先週の土曜日、気象予報士の試験を受けるために東京へ行った。長距離バスに乗って行く。日差しが暖かく、春めいている。初めて東京に行くような、どこか気分が高揚している自覚がある。

田舎の高校生だった頃に戻った気分になる。本当に戻れればいいのに。やり直したいことが多すぎる。

バスのなかでは「ひとりで学べる!気象予報士学科試験完全攻略問題集」(ナツメ社)の「専門」分野だけをひたすら解いていく。
初見ではないけれど、前回解いたのは、8月の試験に行くときだったから半年ぶりだ。バスの中では解き終わらなかった。ホテルに着いてからも解いた。正答数は117問中110問。このくらいはできるだろう。解けなかった問題があることの方が、大問題だ。

誤った問題の中には「見逃し率」を出せという問題があった。俺は簡単な問題だと自信満々で「空振り率」を計算していた。解答を見た瞬間、あまりにひどい間違い過ぎてバスの中で絶叫しくなった。

いつになったら先入観からくる問題の読み間違いはなくなるのだろうか。試験本番では本当に気をつけようと思った。

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今回泊まるのは三鷹。宿泊予定のホテルには午前11時30分頃に着いた。チェックインは午後2時。とりあえず、ホテルのフロントに荷物を預けて、試験会場である成蹊大学までの道を教えてもらう。思ったよりは距離があったが、コースはそれほど難しくもない。

そんなに迷うこともなく大学にたどり着く。ホテルから30分くらい歩いた。普段運動不足の俺には長い道のりだった。再びホテルまで戻る。ホテル近くの中華のお店でとんかつ定食を食べてしまうと、チェックインするまでの間、本格的にすることがなくなった。

近くにマッサージ店の看板があった。電話番号が書いてある。その番号を見ながら電話をした。空いているというので、60分の整体コースを予約した。

「いつですか?」
「今からすぐ。」

若い中国の女の人だった。俺は、昔からこういうマッサージの女の子とは相性がいい(あまり悪いやつはいないかもしれないけれど。)。細くてかわいい女の子だった。へなちょこなマッサージなんだろうな、と思っていたけれど、マッサージのときの力はすごく強くて驚いた。「痛いですか?大丈夫ですか?」と聞かれるたびに「大丈夫、大丈夫。」と答えた。「痛い。」って言おうかな、と思う頃に、ちょうどいい感じになったりするので、なかなか難しい。

マッサージが終わって、外を歩くと、体が軽くなったような気がした。すぐにその感覚も失ったけれど、効いたなあ、という感じがした。そして、ホテルにチェックインをした。ホテルの部屋が広く、勉強机も広いのが気に入った。ベッドを見ると、ちょっとだけ昼寝をしたくなり、2時間ほど爆睡してしまった。

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ホテルでは実技の勉強もした。俺のなかでは一番解きやすい過去問(平成27年度第2回第2問)を解いた。

気圧というのは当然、下の方が高く、上空が低い。下が1000hPaで上が900hPa。じゃあ、900hPaよりちょっと下は?当然、910hPaなのだが、俺はそこに990hPaと書いてしまう。

「お前は素人の受験生か!」誤りのレベルが低すぎて泣けてくる。

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夜は財目かおりの「気象予報士かんたん合格ノート」(技術評論社)の専門から後のページを読んで寝た。
 

この本はなかなか厳しいことが書いてあって、気の弱い俺は読んでいると泣けてくる。

例えば「低気圧前面で、暖気移流と上昇、後面で寒気の移流と下降がみられる」という文章と「低気圧前面で、暖気移流と、上昇流が、後面で、寒気の移流と、下降流がある」は得点が倍違うのだという。後の文章だと、上昇流の前に句読点があるので、寒気の上昇流とも読めるからだという。

そのくせ、温帯低気圧の説明を自分でしているところでは、「低気圧前面は、相対的に暖域、上昇流域となり、暖気移流が見られる。低気圧の後面は相対的に寒気域で、下降流であり、寒気移流が見られる」と表現している。この文章だって、上昇流域の前に句読点があるから寒気の上昇流域とだって読める。わざわざ問題がある文章で説明することはないだろう。

彼女は気象予報士は国語の試験だという。もし、本当にそう思っているなら、タイトルに「かんたん合格」なんて文字をつけたら間違いだ。書いている内容は相当に厳しい。ただ、そういう本だと思って読むと役に立つ。

そして今回は読まなかったけれど、この本に書いてある「ちょっとエッチな語呂合わせ」。キレが悪すぎて使えない。「イメージをたっぷり膨らましてください。」だって。膨らむか、へたくそ!

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試験本番。「専門」の試験では問1の1番最初の選択肢でいきなり間違えた。「ふぶきは、雪が降ると同時に、積もった雪が地上高く吹き上げられる現象である。」という選択肢の正誤を見極める。ふぶきなんて現象は当たり前すぎて、どう表現するのかをまともに読んだこともなかった。積もった雪を吹き上げるのは「地吹雪」だろうと思って「誤」にしたが、正解は「正」だった。

それからも考えたことがないことをいろいろと聞かれ、そのたびに間違えた。自己採点では15問中11問の正解。合格ラインは11問の正解。通常ならギリギリで合格だ。ただこの合格ラインは動く可能性があるし、そもそも自己採点が正しいのかもわからないので、どうなるのか不安でならない。

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「実技」の試験ではトレーシングペーパーが配られる。普段、家では薄くて白いトレーシングペーパーを使って勉強しているが、本番のトレーシングペーパーは厚く、透明感もあった。あまりに透明なので何度も、図に記入しようとして、トレーシングペーパーに書き込んでしまう失態を繰り返した。

1問目は時間が足りなくなり、難問を飛ばしたにもかかわらず、すべて終わったのが、終了直前だった。解答を見直す時間もなかった。

2問目の開始を待つ間、1問目の問題について考えていた。SSIを調べる問題で、-2℃なのか-3℃なのか迷ったことを思い返していた。そして突然、解答のときにマイナスの符号をつけ忘れたことに気がついて、心が折れそうになった。-2℃と-3℃では意味はほぼ同じだが、-2℃と+2℃は意味が大きく違う。「やっちまった。」少しの間、呆然としていた。

2問目は、終わったときに20分も余っていた。24時間後に現れた低気圧は、12時間前はどこにいたのか?といった俺には解けそうにない問題を適当にすっ飛ばしたせいだ。でも、こんなに時間が余るなんて想定していなかった。もう2度と問題用紙なんか見ないだろうと、引き出しをゴミ箱代わりにして終わった問題用紙を突っ込んでいた。

突っ込むのはいいが、試験官の目の前で、引き出しから問題を取り出すのは相当な勇気がいる。俺は諦めた。だから、問題を見直すことができなかった。20分間、解答用紙を見たり、解き終わったばかりの問題を見たりしていた。

解答用紙を見ていたら、低気圧を低地圧と書いていて、あきれた。こんな間違いを俺はいっぱいしているんだろうな、と思った。

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今週は久しぶりに飲みに行った。シャンパンを1本飲んで、ウイスキーも飲んだ。でも、心のなかのどこかに挫折感があって、なかなか気分よく酔えない。

ここのところ、毎朝5時30分に起きていた。習慣で起きてしまうが、しばらくは気象の勉強をする気にもならない。

気象の勉強以外の勉強をしようと英検1級の問題集を解き始める。

1問目。4つの選択肢があるが、その全ての選択肢の意味がわからず、苦笑してしまう。気象予報士の合格発表までのしばらくの期間は、こんな不完全燃焼の日々が続くのだろうとどこか諦めている。

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アークティック・モンキーズのアルバム「AM」を聴く。
 

俺がしばらく聴いていない間に、ロックの歌詞も進化したものだと思う。
明るい時代のロックの歌詞では、彼女の元には走って行ったものだ。今は這っていく。しかも拒絶されるのを恐れながら。

今の俺には、こういう曲の方が合っている。ただ、俺は女の所有物になりたくないし、所有物にもしたくないけど、アークティック・モンキーズはそうでもないらしい。

歌詞には、映画やテレビ番組も散りばめられている。小説に近づいている気がする。そういえば、ボブ・ディランもノーベル文学賞を受賞したんだっけ?と思った。

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「100円の恋」という映画もDVDで見た。

ただ腐っていただけの30代の女が、家を追い出される。
100円ショップでバイトをして、ダメな年配のボクサーを好きになる。

そして、自分でもボクシングを始める。
いろんなつらいことが重なり、彼女はますますボクシングに打ち込んでいく。

最初は、主人公が俺が一番嫌いなタイプの女だったので、見るのやめようかと思ったくらいだったんだけど、ボクシングに打ち込み始めてからはよかった。

シャドーボクシングを見ている範囲では、フットワークがよく、左フックもいい角度で入っていて、これならいけるんじゃないかと思った。

試合ではなぜか涙がこみ上げてきて、泣けた。100円の価値しかないような人生を彼女は生きてきて、100円で買えるような恋をして、それも全部、自分のせいで、誰も助けてくれないけど、それも自分のせい。

孤独なリングで、彼女は人生を振り返り、試合に勝ちたい一心で顔をボコボコに腫らしながらも手を出し続ける。もはやフットワークは効かず、コンビネーションもむちゃくちゃだ。すぐにクリンチをして、審判にブレークされる。

感動したのかどうかはよくわからないけど、試合では本当に泣けた。そうは思わなかったけれど、いい映画なんだと思う。