先日、大規模避難訓練の見学や現場検証などで若い部下と半日の間、出張した。
避難訓練の間に、何度も「今、何時ですか?」と聞いてくるので、「腕時計を持ってないのか?」と聞いてみた。
「あんまりしないんですよ。」
「高校に入学したときとか、親や親戚が腕時計を買ってくれなかったのか?」
「そういう文化はなかったんですよね。」
確かに小学生が携帯電話を持つ時代に「高校入学時に腕時計をプレゼント」という時代ではないのかもな、とは思う。
「何にも買ってもらわなかったのか?入学祝いで。」
「そうですね。でも、強いていえば、ゴムを買ってもらいました。」
「ゴム?なんで?」
「女の子と旅行に行くと言ったら、たくさんくれました。」
「…。そうなのか。」
なんだか、とてもうらやましい気がした。腕時計よりもずっといい。こうして年寄りはひがみっぽくなるのだと思った。
+++
週末は名古屋に行った。以前、名古屋で働いていたことがあって、その同窓会だった。
全国から、当時の仲間達が集まってくる。
その当時、人当たりのいい、ちょっとイケメンの先輩がいて、彼は「専門員」と呼ばれていた。ずっと、そういう肩書きなのだと思っていたのだが、そうではなくて、女性の扱いが慣れているということで「女性専門員」というのが語源なのだと初めて知った。
9.11のアメリカ同時多発テロの日は、ちょうど僕がオーストラリアの友だちの家から日本に帰る日だった。
「アメリカの上空を飛べなくなりました。だから、グアム上空を飛べません」という機内放送が流れて、僕の乗った飛行機は、いったんフィリピンに着陸して、それから再び成田空港を目指した。
その長いフライトの最中に、名古屋で働いていた頃、一緒によく麻雀を打っていた先輩とばったりと会った。
「こんな飛行機のなかで会うなんて。」
そのときはとても驚いた。そして、その先輩もこの同窓会に来ていた。久し振りに会った先輩は、相変わらず話しが面白く、自分は1回離婚して、再婚をしていないのに、僕に何度も「1度は結婚した方がいい」と言うのだった。「でも1度すれば、2度はしなくていい」と言う。
「別れるときはエネルギーがいるんだ」とその先輩は言う。「離婚届が郵送で送られてきたんだ。でも面倒だろ。だから放っておいたら、銀行の口座に80万円が振り込まれていた。これは早く印鑑を押せっていう意味なのかなあ、と思って急いで押して送り返した」らしい。
「もうちょっと放っておけば、また振り込みが。」
「ははは。どうかなあ。」
そういう話しをいっぱいしてくれる。それでいて「結婚しろ」と言う。どういうことなのかよくわからない。
昔、いっしょに働いていた女の子達にも会った。もうみんな子供がいて、もう「女の子」ではないのだが、2次会の薄暗い会場で、少し酔っぱらってから見たときには、みんなきれいだなあ、と思った。こんなにきれいな人たちと仕事をしていたのか、と。
あの頃、結婚なんて他人事で、それから相手なんかいくらでも見つかるような気がしていた。それから後の人生が示すように、それは大間違いだった。
「一人暮らしだと、掃除とか大変でしょ?」
「大変だよ。今は一軒家だし、そこに一人で住んでいるからどんどん汚れちゃって。掃除のためだけに3人くらいと結婚したい。」と言ったら「そんなこと言っているから、結婚できない」のだと言われた。俺もそう思う。
+++
2次会のあと、ホテルまで行く途中で「あと少しなら飲んでもいいな」と思っていた(この時点で大間違いではある)。
それで、客引きのお兄さんに連れられて、ガールズバーに行った。
入った瞬間、失敗したなあ、と思った。
メイド服やAKBが着ているようなユニフォームを着た女の子がカウンターのなかに立っていて、「お帰りなさい、ご主人様」と声をかけてくれる。
今まで、そういうところがあると知っていたけれど、本当にそういうことを言うんだ、と思った。
「私、オタクで、暗いアニメとかが好きで、ものすごく詳しいんです。」という女の子と、ジブリの映画ですらよくわからない僕が、話しをかみ合わせることは至難の業だ。中学生の頃ならともかく、今ではアニメそのものに興味がない。基本的にずっと「そうなんだ。ふーん。うんうん。」と言っていた。
その女の子が商業高校で簿記と情報処理の勉強をしていた、という辺りからなんとか話しの切り口が見つかって、それからはなんとか話しを回すことができた。
今回、僕がこのガールズバーで学んだことは、彼女たちのユニフォームは、バイトの女の子達が着回している、ということと、それが嫌な子は自前でメイド服を買うのだが、メイド服は3000円程度で買える、ということだった。俺は一生着ないと思うので、何の役に立つ情報なのかはわからないけれど。
+++
泊まりはアパホテル名古屋栄だった。よくアパホテルに泊まるが、この名古屋栄は初めてだった。
ホテルの部屋にはいると、シングルなのにベッドが大きく、とてもきれいだった。引き出しにバラエティ・アートワークスの「アパホテル」 (まんがで学ぶ成功企業の仕事術)(朝日新聞出版)というマンガが置いてあったので、最後まで読んだ。
時代を振り返ると、バブルの崩壊は当たり前だが、あの時代にその崩壊を読み切っていた人はそうはいないと思う。歴史は後から見ると簡単で当たり前だが、未来はなかなか読めるものではない。
だから、このアパホテルを経営している夫婦が、バブル崩壊を読み切って(あるいはたまたま運が良かっただけかもしれないが)、高騰していた時点で所有していた不動産を売り切って現金化していたことは、経営者としてとても優れていたと思う。
僕自身はアパホテルのCMがいいと思ったことは1度もないが、それは「認知度を上げるため」のアパホテルの戦略だったらしい。嫌われるのも、強い印象を残すひとつの手段なのだと、アパホテルは考えたのだという。
読んでいて、ふーんと思ったし、実際にアパホテル名古屋栄が、随分ときれいだったので、アパホテルもいいなあ、なんて思った。
名古屋からは、翌日の日曜日の午前中に帰った。二日酔いはほとんどなかった。
+++
マーク・ローレンス監督のラブコメディ「ラブソングができるまで」を見た。
http://www.youtube.com/watch?v=CZE8Y4ckd34
僕はヒュー・グラントのようになりたいとよく思う。もちろん、彼のような二枚目になるのは無理だけど、彼が演じる、才能あふれる優しさとユーモアを兼ね備えた男というのを目指したい。
この映画の中でも、ヒュー・グラントはどんなときもユーモアを忘れない。映画を見ながら、何度もこういう感じのいい人になりたいと思った。そして、彼がこの映画の中で何度もするセクシーダンスを覚えようかと思ったが、挫折するのに30秒もかからなかった。意外と難しい。
この映画で、人生の何かを学ぶことはあまりないけれど、見ていて少し、幸せな気分にはなれるかもしれない。
もう10月まであとわずか。これからは気象予報士の勉強もしっかりと頑張りたい。

