土曜日に宿舎で、畳替えの予定が入っていた。
土曜日の朝には、宿舎にいて、業者が畳を持ち出すのを見ていなければならない。
夕方は、業者が畳を入れるのを見ている必要はない。
業者が朝、畳を運び出すときに、部屋の合い鍵を渡して、「終わったら、ポストから鍵を放り込んでおいてくれ」と言えばいいだけだから。


ここのところ、金曜日の夜といえば、実家に帰っていた。
でも土曜日の朝、宿舎にいるということは、金曜日の夜に長野にいるということだ。
金曜日の夜には、以前の職場の仲間たちと長野の繁華街である権堂で飲んでいた。
久しぶりに会う仲間と、世界で一番くだらない話をする。
楽しく飲み歩いていたが、帰ってきたのは3時過ぎ。


翌朝、二日酔いのぼんやりとした頭で、昨晩、飲み歩いていたときの自分を思い出す。
昨日行った店を何軒も思い出す。
遊び慣れてるよなあ、すごいよなあと思う。
財布のなかに、お札が1枚も入っていない。特に意識もしてないのに、帰りの代行代だけをキープして飲み、ちゃんと帰ってこられるのが不思議だ。
自分の中に、小学校の頃読んでいた、北欧神話のいたずら好きの神であるロキが潜んでいて、酔っぱらう度に顔を出してくるような気がした。


畳替えの業者が畳を運び出してくれるのを二日酔いの顔でぼんやりと見ていた。合い鍵を渡し「終わったら、ポストから鍵を放り込んでくれればいい」と言う。
畳のなくなった部屋の真ん中に残されたベッドに体を横たえる。
複雑で後味の悪い夢をたくさん見た。


昼頃にあまりの空腹で目を覚ました。
昨日、最後まで飲んでいた友達に電話をする。


「昨日、途中でお金がなくなったって言ってたよね。帰れた?」
「なんとか。」
「ごめん。俺、反省した。あんなに飲み歩いてちゃいけないって。」
「僕を引っ張って、僕が嫌だというのに、次から次へと店に連れて行って。大人が子供を連れ回すみたいな感じでしたよ。」
「…よくわからないな。それって、俺が子供っぽかったって意味?」
「違いますよ。先輩が大人です。」
「そうか。そうさせられていたんだよな、君に。仕向けられていたんだ。俺は。あのとき…。」
「違いますよ。でも、またよろしくお願いします。」


畳替えの業者が畳を持って来る前の、午後4時頃に宿舎を出て、実家に向かった。
まだ気持ち悪かったが、捕まってもアルコールが検出されることはなさそうだった。
高速道路は車両火災などで通行止めの箇所が多くあって、実家まで帰るのはいつもよりも時間がかかった。


実家に着くと、姉が夕食を用意していてくれた。
それを食べて、9時頃には寝た。
そしてまた、変な夢をたくさん見た。
アルコールは本当に精神的にも肉体的にも残す影響が大きすぎるよな、と思った。


日曜日の朝から、月曜日の昼まで、母の食事はすべて僕が作った。
母は心拍数がとても高く、すぐに息切れもするが、症状は落ち着いているようだった。
「私は、治るのかしら。」
「治るだろ。きっと。治るよ。」
すぐにハアハアと苦しそうに息切れをする母を見ていると、本当に、早くよくなるといいなあ、と思う。


そういえば、本が出版された。
以前、東京の職場でいっしょだった友達が、本を書くと言い、僕も少しだけ協力したのだ。


My Kiasu Life in JAPAN-start book

僕が書いた文章を、学陽書房という法律書を出すような出版社が、校正をしてくれる。
日本語の能力が高くて、僕が言いたかったことを、べつの表現に代えてくれる。
校正が、本当に的確なので、指摘を受けている最中にも、すごくいい医者にかかっているような気がしていた。


執筆に協力したということで、僕にも完成した本が送られてきた。
こんなに嬉しいものだとは思わなかった。
俺でさえ、嬉しいのだから、メインで執筆していた友達はきっとすごく嬉しいだろうなあ、と思った。
それから、飲み話で終わらせずに、本当に本にまでするなんて、あいつの実行力ってすごいなあ、と思った。


ハート・ロッカーを観た。


My Kiasu Life in JAPAN-hurt locker

イラクの市街地で、命がけで爆発物を取り除く兵士たちの話だ。
彼らは命を戦場でやりとりをする。
失敗すれば死に、成功すれば明日もまた戦場に行くことができる。


My Kiasu Life in JAPAN-hurt locker1

平和な祖国は、戦場で暮らした兵士から見ると豊か過ぎる。1本のジュースを命がけで飲む戦場から見ると、食料が豊富にありすぎる世界はむしろ異常で、ここが自分が生きる場所だとは思えない。
平和で豊かな生活に疲れ、兵士たちのなかには、再び戦場に行く者もいる。


My Kiasu Life in JAPAN-hurt locker2

こういう映画を見ると、僕はあの戦争について何も知らなかったんだということを痛感する。そして自分の精神的な弱さも、肉体的な弱さも、改めて感じる。
俺にはこの戦場は、耐えられないだろうと思う。


いい映画で、僕自身は個人的には、何度も見直すべき映画のように思う。
僕に足りないところをこの映画は示してくれているように思った。


それから「重力ピエロ」もDVDで観た。


My Kiasu Life in JAPAN-重力ピエロ

母親がレイプされて生まれた弟。本当の父親は連続強姦魔。
育ての父親は地方公務員。
人を性格づけるのは、遺伝なのか、環境なのか。


小説では面白かったが、映画ではつまらなかった。
映像になればなるほど現実感が薄くなり、くだらない作り話に見える。
30件もの余罪がある連続強姦単独犯も、短期間に10件以上重ねられる放火単独犯も、これだけ証拠があるのに捕まえられない警察なんかいるわけないだろ、と思う。
出演者も、演技力がほとんど要求されないこの映画に、力を持て余しているように見えた。


My Kiasu Life in JAPAN-重力ピエロ1

でも、今の日本はこうなのかもしれないな、という覚めた視点でも見ていた。
悲しくても泣きわめかず、自分を殺し、自分が認める数少ないものだけを愛し、裏で手を回し、表では淡々と日々を過ごしていく。
韓国映画に見られるようなムダな熱さがなく、ぬるい。
観ていてもつまらないが、役者だって、泣いたり怒ったりわめいたりできる方が面白いだろう。


My Kiasu Life in JAPAN-重力ピエロ2

途中から、映画のあまりのつまらなさにうんざりとして、字幕を英語にして、英語の勉強用教材だと無理して思いながら、最後まで観た。


民事訴訟法のテキストを読み終わった。読み終わっただけで、何一つマスターしていないような気がするけれど、それでも、今の段階では、読み切ることが大切だと思っている。ペースはまあまあだと思う。