引き継ぎのシーズンだ。
システムエンジニアから引き継いだ仕事があり、ファイルのある場所も確認していた。
「そういえば、マクロを展開してくださいって言っていたよな。」
大きなエクセルの表の前で、どうしたらマクロを走らせることができるのかわからず、途方に暮れる。


目の前に座っている部下の女性はそれほどエクセルが得意そうにも思えない。でも、人は見かけによらないってこともあるだろうからと、声をかけてみた。
「あのさあ、マクロの走らせ方って知ってる?」
「マグロですか?走らせるんですか?」
「マグロじゃないよ。マグロなら「泳がせ方」だろう。ひょっとして、わざと聞き間違えてる?」
本気で聞き間違えていたらしく、そして「マクロ」自体を知らないと言うことだった。


ネットで調べて、なんとか動かすことができた。
システムエンジニアは忙しいらしく、最後まで引継書を作っていかなかった。先が思いやられる。


日曜日も朝の8時30分から、夜までずっと仕事をしていた。でも、ようやく、先が見えてきた。明日も朝から頑張りたい。


6か月ほど一緒に仕事をしていた女の子が、3月いっぱいで仕事を辞めることになった。結婚するのだという。
「5月に結婚式をするんです。そのとき、出席していただきたいのですが。」
仕事では毎日顔を合わせてはいたけれど、特に親しかったわけでもないし、結婚式に呼ばれるなんて正直、どう答えたらいいかわからなかった。
「うーん。」とうなっていたら「それで、もしよかったら、挨拶もしていただきたいのですが。」なんて言われた。
どうして、俺なのかさっぱりわからない。そしてその子のことを僕はほとんど知らない。
「ダメですか?」
「べつにダメじゃないけど、本当に俺でいいの?」
大切な日の挨拶を、俺なんかがしていいのか不安に思ったが、昔からなんとなくそういうときに挨拶をさせられてきたような気がする。やるとなったら、そのときの俺がなんとかするだろう。「まあ、いいのか」と思った。


以前の職場の同僚からメールが来た。「今の仕事を3月いっぱいで辞める」のだという。
安定した職場で、またその組織の将来を託されたエリートだったからその決断には驚いたけれど、彼が以前メールで書いていたように「人生の限られた時間を他人に切り売りする」ような生活が嫌になったのかもしれなかった。
その気持ちはすごくよくわかったけれど、独立する能力が足りず、またそれを獲得する努力も足りない今の僕には、できない話しでもあった。


結局の所、使い勝手のいい優秀な人員は職場を去り、能力のない者だけが残るということになる。残らざるを得ない自分には、うらやましい話しだった。


以前、彼が中心になって本を作成する際に手伝ったことがあった。
その頃はかなり仕事が忙しく、正月休みの間に頼まれた統計作業をしていた記憶がある。そして本ができあがってきたとき、とても嬉しかったのを覚えている。


その彼に電話をすると「いずれにしても本を書いておくというのは、いい選択ですよ。」と言う。確かにその通りだと思うし、専門的な本であれば、本を出すというのもそんなに無理な話でもなくなったんだなあ、という気がした。


同じく昔の職場の同僚で、福島県のTどんは結婚をした。
福島県にまたひとつ明るい話題ができたことで、いいことだと思う。
ただちゃんと結婚生活ができているのか、他人事ながら不安だ。
夜になったら何をするべきなのか、ちゃんとわかっているのだろうか?
毎晩「もう3年だけやろうよ」と桃太郎電鉄をベッドルームに持ち込んでいるような気がする。


Tどんの結婚式はまだだというから、こちらには何としても行きたい。そして新郎が注がれたビールをこっそり捨てる、足下のバケツを隠したりしたい。
口では「職場の飲み会みたいにされるのは嫌だ」と言っているけれど、きっとそうして欲しいのだと思う。がんばりたい。


ブラッド・ピットの映画「マネー・ボール」を見た。



My Kiasu Life in JAPAN-moneyball
野球場は小さな頃から連れて行ってもらっていたし、大人になってからも何度も行ったけれど、僕にとってはどこか特別なところで、あまり「職場」というイメージのあるところではない。


未だに、東京ドームの大きさを感覚として把握していないので、マスコミが「東京ドーム5杯分のビール」なんて言っているのを聞いても、どのくらいの量なのかよくわからない。そして東京ドームを単位に使う意味も、僕にはよくわからない。


「マネー・ボール」はそんな僕にとっては未知の、野球場で働く男たちの物語だ。
そしてここで描かれているのは「メジャー・リーグ」。
メジャー・リーグにデータとコンピュータを持ち込んで、そして勝とうとした弱小球団の物語だ。


My Kiasu Life in JAPAN-moneyball2

「アウトになるから、バントと盗塁は禁止。」
これを「メジャー・リーグ」でやったことがすごい。


実は、以前から僕は高校野球については、こういう作戦が使えるのではないかと思っていた。
徹底的に偵察をして、遅い球の打てない強打者には、ストライクはチェンジアップ以外は投げない、カーブの打てない打者には、カーブ以外の球をストライクゾーンに投げ込まず、真の強打者にはそもそもストライクゾーンにボールを投げない。
ノーコンのピッチャーの場合には、追い込まれるまでは一切スイングせずに、フォアボールだけで満塁にし、置きに来た球を力一杯打つ。


データ野球には、思い切りが必要で、その決断ができない奴はデータ野球なんかする意味がないと、常々思っていた。この映画は、そんな僕の思いを受け止めてくれるような映画だった。
ブラピの演技も素晴らしく、見終わってから、久しぶりにいい映画を見たなあ、という気がした。


司馬遼太郎の「坂の上の雲 三」(文春文庫)も読み終わった。


My Kiasu Life in JAPAN-坂の上の雲三

日露戦争が始まり、海でもそして陸でも戦闘が始まる。
この小説を読み始めてから、明治時代の政府高官が当たり前のように英語やフランス語、ロシア語などを使って話すのに驚きを感じている。
勉強の機会も設備も整っていたはずがないのに、意志の力というのはすごいなと思う。


そしてまた、この小説のなかで、そういう高い知識と根性を持った軍人が亡くなるたびに、深い喪失感も感じる。
いずれにしてもいい小説で、これが実話であること、それからまだたっぷりと続きがあることが嬉しい。