朝、細い道を運転した。
除雪した雪が道の左側に積み上がり、雪山のような状態になっている。
その道路の右側には一台の車が駐車してあった。


左側の雪山と右側の駐車のせいで、道幅はかなり狭くなっていたけれど、無理をして通過しようとした。
雪山ならぶつかっても大きな影響がないだろうと、どちらかというと雪山寄りに走った。


雪山と車が接触したが、「雪山を壊してしまえばいいや」と思ってアクセルを踏んだ。


雪山が一度溶けて、固まって、岩のような硬さになっていたとはなあ。
それで、車はかなり凹んだ音を立てた。
車も凹んだが、俺も負けないくらい凹んだ。しばらくの間、車の傷ついた部分を見るのも嫌だった。たぶんこれが心理学でいう「逃避」ってやつだ、と思った。


前の彼女に「実は運転、ヘタでしょ」と言われたことを何度も思い出しては、吐きたいような気分になった。


業者に修理を依頼し、職場まで車を取りに来てもらった。そこで、初めて、自分の車の損傷をまじまじと見た。


凹んだ部分はもちろん交換だが、フェンダーパネルの固定部分も切れている。塗装にも(気にしないので修理しないが)細いヒビが入っている。


雪山に突っ込んだだけで、すごい額の請求が来そうで、ため息が出た。それにしばらくは、電車やバスで通勤しなくてはならない。


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相変わらず、雪についての苦情は多いが、対応を進めている。


公共事業はムダだ、コンクリートから人へと、マスコミ・政府一丸となって進めてきたはずなのに、大雪のような災害が起きると「さっさと除雪をしろ。もっと重機を出せ。危機管理が甘い。」なんて言われる。現実には人も重機も足りない。


今回の大雪で、60時間も眠らずに仕事している作業員も知っている。彼は、「仕事が間に合わなくて遅れているのはわかっている。でも時間が欲しい」と上司の前で言って、涙を落とした。


仕方がないことだってある。でもなかなかそんな風には思ってもらえない。


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今週も雪が降ったらどうしようかと思っていた。天気図をにらみつけていたが、そのせいか低気圧が南に逸れて、雪が降らない状況になってほっとした。


金曜日から大阪で、診療情報管理士のスクーリングに出席することになっていた。僕が行ける範囲で土日を絡めた専門課程のスクーリングは大阪しかないので、仕方がなかったのだ。
でも、もしこの状況で雪が降ったら、俺が大阪に行くことなどできなかっただろう。


木曜日の夕方、1時間休みを取った。そして大阪行きの高速バスに乗った。
仕事の疲れがどっと出て、バスのなかではほとんど寝ていた。


僕の母は、高校を出たあと、大阪の短大に進学した。そして、大阪で有名なデパートに就職が決まっていたのだが、そこを蹴って、田舎の小学校に赴任した。母の父親が母のデパートへの就職を断るために大阪に行ったらしいが、そのストレスは相当なものだったらしい。


母は、ときどきお好み焼きを作ってくれた。大阪にいた頃、よく食べていたそうだ。また、どちらかというと目立つことが好きだった。テレビで大阪のヒョウ柄の服を着た女性を見る度に、母もこういう人達の影響を受けたのかなあ、と思ったりする。


10時前に高速バスは大阪に着いた。長野と違い、雪はどこにもない。バスの停留所から、あちこちを迷いながら、大阪駅に行った。


大阪ではエスカレーターは右側に荷物を持った人が乗り、歩く人のために左側を空けることになっている。東京とは逆だ。知識では知っていたけれど、本当にそうなのだと知って少し驚きを感じた。


泊まったのは天満にあるアパホテルで、フロントの人がすごく丁寧なのに驚いた。商人の町だからなのかなあ?なんて思ったりした。


診療情報管理士のスクーリングは天満にある研修センターで行われた。とても寒かった。初日は朝10時から、夕方5時まで講義があった。


講師の女性が「それはひどいやんって私、言うたんですよ。」などと上沼恵美子みたいな話し方をするので、これが大阪の女性のスタンダードな話し方なのかと少し驚いた。真剣な話なのに、どこか漫才のように聞こえる。


講師の女性が「マサチューセッツ総合病院のカルテの表紙には、このカルテは主治医のためにあるのではなく、病院の宝である、っていうことが書いてあるらしい」というので、ネットで探してみたけれど、見つからなかった。ちなみに、カルテは英語ではmedical chartやmedical recordだ。こっちの方が意味がわかりやすい気がする。


2日目は朝9時30分から午後4時30分までが講義時間だった。午後は統計の授業だった。


統計を苦手にしている人が多く、試験の点数も低いと以前から聞いていたが、まわりを見たら講義中にも関わらず、寝ている人がたくさんいて、確かにみんな数字が苦手なんだなあ、という気がした。逆に僕はこういうみんなが勉強をしないところで点数を稼ごうと思って、真剣に聞いていた。


平均を求めたら、平均との距離を2乗することで分散を求める。そして、その平方根を求めると標準偏差が求められる。それをさらに平均で割れば変動係数まで求められる。ということを1時間くらいかけて教えてくれる。


分散の平方根を求める理由は、「単位も2乗のままになってしまう」から、という説明を聞いたとき、「おお」と僕は思ったけれど、そう思った人は少数派らしく、ほとんど無視されていた。


今回、最も秀逸だと思った講師の冗談は「コインを投げたとき、必ず裏か表になりますよね。もちろん、ピタッと立つことも考えられますが。」というものだった。確かに、コインも立つことがあるし、サイコロだって壁に引っかかって斜めになることもあるよなあって思って、なかなか深い冗談だと思った。ほとんど笑いが取れなくて気の毒な気はしたけれど。


講義は明日も続く。明日は僕が苦手にしているというか、まだ全然、理解ができていないコーディングだ。


明日の授業が終わったら、今後、どのように勉強をしていくか、気象予報士の勉強とどうすりあわせをしていくか、などを考えながら、長野に帰ろうと思う。


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ボイド・モリソンの「THE ARK 失われたノアの方舟 タイラー・ロックの冒険1」(竹書房文庫)の上下巻を読み終わった。


theark1

theark2

ストーリーの内容がシグマ・フォースシリーズそっくりなので、同じ作家が書いているのではないかと最初は思ったほどだった。


秀逸なのはアクションシーンの描写で、映画を観ているのかと思うほどに、状況が目に浮かぶ。そしてこのアクションシーンがふんだんにある。


ただ、謎解きの面白さは今ひとつで、科学知識や歴史的事実を味付けに使っているものの、新たに興味を持つような知識はほとんどなく、その点は残念だった。ノアの方舟については、若干、詳しくなる。聖書に書いてあるとおりの大きさでノアの方舟を造ったら、すぐに崩れて沈没することを知ったのが、わずかな収穫だった。