僕の住んでいる街のゴミ袋は、「再生紙や製材の残り、樹皮等からつくられてい」るのだそうだ。紙袋なので、「「生ゴミ」を入れる場合には十分水切りし」ろと書かれている。
袋の内側には、クラフトテープのような光沢がある。ある程度は防水になっているのだろうと思っていた。それで、スイカを食べる度に、皮を放り込んでいた。
スイカの皮をゴミ袋に入れておくと、ショウジョウバエが発生する(正確には「発生」はしない。イタリア人が350年前に実験している。)。それで、僕はスイカの皮を放り込んだあと、上から軽くカビキラーを噴霧していた。基本的に塩素は毒ガスなので、きっとハエが来たりしないだろうと思っていた。実際、ハエはあまり寄ってこなかった。
僕は一人暮らしなので、そんなにゴミの量は多くない。2週間ほど経ってからゴミを捨てようと思った。でもゴミ袋の中身が半分にも満たなかったので、勉強部屋にあるゴミも入れちゃおうと思って、ゴミ袋を持って勉強部屋へ行った。
勉強部屋で、ゴミ袋の空いたスペースに上からゴミを入れた。それからゴミ袋を持ち上げた。その途端、ゴミ袋の底から大量の液体がこぼれた。底が破れたのだ。その液体は濃い茶色をしていて、ものすごく臭かった。うひゃあ、と思って、そのゴミ袋を持ったまま玄関まで走った。
もう、なんてこった。新しいゴミ袋を持って、玄関に行き、新しいゴミ袋のなかに、破れたゴミ袋を入れた。それから、大量のタオルをムダにしながら、こぼれた生ゴミの匂いのするすごく臭い液体を拭き取って歩いた。
玄関は生ゴミの香りに満ちていた。玄関もタオルで拭いた。それから、ゴミ袋を見てみたら、破れたゴミ袋を入れたゴミ袋からも液体が浸みだしていた。
うひゃあ、と思って、またゴミ袋を出してきて、そこに入れようと思ったけれど、体積が妙に大きくなっていて、入らない。
仕方がないので、大型のゴミ袋を持ってきて、底にタオルを敷き、全てのゴミ袋を中に入れた。なんとか収まったような気がした。たった1回分のゴミを出すのに、有料のゴミ袋を4袋も使ってしまった。タオルも何本使ったかわからない。自分を怒りたい気分だったけれど、相変わらず家中が生臭く、怒っている場合でもなかった。
ゴミ集積場にゴミを出したあと、家のなか2カ所でアロマのお香を焚き、ファブリーズをあちこちにして歩いた。
職場で同僚に聞いたら、スイカのような生ゴミはビニール袋に入れてから、ゴミ袋に入れるのだそうだ。俺は紙製のゴミ袋にはビニール袋は入れてはいけないのだと思っていた。
家の中はそれから4日くらい臭かった。でも誰も訪ねてきたりはしないので、それはそれでかまわなかった。生ゴミの匂いは最初はきついが、3分ほどで慣れることを知った。嗅覚細胞が麻痺しやすいことは知っていたけれど、本当だったんだと思った。
勉強部屋の変更はしなかった。臭くても普通に勉強をした。僕は面倒くさいことをやるよりも生ゴミの匂いに耐えることを選んだ。
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今週は、仕事が忙しく、毎晩残業続きだった。おまけに仕事のひとつひとつがストレスフルだった。
契約先が信じられないようなミスを犯し、おかげで、随分と俺が怒られる羽目になってしまった。その後処理も、その他の仕事の処理も本当に大変だった。
だから勉強どころではなかったんだけど、毎朝1時間は早起きして勉強をした。もっと前から勉強していれば、とは思ったが、もう過去の自分について責めるのはやめにすることにしたので、あまり考えないようにした。
ついでに、過去の他人への怒りや恨みも、腹立たしかった出来事も、全て許すことにして、全部そういう思いは捨てることにした。そんなことを考えるのはムダなことだと最近、考えるようになった。嫌なやつのことを思い出して再び怒りをたぎらせるよりも、許して忘れてしまった方がいい。
もう昔のことなんかどうでもいいと思ったら、すごく楽になった。これからの自分についてよく考えて、自分が努力することに集中しようと思った。
そんな風に考え出した途端に、いろんなストレスフルな出来事が次々と起きるのは不思議だけど、起きちゃったんだから仕方がない。そんなことで、自分を責めることも、もうやめにする。そのうちに、全てが好転するだろう。
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気象予報士の試験を受けるために、金曜日に夏休みを取った。
夏休みは取ったけれど、職場には行かなくてはならなかった。
午後1時頃に職場を出た。
金曜日のうちに、東京に行って、土曜日はホテルで勉強する予定だった。
試験会場は吉祥寺にある成蹊大学だった。
吉祥寺のホテルを探したが、取ることができず、立川に泊まった。
立川の近くの国分寺に叔父が住んでいた。大学時代は、いっしょに一人暮らし用の部屋を探してもらうなど、いろいろとお世話になった。その叔父が亡くなって、2年になる。
お参りをしたいと思い、叔父の家に行った。金曜日の夕方に行ったのだが、いろいろとごちそうになり、おばさんや従兄弟と話をしているうちに夜の10時を過ぎてしまった。
土曜日は一応、朝からホテルで勉強をした。
自信は全くないが、これが今の実力なんだから仕方がない。
とりあえず、明日は勉強してきたことを出し切れればそれでいいと思う。
それが難しいことはよくわかっているけれど。