僕の仕事の関係で、女性の上司がFMラジオの生放送に出ることになった。
放送時間は10分間もある。
前日から弱気で「私、こういうの苦手なの。生放送なんて。」と言う。
「大丈夫ですよ。失敗したと思ったら、大声でピーって言えばいいんです。」
そう教えておいた。


当日、僕は別室で、彼女が電話を通して行っている生放送を聴いていた。
普段よりかなり大人しく、声も小さめだ。
アナウンサーが言うことに、「はい。」とか「そうです。」みたいなことしか言わない。
どうしちゃったんだよ。聴きながら不安になってきた。


「職場の近くに新築の寮があるんですよね」とアナウンサーが言う。
「そうです。徒歩500メートルのところに。」


徒歩500メートル?交通手段で距離が変わるのか!
やっちゃったな。と一瞬思ったけれど、面白かったので、爆笑した。
終わったあと、その上司に「徒歩5分はわかるけど、徒歩500メートルって斬新ですね。寮まで車だと何メートルくらいになるんですか?」なんて言っていじめていたら「うるさい!」って怒られた。


今週も金曜日の夜に実家に帰った。
夜は9時には寝て、朝は7時過ぎまで寝ている。
そして朝ご飯を作って、食べて、それからまた寝る。
そんな風にして、土曜日は1日のほとんどを寝て過ごした。
高校時代に、友達に「俺は死ぬまで寝ていたい」なんて言っていたのを思い出した。
確かに実家では信じられないくらい寝られる。


そんな怠惰な生活をしていたら、天罰なのか、隣の家から電話がかかってきて、日曜日に実家の地元の運動会の飲み会の設営を手伝うようにと言われる。
めんどくさいなあ、と正直思う。俺は昔っから運動会なんて大嫌いなのだ。
おまけに母がおなかが痛いなんて言い出す。下痢が続いているのだそうだ。
母に下痢止めの薬を飲ませる。脱水にならないようにと姉から電話で注意をされる。
「どうなの?具合は。」
「だからさっきも言ったように下痢みたいだけど。」
「ひどいの?いつから?」
「知らないよ。知るわけないだろう。」
「なんで知らないのよ!」
姉との姉弟関係も長いが、なかなか分かり合うことができない。


運動会は前日の雨で中止になったが、午後4時からの飲み会は行うのだという。
3時30分頃に集会所に行くと、近所の人が働いていたので手伝う。
ビールやコップを1階から2階まで持ち上げたり、料理を運んだりした。
ちょうど疲れてきた頃、飲み会が始まった。
「母が脱水症状を起こしているみたいなので、これで帰ります。」
そういって僕は一杯も飲まずに、飲み会の会場を後にした。


実家に帰ると、姉が僕の部屋の本を整理するのだと言う。
「まじで?そこに手を出すと大変だぞ。」
警告するが、どうしてもするのだという。
「廃品回収に出す売れない本」「売れる本」「残しておく本」の3種類に分けろというので、分ける。
本の多さに圧倒される。
「売れる本」と「廃品回収に出す売れない本」が多い。
残しておく本に僕が選んでいるものはSFが多い。俺はサスペンスよりもSFに価値を置いているんだなあ、と自分の行動を通じて自分をまた少し知った。


百科事典の入っていた大きな本棚は、姉が「解体して、月曜日に処分場に持って行く」と言う。
「解体?」
「ハンマー1つあればできるわよ。あなたが高校時代まで使っていた机もそれで解体したんだから。」
「あの机、壊しちゃったの?まだ姪が使っているんだと思っていた。」
「小さいし、もう古いから。」
ショックを隠せない状態の僕に姉は平気な顔で言う。
「本棚も壊すから、庭に運んで。」
庭で本棚を壊す。確かに、ハンマー1つあれば解体も簡単だ。ハンマーで叩くと、金属製の木ねじが飛び出してくる。
それから、また部屋に戻って本の仕分け作業をする。


夕食は、母の体調も考えて、消化のいいうどんにした。
母が取り寄せた讃岐うどんで、作るのに手間はけっこうかかったけれど、ダシの味がすばらしかった。


夕食後、ブックオフに本を売りに行った。140冊くらい持ち込んで、そのうち15冊くらいは値が付かなかった。残りの125冊で5200円だった。
高いのか安いのかよくわからない。
でも帰りの車のなかで「売っちゃったんだなあ」とため息が出た。
一度楽しませてくれた本を売ることが、こんなにさびしいことだとは知らなかった。
値をつけられるというのも(それも1冊数10円という値段に)、悔しい思いがした。
本を焼く人は、いずれ人を焼くようになるのだという文句が運転をしながら何度も頭に浮かび、別に俺は焼いたわけじゃないと、何度も自分にいいわけをした。


日曜日の夜はそんなわけで、家に帰ってからも1人で片付けを続けて、11時過ぎまで部屋の整理をしていた。
部屋は随分と広くなった気がしたけれど、まだまだくだらないがらくたが山のようにある。


月曜日の朝、姉と解体した本棚を市の焼却場まで運ぶ。
焼却場にいたのはすごく親切な職員で、車から運び出すのを手伝ってくれた。


もう使う当てのないワープロやプリンタも処理した。
これは別の最終処分場に運び込む。
以前、姉が運び込んだときは処分場の職員に山ほど文句を言われたらしいが、今回は警戒もしていたので、もめることもなく、それなりに和やかに処分を頼むことができた。


実家に帰ると、母が相変わらずおなかが痛いという。僕も痛くなってきた。
それから、やっぱり朝食のときに鮭をもっと焦げ目が出るまで焼くべきだった、などということを後悔しながら、布団に潜って苦しんでいた。


昼過ぎにある程度快復したので、また長野まで戻った。
ここにも本がいっぱいあるなあ、と思う。
休日があれば、整理ができるのに。
3連休も過ぎてしまうとあっという間だ。