昨年、心臓の手術を受けてから、2か月に1度、病院に通っていた。今度、転勤することになったので、長野市にある病院に通うことにした。そのためには、今まで通っていた病院の先生に紹介状を書いてもらわなければならない。。

それで水曜日に1日休んで、実家に帰り、病院へ行くことにした。

日帰りだってかまわなかった。でも、火曜日の夜に帰ることにした。実家で寝るつもりだった。火曜日の仕事の後、着替えてから車に乗って、実家へ向った。

実家は、引っ越す前に姉が掃除をしてくれたせいで、どこか清潔だった。そのまま寝たってよかった。でも、食事がまだだったことに気がついて、食べに行くことにした。

車を運転しながらどこに行くか考えていた。そして、結局、行きつけのバーに行った。夕方に強い雨が降ったせいなのだろうか。歓迎会等で混んでいるかと思ったが、俺以外にはお客はいなかった。

「俺のボトル、まだある?」
俺のウイスキーのボトルは、某蒸留所の限定もので、滅多なことでは手に入らない。値段もそれなりにする。見るたびに俺も偉くなったものだと思う。

ウイスキーのボトルはまだ半分以上残っていた。水割りの用意をしてもらっている間に(そういう貴重なウイスキーを水で割っちゃうあたりがへなちょこだと自分でも思うが仕方がない)、ビールを飲んだ。
「じゃあ、ウイスキー飲む?」
「どうしようかなあ?明日、病院に行かないといけないから、軽くしたいんだけど。」
「シャンパン飲んじゃう?」
「ハーフのボトルってあるんだっけ?」
「そんなのない。でも、すぐに1本くらい飲んじゃうから大丈夫。」
「そうだっけ?」
結局、ギーのシャンパンを1本開けてしまう。

そして、ウイスキーを少しだけ飲む。まだお客は俺一人。時間だけが過ぎていく。
「今日はお客来ないから、もう閉めて遊びにいっちゃう。」
お店の人が言うので、一緒に店を閉めて、店を出て、それから、ロックを聴く店でロックを聴いて、カレーを食べて、それからまたどこかのバーで強いカクテルを飲んで、12時を十分に回ってから、実家にまた帰ってきた。

翌朝、病院からの指示で、朝一の小便を試験管に入れなければならない。紙コップに小便を入れて、それを試験管に移しながら、まだ飲んでから時間が経っていないから尿からアルコールが検出されそうでやだなあ、って思った。

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診察は午後からだった。先生が緊急対応に追われていたらしく、かなり待った。待ち時間の間、ぶつぶつ言っていた患者もいたけれど、俺は、俺もこんな風に多くの人に迷惑をかけながら、救われたんだなあ、と思っていた。だから、文句なんか言えるはずもなかった。

心配していた尿検査の数値はそんなにすごくひどいこともなかったようだった。言い訳を山ほど考えていたけど、使う機会はなかった。紹介状も書いてもらえることになった。

別れるときに「先生のおかげで、命を救ってもらえました。ありがとうございました。」と頭を下げた。先生は笑いながら「私じゃないですよ。ほかの人の対応がよかったんですよ。」と言った。

偉い人は、威張れるときに威張らないものだと、知っていたけれど、すごく嬉しい気分になった。こんな先生に診てもらって本当によかったと思った。

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週末はまたしても実家に帰った。いろんな所に、お土産を持って行き、引っ越しの報告をする。

夜は姉の家で、夕食をご馳走になるはずだった。ところが、姉の義母が亡くなって、それどころではなくなった。俺は姉に頼まれて、姉の家で犬と一緒に遊んだり一緒に本を読んだりしていた。

俺は寝ながら、太宰治の「走れメロス」や「富嶽百景」なんかを読んだ。心の底からつまらないと思った。俺には文学はわからんと改めて思った。

俺の背中には、犬が乗って寝ていた。太宰治は「苦悩の量なら誰にも負けない」そうだ。本当にくだらないことを書くやつだと思った。犬の重さと体温を感じながら、苦悩なんて測る尺度がないものをいっぱい持ってるって自慢されてもなあ、と思った。

高校生にはジェフリー・アーチャーの「ある愛の歴史」とか、ラッタウット ラープチャルーンサップの「徴兵の日」とかを読んで欲しい。そっちの方が読む価値がある。もっとも俺には太宰治の良さがぜんぜんわからない、という俺の国語能力だけの問題だとは自覚しているけれど。

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そうこうして、土日も終わり、今は長野に戻ってきた。実家に帰ったとき、山ほど漫画をキンドルにダウンロードしてきた。

しばらくは漫画を読んで暮らすんだと思う。

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作元健司の「終末の天気」(ヤングマガジンコミックス)を全3巻読み終わった。

1巻目はすごく面白かったのに、2巻目から話がつまらなくなり、3巻目では「これが終わり?」って感じにこぢんまりとしたお話になってしまっていた。

主人公のやさぐれ感はリアリティがあったけれど、ほかの登場人物にリアリティがなさすぎ。特に友達の銀行員にはリアリティが全くない。銀行員に限らず、普通の会社で偉い人が靴にお酒を入れて「偉くなりたかったら飲め」なんてことは言わないだろう。飲んでも飲まなくても、どっちにしたって、そんなことを言うやつは頭がおかしいから、偉くなれない。だいたい、靴に入れた酒が高い酒だったらもったいないだろう。偉い人も濡れた靴を履いて帰るのだろうか?

この漫画の発想は俺はすごくいい。どこをどうしたら成功したのだろうと後からいろいろと考えさせられる。そういう意味では、優れた漫画だと思う。