長野県の田舎から、20代の別の課の部下が名古屋に遊びに来た。行きたいのは「都会のキャバクラ」だという。会うのは4か月ぶりだ。
「一応、10万円くらい持っていけばいいですか?」
「そんなにいらないよ。5万円もあれば十分過ぎるくらいだろ。」
それで夕方、名古屋市の錦を歩いていたら、客引きの人につかまった。
「今、7時だけど、キャバクラは8時からだから始まってないよ。それまでスナックで飲まない?そのあと、キャバクラに連れていきますよ。今なら1時間3500円でいいです。」
それでスナックに行った。スナックのなかはガラガラで、カウンターに女の子が3人いた。女の子のドリンクが1杯、3600円もするのだという。俺たちは2人なんだから、3人もいらないし、それにドリンクが高すぎると思った。
元部下が「いいですよ。俺が出しますよ。」と言って1万円を出す。
「これじゃ、足りないですよ。」と女の子に言われて苦笑する。それで俺が払った。
途中でテキーラを出される。だんだん酔いが回ってきて、女の子のドリンクが何回かあって、たちまちお金が無くなった。
店を出たとき、もうすっかり財布が空だった。外には、さっきの客引きが待っている。「次、キャバクラに行きましょう。」
「もうお金がないよ。」
「ATMの場所を教えますよ。」
ATMでお金をおろして、キャバクラに行く。キャバクラと言い張っていたが、どこをどう見ても普通のスナックだった。よくわからないまま、そこで飲む。今度は女の子のドリンクが1杯5000円で、おまけにまた3人も女の子が付いた。そして別に、きれいでもかわいいわけでもない。
「俺たち2人だから、3人もいらないよ。1人だっていいくらい。」
さっきにも増して、お金が減っていく。当たり前だ。少し多めにお金を引き出していたが、それでも店を出るときにはすっかり空になっていた。
店を出るとまたあの客引きが待っている。「もうお金ないよ。」「いえ。たくさん使ってくれたので、お礼です。」お菓子の詰め合わせだった。
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それからまたお金を下ろし、俺の宿舎の近くの飲み屋で2人で飲んだ。結局、キャバクラには行けなかった。
「僕もう財布、空です。5万円でいいなんて言ってたのに10万円だって全然、足りないじゃないですか。」
そう。マイルドにボッタくられていた。もらったお菓子の詰め合わせは、飲み屋に「あげる」と言って置いてきた。
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土曜日は2日酔い気味だったが、それほどひどくはなかった。暑い中、2人で歩いてマッサージ店に行った。
本格的なマッサージで、痛いくらいだったけれど、体が軽くなったような気がする。でもマッサージ師に言わせると「体の水分移動をしているだけだから、2時間で元通りになっちゃいます。」のだそうだ。
最後にシャワーを浴びた後、汗をたっぷりと吸った濡れた下着をまた身につけるのはかなり抵抗感があったが、仕方がなかった。
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午後5時台の中央線に乗って帰るというので、食事をしてから昼キャバに行った。
「ようやくキャバクラに来れました。長かった。」と彼が言う。
普通に1時間過ごして、彼の分も払ったが、2人で1万円前後だった。そうだよな、これが適正な価格ってもんだよな、ということを2人で話した。
電車が出発するまで、1時間ほどあった。それで、近くにあったメイド喫茶に行ってみた。
最初にルール説明がある。
「公序良俗に反する発言をされた方」は追い出されるのだと説明を受けた。
メイドの女の子は、基本的に机の隣に立って話をする。
俺はアニメも詳しくないし、こういう文化もよくわからない。けど、いろいろと話を聞いた。
「目を見て話されるの慣れてないから照れちゃう。」とメイドが言う。
「じゃあ、どこ見ればいいの?胸とか?」
「あ、それ禁止事項です。」女の子が「公序良俗に反する発言をされた方」と書かれた紙を指さす。
「もう一度、言ったら追い出しますからね。」と言って笑う。
始まって20分でイエローカードを出されるなんてなあ。
電車の切符を買わなければならなかったので、30分ほどで店を出た。
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みどりの窓口で、切符を買う。たかが長野までの切符を買うのに、どれだけ時間がかかるんだよ、と思うくらい時間がかかっていた。
「新幹線で、東京駅経由で帰ることになりました。」
「なんで?」
「中央線、止まっているそうです。」
「マジか!」
通常であれば7500円くらいのところ、1万5千円もかかるのだという。
「なんか、今回は本当に金取られるね。最後はJRにまで。」
「本当に。まったくですよ。」
そういいながら、彼は名古屋駅の新幹線口を通過していった。