水曜日に、職場で3人掛けの重い木のイスを持ち上げようとして腰をひねってしまった。そのときは「やっちゃったなあ。痛いなあ」という思っただけだったけれど、翌朝から腰が痛くてたまらなくなり、物事を集中して考えられなくなって困った。左足をつくと鈍痛が来るので、右足体重で歩いていた。


職場近くの薬局で「アンメルツゴールドEX」というすごい名前の薬を買って塗っていたら、塗った場所がとても熱くなって、「アチ!アチ!」なんて心のなかで叫ぶくらいだったけれど、不思議とその後、痛みが引いて、夕方頃には普通に歩けるほどに快復した。
もう今では痛みはかなり引き、どこか遠いところでたまに痛む程度になっている。全治4日程度の筋肉痛ってことだったのだと思う。


金曜日の午後、仕事を半日休んで実家に帰り、医師から母の病状について話を聞いた。


今年の夏は暑く、熱中症対策として水を飲むことの重要性が連日のように報道された結果、必要以上に水を飲んだ心臓病の患者の心臓が、増えた血液を処理しきれなくなって、肺炎を起こしたり肝臓に鬱血をしたりむくんだりしたらしい。
「今年はそういうわけで、夏なのにむくむ患者が多くて、ちょっと異常です。」


母もむくみがひどくて入院をしたのだが、母の場合は微妙なコントロールが必要で、ただ利尿剤を飲ませて水を出せばいいだけではないらしい。その説明を受けた。難しい病気なんだということはよくわかった。


土曜日の朝、母が退院した。完治というわけではないのだけれど、退院と聞いて、母は嬉しそうだった。
母が入院をしている間、ずっと付いていてくれた看護実習中の学生が、休みの日だというのに、母の退院を聞いて病室に駆けつけてくれた。
「いろいろ勉強になりました。ありがとうございました。退院おめでとうございます。」
頭を下げている学生に、こちらの方こそありがたく、本当にいい子なんだなあと思った。


久しぶりに、実家で母に夕食を作ってあげた。
ジャガイモを茹でてオリーブオイルで炒め、ついでに鶏のササミとピーマンとトマトも炒めて、最後にバターとビールで作ったソースをかける、というあり合わせのもので作った簡単な料理だ。
冷凍だったササミの肉があまりおいしくなくて、味は今ひとつって感じだったけれど、母は嬉しそうだった。


その他の時間は基本的には暇だったので、カール・ハイアセンの「復讐はお好き?」(文春文庫)を読み始めたら、土曜日のうちに全部読んでしまった。


My Kiasu Life in JAPAN-復讐はお好き?

法律のテキストは10ページ読むのにも一苦労なのに、550ページもある小説を簡単に1日で読破してしまうあたり、俺のなかの何かが間違っている感が否めない。


この「復讐はお好き?」はろくでもない夫に殺されかけた妻が、死んだふりをしたまま夫に復讐を図るというシンプルなストーリーだが、挿入されるストーリーに含蓄の深いものが多くあり、この本のなかから学んだものも多かった。


尻に鉄砲の弾が食い込んだままになっていて、痛みのあまり貼付型の麻酔薬フェンタニルを盗んでいた男が(正確には、ホスピスに忍び込んで、意識がもうろうとしている患者から引っぱがして自分に貼る)、ガンの終末期の女性患者から諭されるシーンは印象的だった。


「わたしが信じているのは、ひとはいくつになっても変わることができるってことよ。わたしはいま81歳だけど、それでも今日より明日のほうがよりよい人間になれると思っている。明日がなくなるまで信念は変えないつもりよ。」


読みながら、俺もこういう信念を持とうと思った。今日より明日のほうが賢く、人に対して優しく誠実でいられるように努力をしようと。それが少しでも、と思った。


読み終わった後、法律の知識を身につけようと一応、テキストも読みはじめたのだが、本当に少ししか賢くなった気がしないほど、少ししか読まなかった。でもまあいい。少しずつ自分を変えていけばいい。俺は人にも自分にも、もともとかなり寛大だ。


DVDで松田優作の映画「最も危険な遊戯」を見た。70年代の映画で、古さは否めない。


My Kiasu Life in JAPAN-最も危険な遊技

たった1人の男が警察権力に勝てるという発想が、21世紀に生きる僕たちにはもうない。
それから警察が1人の男を確保するために、その恋人を誘拐(正確には略取)することもあり得ないことを知っているし、走っている車を、人間が走って追いかけ、追いついてしまうということがあり得ないことも知っている。
でも、それでもこの映画は楽しめる。


松田優作の魅力は不思議な魅力だ。走っているシーンを見ながら同じ人間だと思えなかった。だからあり得ない設定でも、それなりの納得ができるのだと思う。似た俳優がどれだけ努力をしても、松田優作にはなれない気がする。これだけやりたい放題やって、しかも魅力を感じさせるのはいったい何なのだろうと思う。


70年代のこの映画を観ていると、女優にもリアリティのある強さや美しさを感じる。こんな女がいたらなあ、と思う。裸のシーンを見ても、きれいだなあ、と思う。
まあたとえ身近にいたとしても、もちろん、相手にはされないだろうけれど。