲が世の中にあふれていた。それで冷めたどころか嫌悪するようになった。それ以来、ビートルズはほぼ聴かなかったし、聴いているという人をどこか馬鹿にしたような感覚で見ていた。
それでも、ビートルズは、聴きたくなくても、どこかで聴かされてしまうのだった。特に12月は。
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今週はボイトレがあった。ボイトレの前日、トレーナーからLINEが来た。「歌いたい曲がありますか?」
考えてみたけれど、特に歌いたい歌が、僕にはなかった。それで、僕に合いそうな曲をあげてもらった。
星野源の曲だった。でも全く知らなかった。昔はあんなに音楽を聴いていたのに、もうすっかり聴かなくなったから。今っぽい曲は何も知らない。時代に取り残されていることをますます自覚した。
ネットでも見てみたけれど、俺が星野源を歌うイメージがさっぱりわかなかった。それで途方に暮れていたら、トレーナーから「ビートルズのア・ハード・デイズ・ナイトは?」と聞かれた。
当然、知っている。でもなあ。ビートルズかあ。
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その日の夜、飲み屋に行って、飲まなかったけれど歌った。覚えたての星野源はとても不評で、「全く雰囲気が合わない。」とダメだしされた。ア・ハード・デイズ・ナイトはまあまあだった。一番受けたのは、その日初めて歌った氣志團の「ワン・ナイト・カーニバル」だったけれど、この曲はさすがにボイトレには向かない。
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ボイトレに行く前に、ネットで、ア・ハード・デイズ・ナイトの歌い方についての動画を見た。
世の中には、こんな動画もあるのか。
このなかで、LとRの音の違いについての説明があった。ラリルレロと言ったとき、上口蓋に舌が付くのがLで、つかないのがRといったような説明だった。
こんなにわかりやすい説明を聞いたのは初めてだった。
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ボイトレで、ア・ハード・デイズ・ナイトを練習したときに、LとRの発音について、トレーナーに、ネットで勉強したことを話した。
トレーナーが説明してくれた。「そのとおりだけど、でも、日本語のラリルレロの方が、Lの発音よりも、上口蓋に付く舌の位置が前」だという。「Lの発音は、もっと奥の方で、上口蓋に舌を付けてください。」
ア・ハード・デイズ・ナイトは、少しずつ、歌えるようになってきた。
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今週は、大学の勉強は、テスト用のレポートを3本ほど書いただけだった。多くの時間を証券外務員一種の試験の方に使った。
証券外務員試験は、思ったよりも手ごわくて難しい。もっと常識で簡単に解けるのかと思っていたけれど、技術的な要素も多い。何よりも知識が足りない。
11月28日の午前中に試験を受ける。その前に、手術を受けないといけないしなあ。そう考えるとあんまり時間がない。
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ネットフリックスのドラマ「サンクチュアリ-聖域-」を全話見終わった。
九州の不良が、金もうけを夢見て、東京の相撲部屋に入る話だ。そこで、相撲取りとして成長していく。その間、世の中にも相撲部屋にも揉まれることになる。
とても面白かったし、見ごたえがあった。第1話の冒頭で、兄弟子が大便をし終わったあと、「尻を拭け」と拭かせるシーンがあって、そこで、脱落しかけた。でも、脱落しなくてよかった。
破天荒だった時代もそれなりに面白かったが、まともに努力し始めてからは、ますます面白くなってきた。このドラマの監督はストーリーテリングの能力高いなあ、と思った。見ていた自分自身にも勇気がわいてきた。
ネットフリックスって、やっぱりすごい。このレベルのドラマをまだまだいっぱい見たい。