土曜日の朝に中学校時代からの友達である大工のトシオと実家で会うことになっていた。
母が退院したあとに寝る部屋にエアコンを付けたかった。
トシオが知っている電気工事士を紹介してくれるのだという。


土曜日の朝に実家にいなければならないということは、金曜日の夜のうちに実家まで帰っていなければならないということだ。


金曜日、仕事帰りの疲れた体で、実家まで2時間の運転をする。
頭をすっきりするためにコーヒーをがぶがぶ飲んでいたら、口内炎が痛くなってきた。
ひとつ障害をクリアすると新たな障害が生まれるというあたり、自分の体とはいえ思いどおりにならないものだ。


トシオに会うのも何年ぶりだろう。
久しぶりに会ったトシオは以前よりも精悍な顔立ちをしていた。
PTA会長になったのだという。
「おまえが?」
「大変だけど、どこに行っても会長、会長って呼ばれるからクセになる」という。
「この前は、会合であいさつしろって言われたけれど、今日はいいやって断っちゃった。みんなが、本当にいいんですか?って聞くから『確か去年も、会長挨拶はしなかったはずだ』って適当なことを言って許してもらった。」という。
トシオらしい話だ。


トシオは今日はクリナップが展示会をしていて、そっちの会場に行くから、いつまでもいられないのだと、電気工事士が来る前に帰って行った。


姉はドアホンも寝る部屋に付けるべきだと言う。
電気工事士がきたらその交渉もしなさいと、電話で言う。
めんどくさいなあと思うが、交渉することにする。


電気工事士の人はとてもいい感じの人だった。
様々な提案をしてくれて、それがもっともだと僕も感じた。
僕がした、いくつかの提案も受け入れてくれた。
話をきちんとまとめようとする人と話すのは、気分がいい。


電気工事士の人が帰ったあと、母を見舞いに行った。
母は先週よりもまた少し快復したようだった。
たださほど暑くもないのに、汗をかいているのが気にはなった。


退院をしたら、しばらくの間、母は姉の家に暮らすことになっている。
7月の第2週になったら姉の家からこっそり会合に行きたいから、このスーツを病院に持ってきて、と僕にスーツの絵を描いてメモを渡す。
「少し落ち着けよ。まだ快復していないんだよ。今のこの状態ではなくて、完全に快復してから行っても遅くはないんだから。」
一生懸命、説得する。どこまで理解してくれたのかはわからないし、体に無理をさせないように、将来の明るい展望を話す、というのがなかなか難しい。母は、その会合がどれだけすばらしいのかを僕に説明しようとする。
「わかるよ。俺は行くなって言ってるんじゃないんだ。でも、今はまだまずいよ。会合はその1回がすべてじゃないだろ。それに今は階段だって上れないだろ?」


病院を出てから、今度はトシオに俺が会いに行く。
クリナップを始めとする、最新のキッチンや浴槽の説明を受ける。
車のバンパーと同じ素材で作った洗面台は、物を落としても、割れないし、傷もつかないのだと、化粧品のビンを実際に落として説明をしてくれる。
「すごいな」
「この前のホーローの説明はもっとすごかった。浴槽をスチールワイヤーでこするんだよ。それでも傷がつかないんだ。」
「ふーん。」
「でも、俺、言ったんだよ。普通の生活している人が、浴槽をスチールワイヤーでこするってことがあるのか?って。どんなことを想定しているんだって?そしたら、説明した人が黙っちゃった。」


トシオの話は相変わらず面白い。
それからトシオとは一軒家をどういう観点で作るべきかということをいろいろと話した。
「いろんなケースがあるから難しいな。」ということで、話は落ち着いた。


日曜日は、朝から母が退院してから寝る部屋にエアコンを取り付けるための配線工事をしてもらった。
最近は、エアコンを取り付ける際、200V(通常は100V)の独立した電源が必要になるらしい。


工事のあと、姉と実家の掃除をして、それから母の見舞いに行った。
そして、夜に、また長野に帰ってきた。


ダン・ブラウンの「ロスト・シンボル 下巻」(角川書店)を読み終わった。


My Kiasu Life in JAPAN-lost symbol2

「ダビンチ・コード」や「天使と悪魔」ほどの謎解きの面白味はないが、様々な仕掛けがあり最後まで飽きなかった。
神は人の上にいるのではなく、人の内側にいるという彼の主張は、僕もここ数年感じていたことだったので、読んでいて頷けることが多かった。


こうの史代の漫画「さんさん録」(双葉社)も読んだ。


My Kiasu Life in JAPAN-336

妻を交通事故で亡くした1人のじいさんが、息子夫婦と孫と一緒に暮らす、そんなお話だ。
こうの史代の漫画を読む度に、僕は優しい気持ちになる。
彼女の漫画「長い道」もよかったけれど、この「さんさん録」も優しくてとてもいい本だった。