仕事から帰ってきた後、夕食を食べようと思った。電子レンジに食材を入れて、スイッチを入れる。ハチの羽音のようなものが聞こえるので、電子レンジが壊れたのかと思った。
ふと上を見上げたら、台所のライトのまわりを大きなハチが飛んでいた。それもかなり大きい。やっかいなことになっちまったなあ、と思った。
とりあえず、何かで叩き落とそうかと思った。でも近くにうちわのようなものもなく、それにヘタに刺激をすると怒って攻撃的になるから、たたき落とすのはやめておくことにした。
数日前に、職場の検診で、僕はハチの毒でアナフィラキシー・ショックを起こすことはないと知っていたので、刺されても命に別状がないことはわかっていた。それでもわざわざ痛い思いをすることもない。殺虫剤で殺すことも考えたけれど、台所だし、不適切だと思ってその考えは却下した。
こういうときは、どうしたらよかったんだっけ?
こういうときは、掃除機で吸ってしまえばいい。なんだ、俺、答え知ってるじゃん、と思った。それで、掃除機を持ってきて、ヘッドの部分を外してスイッチをいれた。
若干、遠くからハチに迫る。ハチは強風を感じると、その場にしがみつく性質があるらしく、掃除機の筒がゆっくりと迫ってきても逃げようとしない。
掃除機の筒の中にハチが飲み込まれ、手元のパイプのなかを通過する際、ゴツンという重い衝撃がある。これで、ハチ問題は基本的に終了だ。
それにしても、どこからハチがやってきたのか?洗濯物の山のなかに隠れていたのだろうか?それとも僕といっしょに帰宅したのか?謎は永遠にわからないが、考えていても楽しい話題ではない。やれやれと思って食事をした。
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週末には、野球の試合があって諏訪にまで行った。僕は「応援だけ」と言っていたのに、いつの間にか2軍の一員になっていて、ユニフォームも支給されていた。考えてみれば、そもそも僕は野球部ですらない。
僕はソフトボールは好きだが、野球はそれほど得意ではない。それでも、打つ方はまだできる。問題は守りだ。
幸いなことにメンバーはふんだんにいて、僕はほとんどすることがなかった。若者が多いので、僕は偉そうにベンチに座って声を出していればいい。
2試合に出て、バッターボックスに立ったのは1試合に1回ずつの2回だけだった。守備は1回、セカンドを守っただけで、ボールは1回も飛んでこなかった。
バッティングは2打数1安打で2打点だった。
最後の試合の打席は、最終回の2アウト、満塁で回ってきた。
「いきなりこんな打席なのか」と一瞬、途方に暮れたが、それでも打つ気は満々だった。
見送ればボールになる高めの球を、力一杯引っ張った。
ソフトボールでは考えられないほど、ボールは上空に上がり、レフトフライになるかもしれない、と思ったけれど、レフトの前に落ちてヒットになった。
次の打順の人が真芯に当てたボールがショートライナーになって、僕らのチームは2敗し、最下位の4位だった。一軍のチームはもちろん、優勝した。一軍の優勝だけだと話しは簡単だが、自軍が4位ということもあるので、喜び方も微妙だったし、正直なところ、悔しさもあって、うーむ、という感じだった。
そんなわけで、土曜日の昼間に日焼け止めも塗らず半袖姿でグランドにいたものだから、両腕が真っ赤に焼けてしまい、痛くてたまらない。
こういうときは、どうしたらいいんだっけ?とりあえず、冷やして、あとはグリセリンかなにかを塗って、耐えるしかない。
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日曜日は夕方から地元の納涼祭があった。
僕は、今日はさすがに長袖のシャツを着ていたが、それでも、布地を透過した紫外線を感じて、日に焼けた両腕が痛くてたまらなかった。
基本的には、僕はずっと焼き鳥を焼いていた。ときどき、ビールを注がれるので飲みながら、あとは延々と焼き鳥を焼いていた。
いろんな人と話をしたが、僕が困ったのは、向こうは僕のことをよく知っているのに、僕が何も知らないことだった。僕もブラピと同じ、失顔症なのかもしれないと思った。
納涼祭は、1次会が終わって、2次会にみんな行ったが、僕は行かなかった。明日は朝早くから、松本に行かなくてはならないからだ。
片付けの最中に、指先を火傷したが、もう腕全体が日焼けで痛いので、指先の火傷などほとんど気にならない。
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クリストファー・ノーラン監督の「メメント」という映画をDVDで観た。
http://www.youtube.com/watch?v=0vS0E9bBSL0
主人公は、妻をレイプされて殺害された後、自分も暴行を受けて、記憶が短期間でなくなるようになった男。記憶を次の自分に繋げるために、彼は情報を自分の体に入れ墨の形で入れ、ポラロイドカメラで写真を撮り、メモを残しておく。
彼の妻を奪った男達に復讐を誓い、彼は頼りない記憶とも闘いながら、真実に迫ろうとする。でも、その真実は、本当に真実なのだろうか?
記憶が頼りないことから、モーテルでは家主が2部屋を予約させたり、多くの人が、彼のメモに真実ではないことを残そうとする。そして、記憶を失った彼は、そのメモを唯一の頼りにしながら、状況を分析し、行動をする。
難解な映画で、見終わるとぐったりするが、この映画は「見ておかなくてはならない映画」なので、見終わって少しほっとした。
それから僕も、本当にもっとメモを取っておかないと、人の顔をみんな忘れちゃうから気をつけようと思った。
