水曜日に高校時代の友達と飲んだ。
昔は銀行マンだったけれど、今は独立して土地家屋調査士をしている。


高校時代、彼はずっとサザンのようなバンドを組みたいと言っていて、大学の頃はデモ・テープをレコード会社(今はCD会社とか音源会社とか言うのかな?)に送っていた。


東京での学生時代には、彼のライブも何度か聴きに行ったことがある。
オリジナルはあまり演奏しなかったけれど、いい声をしていてギターもうまかった。


「もう人生をリセットして、生き方を変えろってことだよな。」


僕は2月に母を亡くしたが、彼も同じ年の1月に母親を亡くしていた。
それは彼にとってかなりショックだったようだ。


先日の同窓会でもステージでギターを弾いていたが、あまり聞いている人がいなくて、それも少し彼にとってショックだったらしい。


「でもさあ、夢とかあるだろ?」
「俺に?」


彼にはあまり夢と呼べるようなものはないようだった。
社会的にもそれなりの地位を得て、生活も安定しているし、家庭もある。
既に成功していると言えば、確かにそうなのだと思う。


高校時代、ラーメン屋で楽しそうに夢を語っていた姿が、僕にはすごくまぶしかった。
そんな輝きを彼に求めるのは、もう無理なのだろうか。
社会的な成功というのは、勝手な話しだが、僕はそれほど魅力を感じていない。


「つまらない男になったと思った?」
そう言われて、言葉に詰まった。


俺としては「いつまでも夢を追い求めて欲しい」ということを話した。
話しながら、俺は随分とすっとこどっこいなことを頼んでいるのかな?という気がした。
夢を持つのは、もしかしたら若者だけの特権なのかも知れなかった。


「おまえはどうなんだ?」
「俺はまだサラリーマンだから、独立できるだけの資格を得るのが夢だし、それに、まだ脚本だって書きたいと思っているよ。」
「じゃあ、今、脚本を書きたいと思っているのはどんな話しなんだ?」


彼にその内容を話した。
くだらないと思ったかも知れないし、それなりに面白いと思ったのかも知れない。
「おまえみたいな発想していれば、確かに思いつくよな。」というようなことを話していた。


その日は結局、夕方5時30分から、朝の1時30分頃まで2人だけでずっと飲んでいた。
翌日は、最後の夏休みとして休みを取っていたのだが、ひどい2日酔いで午後まで具合が悪かった。


週末、シナリオのプロットを作ろうと思って、目標となるべきシナリオ募集を探してみた。
テレビ朝日がシナリオの募集をしていたが、締め切りは11月30日!。
今の状態からはとても無理のような気がしたが、求められる原稿量が400字原稿用紙で50~60枚だというので手が届きそうな気がしてきた。
それなら、まだ間に合うかも知れない。


それで、おおよその頭の中で作ったプロットを元に、書き始めた。大体30枚分くらいは書くことができた。
週末はあと3回。続きを書いて、全体をまとめて、作り直して。


何とかして間に合わせたい。



***おまけ***


カリフォルニアのクリスのフェイスブックに貼ってあった写真。


My Kiasu Life in JAPAN-G20

こんな解説文が載っている。
【解説】
トロントでのG20で、こんな文化の差に気づいた。
カナダ人「自分のことに夢中で、現実に目を向けない。」
アメリカ人「ビジネスライクで邪魔されることを嫌う。」
フランス人とイタリア人「見ろよ、あのケツ!」


うーん。なるほど。



高校の頃書いていた小説「ジーパンの青い夏」の一部


 夏休みが終わった。自転車に油をさして高校に久しぶりに出かけていくとお利口なやつらが、げた箱に靴を入れながら話しをしていた。
「でる単どこまでいった?」
「一応、一とおりはやったよ。」
 俺はゲッソリしていっそこのまま帰ろうか、と思いながらげた箱の前で立っていた。労働階級の英雄になるのはたいへんなことだよ。遠くの空に僕はぼんやりとつぶやいた。
 勉強がしたくなくて、勉強から逃げていることは自分が一番知っていた。本ばかり読んでいることも、一日中眠ってばかりいることも、みんな自分に対する口実なんだ、勉強しないことのさあ。僕は自分に言った。
「卑怯だよ、おまえは。」
「ああ、僕は卑怯だ。でもそれがなんだって言うんだい?」
 校内試験は2日後だった。僕はウイスキーを飲んだり本を大量に読んだりして少しも勉強をしなかった。口実づくりもたいへんだあ、僕はいつも自分に言った。俺の勝手だろ、僕は答えた。
 作文は明と7月頃から交換して書いていた。
「最近、だんだん芸術性が失われてきた。」
 明はある日信じられないほど真面目な顔で、偉そうに俺に言った。「俺のは初めっから芸術性なんてないんだよ」僕はそう思いながら少し笑って「うーん、まったくなあ」とうなってみせた。校内試験までの2日間はあっという間に過ぎていった。


 屈辱と馬鹿の回し蹴り的な校内試験の第1日目は終わった。僕にはもう翌日の試験を受ける気力が全くなかった。
「だめだあ、だめだあ。」と言いながら学校の前の図書館で「ピーターラビット」の絵本を見ていると、高校生がそんな絵本を読んでいるのが可笑しいのか小学生の女の子が2人図書館の窓の外側から僕を見て、クスクス笑いあっていた。そして僕がそれに気づいて少し笑いながら顔を上げると、あわてて笑いながら走り去っていった。たぶん水泳で焼けた肌と白黒のはっきりした目がなんだかとても印象的で、いいなあ、いいなあと心の中で2度ほどつぶやいた。「ピーターラビット」全集はどうも1日では全て読み切れそうになかった。そして体が疲れているのかいつもよりずっと読みすすめるスピードが落ちていた。 4時過ぎにラーメンを食べに行こう、と約束をしていた明と宏司くんが図書館まで呼びに来た。
「難しかった。」
 明は精も根も尽き果てたという感じで言った。
「ああ、もうなんだっていいやあ」
 僕は体中の力が抜けているのを感じながら、心の中でつぶやいていた。
「50円コーヒー」と言って、中学校の頃から鈴木の家に行った帰りには必ず飲んでいた50円でカップ一杯飲める自動販売機は故障していたので、僕たちは直接ラーメン屋に入っていった。そしていつものようにテーブル席に座ると「大盛り3つ」と水を置きにきたおばさんに言った。その日は明のおごりだった。
 ラーメンが来るまで、僕たちは将来の希望というか願望というか夢を語った。宏司くんはサザンオールスターズのようなバンドを組みたい、と言い、明は、紅白歌合戦に出たい、と言った。僕は「だめだめ、君には無理だよ」とかなり正しい意見を述べたあと「俺はノーベル平和賞を取るのだ」と笑いながら言った。でも、そう言いながらも心の中では、夢を持ってそれに少しでも近づこうとしている明や宏司くんにどうも負けているような気が絶えずしているのだった。
「うーん、いかん、いかん」僕はラーメンにこしょうを振りかけながら思っていた。小さい頃は身の回りにたくさんやるべき事があったのに、俺はもう身近な目標が何にもないもんな。小学2年のときに水泳で51メートル泳いで2位と1メートル差で勝ったこと、3年のときにみんなの前で落語をやって無茶苦茶に受けたこと、あれが僕の限界だったのかもしれないなあ。もう今では勉強にも全然興味ないし…。
 ラーメンを食べながら、明や宏司くんになんとなく「勉強しなくちゃだめだね」と言うと、なんだか目に決意のようなものを浮かべながら2人ともうなずくので、とてもそんな気持ちになれない僕は取り残されたような、なんだか寂しい気がした。
 ラーメン屋を出て2人は僕の家に来た。明に借りていた「友よ、静かにねむれ」といううハードボイルドの本を返したり、マーク・ゴールデンバーグのテープを聞いたりしているうちに暗くなってきたので、明日テストだから、と言って2人は帰って行った。
 道の端で赤いブレーキランプの光が見えなくなって、そこに見慣れたバイク2台分の風景が現れてくると、俺は小さくケッと言って部屋に戻った。
 コップやスプーンの散らかったテーブルの上を黙って片付けていると、さっき「どうもありがとう」と返したはずの本がそのまま置いてあって、僕はそのときたまらなく悲しくなって「バーカ」などと言って本を壁に投げつけるとそのままふとんに潜って寝てしまった。
 そして翌日からの試験はほとんどサボり、映画を見たり図書館に行ったり、明と宏司くんの家に遊びに行ったりしていた。