水曜日と木曜日の夜は2日続けて忘年会だった。


水曜日の夜は、代行のタクシーがなかなかつかまらず、駐車場で30分くらい待った。
よっぽど他の店に行って飲もうかと思ったけれど、めんどくさくなって車のなかで音楽を聴いていた。


翌朝は飲んだ翌日だとは思えないほど、体が楽だった。
1次会で帰ればこんなに二日酔いで苦しまずに済むのかと、今更ながら大発見のように思った。


もっとも後から冷静になって考えれば、随分と食べたし、ビールもワインも呆れるくらい飲んでいた。
1人だけなのに「よっぽど他の店に行って飲もうか」と思うあたりがもう完全に酔っぱらっている。


木曜日の夜も忘年会で、この日もかなり飲んだ。ビールをメインにして、途中から焼酎も飲んでいた。
料理がうまくて、すごく食べた。
もう随分といろんな目に遭っているので、酔ったときの自分の行動については、自覚がある。
僕は酔うと、まず陽気になって、食べる量に歯止めが効かなくなる。次に金銭感覚がなくなり、代行で帰れるギリギリの金額まで飲む。そしてそれ以上飲んだときには道徳心を失う。


1次会からバクバク食っていたから、その程度には酔っていたのだと思う。上司に誘われて、5人の同僚と一緒に2次会へ。
そしてそのあと、また1人でフラフラと飲みに行きそうになり、車を駐めた駐車場の前を通りかかったら、そこに代行のタクシーが止まっていたので、そのまま家に帰った。


「こんな忘年会のピークの日に代行がつかまるなんて」驚いて、そう代行の運転手に話すと「明日、休日ですから。飲む人はこれからまだ飲みますよ」ということだった。「代行のピークはもっと後の時間です。」
今まで代行がつかまらなかった理由がわかったような気がした。


家に着いてから、焼きそばと焼きうどんを作って食べた。
この異常な食欲から、その程度には酔っているんだと自覚していた。


それでも翌日の金曜日は楽だった。
2次会で帰れば、こんなに二日酔いで苦しまずに済むのかと、今更ながら大発見のように思った。


金曜日の午後には、ゆっくりと本を読みながら風呂に入った。
西村賢太の「小銭をかぞえる」(新潮文庫)という本だった。


My Kiasu Life in JAPAN-小銭をかぞえる

こんな本格的に徹底したダメ男にも尽くしてくれる女がいるのになあ、と読みながら溜息が出た。こいつよりは俺はましだと思いながらも、現実にはこいつよりも俺の状況は劣っているなあ、と思ったら心底情けなくなってきた。


それで特に用事はなかったけれど、実家に帰ることにした。
考えてみたら、明日はクリスマスイブだった。
クリスマスイブは3連休だからと計画を立てていた自分がバカみたいだった。
本を読み終わって、ゴミ箱に投げ捨てながら「バカみたい」の「みたい」は余計だな、と思ったりした。


2時間ほどかけて帰った実家は寒かった。湯たんぽと電気敷布で布団を温めて寝た。
寒さのせいか何もする気が湧かなかった。
ゴミが出るからと料理もせず、腹を空かせたまま、ヒストリーチャンネルを見ながら寝た。


翌朝の土曜日は、いろんな人が集金に来たり、不在の間の郵便物を受け取ったり、なかなか忙しかった。
それでも3時頃には再び実家を出て、2時間ほど運転をして、宿舎に戻ってきた。


実家からの帰り道、運転しながら「足が痛いなあ」と思っていた。
ときどき、アクセルから足を離す。
寝ながら湯たんぽをぶつけたのだろうか?なんて心配をしていた。
でも大したことはないような気がしていた。


長野についてから、風呂にまたゆっくりと入った。
それから日本酒を少しだけ飲んで、もうこんなつまらないクリスマス・イブはさっさと寝てしまおうと思って、ベッドに入った。


少し寝たあと、激痛で目が覚めた。
「くそう、やられた。」と思った。
この痛みは知っている。通風の発作だ。
右足の足の裏全体が痛い。
前回の発作は8年くらい前だっただろうか?そのときは、寝たままかかとを骨折したんじゃないかと思った。
今回は経験があるので、対処ができる。でも、痛い。
泣くほど、眠れなくなるほどに痛い。


尿酸値が高めなのは知っていたけれど、そんなに指摘もされなくなって、薬も全く飲んでいなかった。
女の子に振られてから、髪の毛もえらく抜けたし、思ったよりも体にショックが来てるんだなあなんて思っていたけれど、まさか失恋がこんなに痛いものだとは。まじで泣くほど痛い。


「うう。痛いよう。」
痛みのあまり踊り出したくなるほどだが、現実には右足を地面につけることさえできない。


応急処置の基本はRICE処置だ。
R(REST(動かさない))、I(ICING(冷やす))、C(COMPRESSION(しっかりと縛る))、E(ELEVATION(心臓より高く上げる))。


右足を氷水のように冷たいシャワーで濡らす。痛いんだか冷たいんだかわからなくなってくる。
湿布を巻く。それから歯医者で歯が痛いときに飲めと言われて使わなかったロキソニンがあったのを思い出して、それを飲む。


なかなか眠れないので、テレビで映画を2本見た。
1つは「ロサンゼルス決戦」というSFアクションだった。


My Kiasu Life in JAPAN-battle LA

今度のアメリカが迎え撃つ敵は強い。敵の攻撃を受け、主人公の仲間の兵が負傷するたびに「俺も痛いけど頑張る」なんて思った。


My Kiasu Life in JAPAN-battle LA1

冒頭、敵の宇宙人たちは東京湾から攻撃を開始することになっているのだが、ロサンゼルスと違って、東京には武器らしい武器もないし、あっという間に占領されちゃったのか、と思った。


My Kiasu Life in JAPAN-battle LA2

開戦から勝利までのドラマを2時間でまとめる脚本家の力量には、単純にすごいよなって思ったし、痛風で足が痛いときに見るには共感ができていい映画だったけれど、そんなに映画として感心するような映画ではなかった。


もう1本見た映画は「セックスと嘘とビデオテープ」という映画で、この映画は見ようと思いながら何年もなかなか手が伸びなかった映画だった。
評判だけはすごくいい映画だったけれど、疲れそうなのでやめていたのだ。


My Kiasu Life in JAPAN-sex,lies,videotape

見て最初に思ったのは、俺はこういう脚本は絶対に書けない、ということだった。
問題を抱えている夫婦と、夫の不倫相手(妻の妹)。そしてそれを客観的な立場で見ている夫の旧友。
でも客観的に、人畜無害な顔をして、覚めた目で見ている夫の旧友も、自分自身では気づかない問題を抱えている。


My Kiasu Life in JAPAN-sex,lies,videotape1

この映画を見ながら、テレビでコメンテーターとして偉そうに話している人たちのことを思った。「嘘をついている」のは、誰なのか。問題を抱えているのはいつも他人で、人を批判している自分には問題がないのか。そんな問題意識を、この映画から僕は感じた。
問題を撮る側も問題を抱えているのではないかという視点が、そして、それを本人は自覚していないという視点が、僕には新鮮だった。


My Kiasu Life in JAPAN-sex,lies,videotape2

でもこの映画は人には薦めない。僕が今まで思っていたとおり、疲れる映画だからだ。


足の痛みは、日曜日の朝、起きたら軽くなっていた。もちろん、足を地面につければ痛いが、寝たままなのに痛い、なんてことはなくなっていた。


どうしても郵便局に行かなくてはならず、そのときは痛みを無視して車を運転して行った。でも、戻ってきたときには、足が再び痛くなっていて靴が脱げず、しばらく玄関口でうなっていた。やはり何があっても応急処置中に患部を動かしてはいけないのだった。


ぐったりとした気分でテレビを見て、それから痛み止めを飲んで寝た。
窓の外は雪が降り始めていた。多くの人には素敵なホワイトクリスマスだ。
明日は朝から職場では雪かきになるのに、俺は歩けない。
困ったなあと降り積もる雪を見ながら思った。