今週は出張の多い週で、月曜日以外は外に出ていた。


残念なことに泊まりはなく、日帰りの出張ばかりだった。
火曜日は朝7時出発だったが、水曜日には朝6時台に出発せざるを得なくなり、だんだんと出発時間が早くなるなあ、と思っていた。


木曜日は日帰り出張の後、偉い人たちとの飲み会まであった。金曜日は出張先の会議で、かなり厳しい意見をいくつも頂いたが、なんとか乗り切ることができた。


そして土曜日は、メーデーで集会に行った。その後は飲み会で、また説教をしてしまい、今は二日酔いと自己嫌悪で死にそうな気分でいる。


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土曜日の朝、メーデーに行く1時間30分ほど前に職場に寄ることにしていた。金曜日の夜は遅かったので、職場には寄らず、直帰した。なので決裁をしなければならない書類が机の上に山のようにあるはずだった。


飲み会が予定されていたので、電車で行くことにしていた。土曜日だったので、幾分空いてはいたものの、高校生が多く乗っていた。田舎の電車では、2人掛けのイスを高校生が1人で占領していることはむしろ普通だ。座れない人は立っている。それでもみんな何の疑問も持たず、そんなものか、と思っている。都会の電車の乗り方を知らないんだから仕方がない。


最初はどんなものかと思ったが、今では僕も別に何とも思わない。立って本を読んでいた。高校生達が話している内容が耳に入ってくるが、本当につまらなくて「こんなくだらない話題しかないなんて」となんだかかわいそうに思ったくらいだった。


駅で電車を下りてホームを歩きながら、財布を開けた。ちょうど階段の下にさしかかったところだった。小銭入れの部分のチャックが開いていて、100円玉と10円玉が転げ落ちた。


後ろからは多くの高校生達が歩いてくるし、とてもしゃがんで拾っている余裕がなかったので、そのまま無視して歩いて行こうかと少し迷っていた。俺が渋滞の原因になるより、110円を諦めればいいという価値判断があった。


そしたら、後ろにいた女子高生達が素早くしゃがんでお金を拾って僕に渡してくれた。
「なんて親切なんだ。」
思わぬ展開に「どうもありがとう。」なんてことを心拍数を多少上げながら言った。


女子高生達は「別に普通のことをしただけです」って顔をして、軽く頭を下げた。あまりに自然だった。


それで、僕はすごく驚いてしまった。見ず知らずのドジなおっさんに親切にしてくれるなんて。田舎の女の子は偉いなあ、なんて思ったりした。俺に権限があればノーベル平和賞をあげてもいいくらいだ。


職場に着くと、想像以上の決裁の山だった。やらなければならないメモもたくさん貼られている。なかにはペンキ塗りなんて仕事も入っていた。「ペンキ塗るの?俺が?」誰もいない職場で、思わず声を出してしまった。やれやれと思った。


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金曜日の出張の帰り、バスに3時間ほども乗ることになっていた。行きは会議の資料を読み込んでいたが、帰りはもう必要がない。それで、高知県のA君が薦めてくれた池井戸潤の「ロスジェネの逆襲」(ダイヤモンド社)を本屋で買って、それを読みながらバスに乗った。


半沢直樹が証券会社に出向になったあとの物語だ。


lostgeneration

出向先でも、半沢直樹は本社の銀行と闘わなければならなくなる。先読みとチキンレースの連続で、久し振りにこんなに面白い小説を読んだ。ビジネス上の高度な話しが、そのレベルを下げないまま、エンターテイメントとして成立していることに、この作家の力量を感じた。


A君にはお礼を言いたい。しかしながら、この本を読んだことが土曜日の超くだらない説教の遠因になったことは間違いがない。いい本を読んだけれど、全く俺はなにやってんだよ、と溜息が出てしまう。