金曜日は夜9時を過ぎてから、友達とスナックに飲みに行った。
友達は、そのスナックでバイトをするので、基本的には僕は一人きりだ。
思ったよりもお客が多く、席も7割方埋まっていた。
次々とカラオケがリクエストされる。
カウンター席に座って、ぼんやりとタバコを吸いながら、カラオケの画像を眺める。
この店以外ではほとんどタバコを吸わないので、タバコを吸うのも2ヶ月以上ぶりだ。
仕事の絡みで30分くらいの短い映画を作ろうと思っていて、ビールを飲みながらいろいろと考える。
先日、通勤途中にNHKのラジオ放送でいつものように「まいにちフランス語」を聞いていたら、レナという講師と先生が最後にこんなことを言っていた。
レナ「昔の話なんですが、ある少年と出会ったんです。そのとき、胸がきゅんとして、こんな感覚は初めてだって思ったんです。それから私はいいました。「こんにちは、恋。」って。あれ?先生、私の話なのに、どうして先生の顔が赤くなっているんですか?」
先生「日本中が赤くしてますよ。」
この話がとても印象深くて、これをきっかけとして話を組み立てていたら、それなりのものができそうな気がしてきた。
ついつい真剣になって考え込んでいたら、お店の女の子に何度も「死んでる?」って声をかけられた。「ぜんぜん。気にしないで。」
「あとで若い女の子つけるから。」
「本当に気にしなくていいよ。」
12時30分まで飲んで帰った。
家に帰ると、体中にタバコのにおいが染みついている。
普段はタバコ嫌いなので「ああ、もう最悪」などと言いながら服を脱いで洗濯機に突っ込んで歯を磨いて寝た。
週末は実家に帰った。
友達から頼まれた仕事をする必要もあったし、実家にしかない資料も取りに帰る目的もあった。
実家にしかないはずの資料、それはずいぶんと前の「キャラコママ」という雑誌だった。
以前、名古屋の弁護士とその雑誌上で、「しんちゃん助けて」という法律相談コーナーを連載していたのだ。
今回、仕事上その雑誌が必要になった。
それでわざわざ実家まで取りに来たのに、どこにもない。
僕の部屋は押し入れの中も部屋に積み上げてある段ボールの中も本だらけだ。
そこも探したけれどやはりどこにもない。
しかたなく名古屋の弁護士の先生に連絡をして、そのページをFAXで送ってもらうことにした。
電話口の向こうで「俺はちゃんととってあるけどね」と少し自慢げだ。
「どこいっちゃったんだろうなあ。」
どこに行ったのかは今もって謎だ。
夕食を食べて風呂に入り、友達から頼まれた仕事を始める。
こちらも一応の締め切りは2月1日で余裕がない。
ちょっと行き詰まって、上司から借りたトム・ロブ・スミスの「グラーグ57」(新潮文庫)を読み始めたら、止まらなくなってしまい、結局上巻の最後まで読んでしまった。
「グラーグ57」は、「チャイルド44」の続編で、スターリン死後のフルシチョフ政権に突入する。スターリン時代に無実の人を苦しめていた国家保安省捜査官が、今度は熾烈な批判の目にさらされることになる。
旧国家保安省捜査官だった主人公のレオも、自分自身の過去から自分自身を守りきれない。家族も崩壊の危機に直面し、そこに共産主義から外れた犯罪集団の手が伸びる。
ソ連の恐ろしさを感じさせる作品で、ついついかつて読んだスラヴォール・ラウィッツの「脱出記~シベリアからインドまで歩いた男たち」(ソニーマガジンズ)まで段ボールから取り出して読み始めてしまった。
おかげで、友達から頼まれた仕事は半分程度しか進まなかった。
日曜日に長野に帰ってきたけど、再び本を読んだりして、やはりなかなか進まない。
締め切りを延ばしてもらうしかないな、と思った。

