僕の仕事は苦情を受けることが多い。先週もじいさんがやってきて、さんざん苦情を言って帰っていった。当初は午前10時の約束で、担当が待っていたのだが、午前10時には来なかった。もう来ないのかと思っていたら、昼休みに来たので担当がいなかった。それで俺が対応をした。


無意味に長い苦情だったが、要約すると「金を払え」と言うことだ。


つい先読みをしてしまうので、最初にお金の話が出た瞬間に「無理です。」と応えてしまった。おかげで、「意識改革をしろ」だの「態度が悪い」だの余計な意見まで聞く羽目になってしまった。


月曜日に上司に報告すると、その昔、僕の部署にいた人が、そのじいさんにつかまって、長期間にわたって無理難題を押しつけられて、ノイローゼになったのだという。そのじいさんは様々な部署に行っては苦情を言っているらしい。「最近、聞かないなあと思っていたけど、来たか。」と言う。


月曜日のうちに電話が何度も来た。「一番上の上司を出せ」と言っているらしい。
それで、僕が対応することにした。
「私は上司につなげと言ったのに、どうしておまえなんかが出るんだ。」
「こちらの部署の話なので、上司は出せません。用件は何ですか?」
「おまえの態度が悪いから、上司に小言を言うんだ。つなげ。」
「私の態度が悪いということですか。そういうことでしたら、私の評価は課長がしておりますので、課長に代わりますが。」
「課長じゃない。私はもっと上の上司に代われと言っているんだ。」
「代われません。」
「代われないはずがない。今までだって代わってもらっていた。」
「今まではどうか知りませんが、代われません。」
「代われない、じゃない!バカにしているのか!おまえのことは、上司だけじゃすまさない。本部の人事課にも伝えるからな!」
「どうぞ。」
「必ず、連絡するぞ!連絡すると言ったら、私は必ず連絡するからな!」
「どうぞ。」
電話は切られた。


あのじいさんは人事課にも電話をしたのだろうか?と思う。人事課も、あの話を延々と聞かされるなら気の毒な話だなあ、と思う。そう考えるとあちこちから苦情の電話が来る人事課という職場も結構つらそうだ。


以前、ものすごいクレーマーに課長と2人で相手方の家に説明に行った際、「おまえは俺の家に入るな!」とまさかの門前払いを食らい、課長しか家に入れなかったことがある。俺はクレーマーに対する態度が悪いんだろうなあ、とも思う。でも、改める気はさらさらない。


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いろいろとあって、仕事は忙しい。月曜日は昼に何か買いに行く余裕もなかったので、引き出しにあったシーチキンの缶詰を開けて、それだけを食べていた。今週末も土曜日は仕事で、日曜日は地元の行事があって、休めない。


だから、今週、一泊二日の人間ドックがあることをすごく楽しみにしていた。


朝、9時に病院に行くと、今夜泊まる病室に案内された。健康診断の場所からはかなり距離があった。医療事務の人が親切に案内をしてくれる。歩きながらも今日は仕事がないのだと思うと、嬉しかった(きっと、休んだ分、仕事が山積みになっているだろうとも思ったけれど、そこのところはあえて考えないことにした。)。


その病室は個室で見晴らしがよかった。ベッドルーム以外にもう一つ大きなリビングがあった。「スイート・ルームじゃん」と思った。当然、風呂もある。トイレもベッドルームとリビングの2カ所にある。冷蔵庫もあって、そこに入っているお茶などのペットボトルも無料だという。


一応、使い捨てのカミソリも持っていったけれど、それもちゃんとあった。こんな病室が世の中にあることを知らなかった。ベッドサイドのテーブルには、チョコレートまで置いてある(翌日、胃カメラ検査があって20時までしか食べちゃダメというので、20時までに全部食べてしまった。)。


人間ドックの検査とはいっても、僕が検査をするわけではない。基本的に、看護師さんや技師さん達が一生懸命調べてくれる。僕はおしっこを出したり、血を採られたり、息を吐いたり、寝ているだけで、特に何もしない。待ち時間にはずっと気象予報士の問題を解いていた。


そして、料理も美味しかった。みんなが親切にしてくれるので、幸せだった。


病室の窓からは、僕が仕事で関わってきた大きな施設も目に入る。あそこでもいろいろあったんだよなあ、と苦い思いがこみ上げてくる。「でも、とりあえず今は関係がないんだから」と思う。客観的に見ると、その施設もきれいで強そうに見えた。こういう見方も忘れていたよな、と思った。


人間ドックの夢のような2日間はあっという間に終わった。今、書きたいと思っている脚本のネタがある。時間があれば、こんなところで書きたいなあ、と思うような病室だった。どこか身体の調子が悪いところが見つかって、このまま病院に2年間ほど入院、ということも期待をしたがムダだった。


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気象予報士の試験を受けるために、テレビ、ネット麻雀、キャンディー・クラッシュ、DVDを試験が終わるまで封印することにした。とりあえず、テレビの電源を抜き、ネット麻雀のソフトを削除した。


今までインターネットに接続すると、まるでそういうシステムであるかのようにネット麻雀に、接続していた。キャンディー・クラッシュもフェイス・ブックを見るたびに起動していた。どちらもやめたい。DVDで映画を観るのもやめる。テレビはもともとそんなに見ていなかったから大丈夫だろう。


それでも、きっと気づくといろいろとやっていると思う。僕はそういうのが得意だから仕方がない。でも、少しずつ減らしたい。気がつかないフリをしていたけど、実は8月もあんまり仕事を休めなくて、そしてとても勉強しなければならないことが多いことがわかった(知ってたけど。)。


何かムダなことを省かないと、試験に間に合わない。


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係の暑気払いがあって、その後、2次会に行った。
随分飲んだなあ、という自覚はあったけれど、記憶はしっかりしていた。


翌朝、クーラーで冷え切った部屋のなかで目を覚ました。
のどがカラカラに乾いている。


鏡で顔を見る。
顔が赤い。まだアルコールが身体に残っているのだろうか?


シャワーを浴びたら、少しすっきりした。


午後辺りから、身体がだるいなあ、と思っていた。
早く帰りたかった。でも、なかなかそういうわけにはいかず、7時頃に帰った。


家に着いて、ほっとした瞬間に、猛烈な吐き気が襲ってきた。トイレに駆け込んだけれど、何も吐けなかった。それからしばらく、トイレから動けなかった。


身体が熱かった。熱を測ってみたら、38度もあって、いろんな筋肉が痛かった。


翌朝は土曜日だったが、朝7時50分から仕事があった。その前に7時20分には職場に車を取りに行かなくてはならない。部下に電話をして、もし俺が行けなかったら、対応をしてくれるように頼む。


最も苦痛だったのは腹痛で、なかなか寝付けなかった。ずっと横になっていたけれど、なかなか眠れなかった。手足がしびれていた。軽い脱水を疑って、水を飲もうと思ったけれど、冷たい水は飲めそうになかった。ペットボトルを冷蔵庫から出して、常温にしてから、少しずつ飲んでいた。それでも9時頃には寝ていたと思う。


夜間、何度か起きて着替えをした。Tシャツが汗で濡れていた。熱が下がればいいのに、と思っていた。


何度も他の部署の若手が、コンター図(等値線)作りを失敗するという夢を見た。起きる度に、あいつがコンター図を失敗しても俺に何の影響もないんだから、とまともな頭で考えるのだが、眠るとその夢を見てしまい、そのたびにどうしようかと真剣に考えていた。


翌朝、時間をかけた割に満足感の少ない睡眠から起きると、体温を測った。36度台にまで体温は下がっていた。まだ腹は痛かったけれど、それでも仕事に行ける程度には回復をしていた。


仕事中に、なぜか姉から電話があった。体調が悪いことを伝えると、仕事帰りに家に寄りなさいと言われた。


午前中の仕事が終わったあと、姉の家に寄ったら、スイカやおかゆを持たせてくれた。一番嬉しかったのは、朝の残りだという味噌汁をくれたことだった。もらったあとで考えてみたら、僕は味噌汁が飲みたかったことに気がついた。


家に帰って食事をしたあと少し眠った。まだ体調は万全ではないけれど、だいぶ回復した。
明日の日曜日も地元の行事がある。毎日、いろいろあるけれど、頑張りたい。



***おまけ***


統計の第10回目のテーマは「変動係数」。


事例)野球チーム『DPC』の9人の仲間が集まってそれぞれの年収を確かめた。Aさん400万円、Bさん500万円、Cさん500万円、Dさん600万円、Eさん600万円、Fさん600万円、Gさん700万円、Hさん700万円、Iさん800万円だった。


この事例をつかって「変動係数」を出す。


(1)9人の年収を全部足して合計を出す。


400+500+500+600+600+600+700+700+800=5400


(2)合計を人数で割って平均値を出す。


5400÷9=600


(3)9人の年収それぞれから、平均値を引き、それを2乗する。


(400-600)^2+(500-600)^2+(500-600)^2+(600-600)^2+(600-600)^2+(600-600)^2+(700-600)^2+(700-600)^2+(800-600)^2


さらに計算する。


=40000+10000+10000+0+0+0+10000+10000+40000=120000


(4)合計を人数で割る。


120000÷9=13333.333…


(5)正の平方根を求める。


√13333.333…=115.47…


(6)求めた平方根を平均で割り、100倍する。


115.47…/600*100=19.245…


〈解答〉19.25%



〈余計なお世話の解説〉


1 変動係数とは
分散、標準偏差がデータの散らばり具合を知るための指標なのはわかったと思うけれど、分散や標準偏差値は、数が大きくなると値も大きくなるという性質がある。


そこで、標準偏差値を平均で割るという作業をする。そうするとグループの規模を考慮した散らばり具合がわかる。これを変動係数と呼ぶ。


単位は特にないけど、あえてつけるなら%。


実際に計算してみる。


野球チーム「DPC」のAさんからIさんまで、全員が今の年収を100倍した収入があるとしよう。仮にこの年収を100倍したグループをプロ野球チーム「HIM」と呼ぶことにする。


このプロ野球チーム「HIM」の標準偏差をエクセルで計算すると、11547.00…となる。野球チーム「DPC」の標準偏差は115.47…だった。このように、標準偏差がプロ野球チーム「HIM」の方が大きいのは、数字が大きいことにより、散らばり方も大きく見えてしまうからだ。


そこで、このこのプロ野球チーム「HIM」の変動係数を求める。


11547.00…/60000*100=19.245…


野球チーム「DPC」と同じ数値になる。


もともとプロ野球チーム「HIM」の9人の収入は、野球チーム「DPC」9人の収入を100倍しただけなので、グループの規模を合わせれば、散らばり具合が同じになるのは当然だ。


このように、変動係数を用いれば、まったく数字の桁が違う2つのグループでも、どちらがよりデータが散らばっているかを明らかにすることができる。ミクロの世界もマクロの世界も同じ土俵に立たせることができる点で、変動係数は優れている。


2 変動係数を求めるエクセルの式
探してみたけど、変動係数を一発で出す関数はエクセルにはない。B3のセルからJ3のセルまでに数値を入れ(データが9つの場合)、AVERAGE関数とSTDEVP関数を使って出さなければならない。CV関数なんてあっても良さそうなのになあ。

   =STDEVP(B3:J3)/AVERAGE(B3:J3)*100



cv


3 変動係数を求める数式
標準偏差を平均で割れば計算できる。手順を示しておく。


(1)まず、平均値をAとする。
   A=Σ(X)/N
Xはデータで、Nはデータの個数。


(2)データから平均値を引き、2乗したあと、合計する。
   合計=Σ(X-A)^2


(3)これをN個というデータの個数で割ると分散が出る。
   分散=Σ(X-A)^2/N


(4)さらに分散の正の平方根を求めれば、それが標準偏差だ。標準偏差をSとしよう。
   S=√(Σ(X-A)^2/N)


(5)標準偏差をS平均値Aで割り、100倍する。
変動係数=100S/A


(次回の予告)
そろそろ本格的に僕が気象予報士の勉強を始めるから、次回からしばらくお休み。