職場では、夏の間、ワイシャツではなくポロシャツでもいいことになっている。でも、実際にはどんなポロシャツでもいいというわけではなく、会社のロゴが入っているものがなんとなく推奨されている。
使用したワイシャツは全てクリーニングに出すので、ロゴ入りのポロシャツで済むのは経済的にありがたい。
そんなわけで、ある日の朝、俺はロゴ入りのポロシャツを「今日着ていく服」ということで、ベッドの上に放り投げた。それから、朝食を作って食べたり、ひげを剃ったり、シャワーを浴びたりいろんなことをした。
そして、いよいよポロシャツを着ようとしてベッドの上を見たら、ポロシャツがない。無意識のうちに、ポロシャツを運び、どこかに置き忘れたようだ。
勉強用のイスの上にあるかもと思って探したけれどなかった。本棚にもなかった。あらゆる引き出しを開けて探したけどなかった。もしかして、と思って冷蔵庫の中を見たけどなかった(本当に冷蔵庫の中にあったら、それはそれで、冷えていて気持ちよさそうだとも思った。)。
「そのうちに見つかるからいいや。」と思って、その日はワイシャツを着て職場に行った。
帰ってきてからも探してみた。こんな狭い部屋のいったいどこにしまい込んだのだろう。見つからないのかが不思議だった。それから毎朝探したけれど、何日も見つからなかった。
週末に洗濯をした。洗濯物を干し始めたとき、そのなかにポロシャツがあった。俺は気がつかないうちに洗濯機のなかにポロシャツを放り込んでいたようだった。「洗濯機のなかは盲点だったなあ。」とそのときに思った。
+++
10インチのキンドル・ファイアが壊れて、充電ができなくなった。ネットに載っている方法は全て試した。コンピューターのUSBから低電圧で復活させるという記事を読み、その方法で一時期は充電15%まで回復したが、再びの充電はできず、最後はただの黒い板になった。
15%まで回復したときに、決断をして「工場出荷状態に戻す」という方法にチャレンジすることにした。でも、そのためには30%の充電が必要ということでそれすらできなかった。
アマゾンに電話したら、丁寧に回答してくれたが、やはりどうしようもないことがわかった。
ただ、電話したときに、俺は8インチのキンドル・ファイアも持っていることを教えてもらった。そういえば実家に置いてあるような気がする。今度、実家から持ってくることにした。
+++
土曜日は実家の地域は秋のお祭りで、俺も神輿を担ぐことになっていた。
しかし、腰が痛くて歩くのにも支障があり、とても神輿は担げない。それで週末はお祭りにも行かず、実家にも戻らなかった。
+++
小学生の頃、自宅にファーブル昆虫記が全巻あった。内容はほとんど覚えていないが、全巻読んだ記憶がある。今の虫嫌いが不思議なくらいだ。
脚注まで読んでいて、第2次世界大戦時に、日本は負傷兵の傷口にわざとウジをたからせたということまで読んでいた。消毒薬が足りなくなったためにそうしたそうだが、ウジは壊死した部分しか食べないので、患部が清潔になるのだという。
一時期、病院に勤務したとき、このことが事実だと知った。無菌のウジを患部にあてがうやり方は、マゴットセラピーと呼ばれ、未だに使われている。患部の治りもいいのだそうだ。
+++
中学校に入って国語の授業で、俺たちは教科書に載っていたファーブル昆虫記の一部を読んだ。ある種のハチが、甲虫の体に卵を植え付けるという話しだった。俺は、その話しはとっくに読んでいた。その話しを読み終わった後、国語の先生が「今の場面を、図に書いてみるように。」と言った。
俺はすぐにその図を書いて、それから周りの人の書いた図を見た。驚いたのは、周りの人が俺と全く違う図を書いていることだった。そこで、俺は改めてその文章を読んだ。
周りの人たちが正解だった。俺はすごくショックだったし、恐怖も感じた。その頃から、クラスで一番本を読んでいる自覚があったけれど、本を読んでも全く正しい理解ができていないのではないかと不安になった。
+++
未だに、俺だけがミスリーディングをしているという恐怖はどこか残っている。先日、ちょっと仕事で必要があって、民法の条文を調べたとき、その配置のわかりやすさに驚いた。司法試験の勉強中、心のどこかで「条文ってわかりづらい配置になっているなあ。」と思っていたけれど、今見ると合理的だ。この合理性を体感できなかった俺の勉強っていったい何だったのだ。あれだけ勉強していて、こんな簡単なことがなぜ(俺だけ)わからなかったのだろう?
この合理性を体感してから勉強するのと、ずっと苦手だと思いながら勉強するのだとその結果は大きく違うと思う。バカだったんだなあと思うと同時に、なんだか悔しいなあ、という思いもある。俯瞰で見る技術が、理屈は知っていても、身についてはいなかった。
+++
今している英語でもそう。ちゃんと読むとそう書いてあるのに、俺はざっと読んで全く違うように意味を理解してしまう。
なんというか、今まで好きな女の子となかなかうまく付き合えなかったのもきっとこんなことが原因なんだろう。俺だけがミスリードしていたんだ。きっと。
+++
今日は、夜、大雨注意報が出たら職場に行かなくてはならない。台風15号が直撃するからまず出るだろう。
夜のために、今から寝ておくことにする。
+++
村上春樹の「騎士団長殺し 第1部顕れるイデア編」(新潮社)を読み終わった。
いったいいつになったら読み終わるんだろうなあ、と思うほどベッド脇に置いてあった。なんだかつまらなくて、読み進めることができなかった。主人公はやたらとセックスをする。そんなにしなくてもいいんじゃないかと思う。世の中の人は、セックスがこんなに好きなんだろうか?もう地球の女に飽きてきた(ってほどしてないけど)俺には無理だ。
ところが、英語の勉強に心底飽きて、それからキンドルが壊れて充電できなくなって、読み始めたら今度は止まらなくなった。
免色(めんしき)という名の、大金持ちがストーリーに出てきてからストーリーに弾みがついた。そして表題のとおり、イデアが顕れる。文学の衣を被っているが、質のいいSFの感覚で読み進めることができた(基本的に、村上春樹はそうだけど。)。
今後この話がどうなるのか期待している。続編もきっと読むだろう。ただ、近未来の俺にひとこと言いたいのは「できることであれば、続きを読むのはTOEICの試験が終わってからにしてほしい」ということだ。
意外としぶとく読みたい本はいろんな理屈をつけて読んでしまうので、自分のことながら、自分自身をまったく信用できない。すぐに読んじゃいそうだなあ。
