仕事で山道を12キロメートルほど歩くことになった。今回の山行では、ザックのなかに10キログラム程度の荷物しか入れる予定はなかった。その昔、大学時代には40キログラムの荷物を持って、山登りをしたこともあるのだから、こんな山行は楽勝だ、と登る前は思っていた。


8人のパーティーでリーダーは今年から社会人になったばかりの新人だった。装備表が何もなく、地図も持とうとしなかったので、とりあえず怒った。
「地図とコンパスを持たずに山に登るな。」
「でも、ルートはしっかりついていて、1本道だと聞いています。」
「そうかもしれないけれど、とりあえず2万5000分の1の地図をパソコンから打ち出して、俺と自分の分だけ印刷をしておけ。コンパスも忘れるんじゃないぞ。」と言っておいた。


「誰かが体調を崩すことも考えて、トイレットペーパーも1ロール、会社から持って行け。」と言ったのだが、故意なのか過失なのか、結局、忘れたようだった。コンパスも買わなかったようだった。


登り初めて2キロメートルほどで、大きな分岐に出た。
「一本道じゃなかったのか?」
「そう聞いていたんですが…。」


久し振りに地図とコンパスでルートを確定した。分岐はその後、3カ所にわたってあった。パソコンから打ち出した2万5000分の1の地図はまったく信用できない代物で、地名もほとんど落ちておらず、分岐もまったく載っていなかった。ルートも現実との乖離が大きかった。一応、全体的な方角からルートの確定をしたが、「運次第」という面は多分にあった。
「やっぱり、きちんとした地図を買っておくべきだった。」
肝心な部分を部下頼みにした自分に対して反省をした。今までの山登りで、いったい何を学んでいたのだろう?


このルートは、毎年、会社の誰かが歩くことになっていた。昨年、リーダーを担当した部下は、昼ご飯と雨具をコンビニの袋に入れて、それだけで山に登ったらしい。
「地図はどうしたんだ?」
「必要ないですよ、一本道だし。」


おそらく、彼が登ったときも分岐はあった。ただ、パーティーに同じコースを登った経験者がいて、どちらに行くべきなのか問題にならなかったため、一本道なのだと思いこんだのだと思う。


不幸なことに、今回のパーティーにはこの道を歩いた経験者がいなかった。たまたま運がよく、3つの分岐全てで正解のルートを見つけられたが、パーティー丸ごと遭難、ということも可能性としてはあった。


そして今回の山行では、僕自身が信じられないくらいにバテた。ルートが見つからなくて遭難した場合、最初の犠牲者は俺だと思った。一応、万が一のために最後尾をずっと歩いていたのだが、他のメンバーを見守るというよりも付いていくのがやっとだった。登り道では体中から汗が噴き出した。頭にかぶったキャップ全体が汗で濡れ、ひさしの先から、汗がポタポタと流れ落ちた。全身、汗まみれで、自分がいかに水太りをしているのか自覚せざるを得なかった。


昼にはメンバーに、作ってきたサンドイッチなどをあげたけれど、サンドイッチを渡しに行くのもおっくうだった。体力の限界を感じていた。


山道は落ち葉がクッションのように衝撃を吸収してくれた。だから、膝や腰を痛めるということはなかったが、足の裏は薄い中敷きが原因なのか、痛くて仕方がなかった。


夕方、4時過ぎになんとかゴールにたどり着き、出迎えの人たちと会った。疲れていたけれど、体から余計な水が抜けたせいか、多少心地よかった。


この山行があと3日続けば、俺もかつての体力を取り戻すことができるだろうな、という気がした。それから、でも、3日続くことはないから、やっぱりまた水太りするのだろうな、と思った。


+++


金曜日の夜、台風27号の影響で、雨がかなり降った。
夜10時30分頃に、ある家に呼ばれた。同僚と急行すると、その家では、雨水が敷地内に溜まっていた。ざっと見たところ、水の逃げ道がないようだった。


それで、業者に来てもらって、雨のなか、ポンプで水出しをした。
台風のせいで風が強く、寒くて震えていた。もう少し、きちんと雨対策をすればよかったと後悔をした。
一通りの作業が終わったのは日付をまたいだ12時30分頃だった。


+++


そしてまた、土曜日は台風27号が接近し、朝から職場に呼び出された。危険箇所のパトロールなどをして、夕方4時頃まで仕事をしていた。


+++


ようやく予定の入っていない手つかずの日曜日が来て、今日こそは勉強しようと、朝からコーヒーを作って準備をしていた。


9時頃に電話が来て、朝、災害が起きて、施設に被害が出たと報告を受けた。仕方がなく、また職場に行った。午後1時30分頃まで様々な対応をして、それから家に帰ることができた。


時間に余裕があれば、前の職場で会社祭をしているので行こうかと思っていたが、結局、それもかなわなかった。


もう子供ではないので、勉強ができないのを何かのせいにするつもりは全くない。むしろ、僕の場合は、何かを(例えば映画や読書を)犠牲にしてその分勉強するというのは無理で、「何もかもやる。当然、勉強もする」というスタンスが正解のように思っている。


だから、文句は言わない。ただ、今週も思ったより勉強できなかった、というだけの話しだ。この埋め合わせは必ず、将来の僕がしてくれると思う。


+++


ジェフリー・アーチャーの「時のみぞ知る(下):クリフトン年代記 第1部 」(新潮文庫)を読み終わった。


My Kiasu Life in JAPAN-onlytimewilltell

解説を読んだら、この第2次世界大戦直前の年代から、2020年までを描こうとシェフリー・アーチャーは考えているらしい。


それは、とてつもなく長い小説になるなあ、と思いながらも、読んじゃうんだろうなあ、と諦めに近い気持ちで思った。


+++


NHKのドキュメント番組「人は走るために生まれた ~メキシコ山岳民族・驚異の持久力~」を見た。


My Kiasu Life in JAPAN-born to run

この番組は、クリストファー・マクドーガルの著書「BORN TO RUN」からその着想を得ている。


http://www.ted.com/talks/view/lang/ja//id/1067
▲クリストファー・マクドーガル自身の講義はこちら。この講義が俺はとても気に入った。


メキシコ奥地にララムリという民族が、とても足が速く、おまけに疲れ知らずであるということから、この物語は始まる。
その食生活は豆とトウモロコシだけ。


厚生労働省はバランスよく種類多く食べないと病気になると脅すが、ララムリはこの食生活にも関わらず健康で、50歳台でも80キロメートルを超えるウルトラマラソンに参加する。


ランニングシューズも履かない人が多い。ほとんどの人は、古タイヤを切って作ったワラジのようなものを履いて走る。ランニングシューズよりも裸足の方がいいらしい。


クリストファー・マクドーガル自身の講義によれば、彼らは、スペイン人が侵入してきたとき、「逃げた」のだという。そして生き延びたのだ。


生き延びるため、速く走る訓練をすると同時に、これは僕が勝手に思ったのだが、襲われないように「裕福な生活を求めない」ことにしたのだと思う。誰も、トウモロコシと豆しか持っていない人を、手間暇かけて襲おうとは思わないだろう。


NHKの番組では、「ここはすべてが正常だ」というララムリの言葉が印象的に使われている。


「200万年前に人類が誕生し、2万年前の石器時代まで、人はどうやって食料を得てきたのか?」という疑問に、クリストファー・マクドーガルはこう言う。「獲物が死ぬまで、集団で延々と追いかけたのだ」と。「だから、人間は、他の動物と違って発汗機能が優れていて、いつまでも走れる体を持っているのだ」と。


こういうSFがかった話しは「たまんねえな」と僕は思う。それで、すごく疲れていたのだけど、ついつい興奮してしまい、走りに行った。1キロメートルくらいで、車の多さと人の目の多さにうんざりしてやめたけど。


「人の体は走るようにできているんだ」という理屈を僕はとても気に入った。今まで、走ることが大嫌いだったけれど、少しは好きになれるような気がしてきた。