風邪薬をたくさん飲んで寝ていたら、明け方になって体が寒くて仕方がない。
熱を測ったら34度7分しかなくて、「俺はこのまま死ぬのだろうか」なんて考えていた。
もう一度測り直したら34度9分。
あまりに寒いので、掛け布団を引きずり出してきて、掛け布団の上に重ねてかけた。
布団に入るとき、あまりに布団の山が高くて、自分がビッグマックになったような気がした。


仕事は徐々に忙しくなってきた。
金曜日も9時まで残業をして、それから飲みに行った。
ネクタイを締めたままビジネスバッグを持って店に入る。
スナックの女の子に「サラリーマンが来た」などと言われる。


「まだ風邪を引いているんだ。12時には帰るから。」
でも12時には、帰らなかった。


「今度、漢字検定を受けようと思うんだ。」
女の子に声をかけられる。
「ふーん。じゃあ。俺も受けるよ。」
今度2月に漢字検定の2級を受けることにする。


女の子たちと話しながらゆっくりと焼酎などを飲んでいたら、体が温まってきたせいか、なんだか風邪が治ったような気がしてくる。


最後にはカラオケでレディオ・ヘッドの「ノー・サプライゼズ」を歌った。

結局、午前3時の閉店までいた。
OKコンピューター
家の前までスナックの女の子に車で送ってもらい、別れる。
「楽しかったよ。今日は。」
「今日も。でしょ。」
「うん…。そうだっけ。」
笑いあって別れる。


翌朝は9時に起きた。
風邪はかなりよくなっていたけれど、声はちょっとおかしなままだ。
髪の毛を切りに行って、その帰りにいくつか公園や小学校に寄る。


来週の日曜日に、ソフトボールの試合があるので、ピッチング練習がしたかった。
実家の近くには練習に適した石垣やコンクリートの壁があるのだが、長野市内では、ただのコンクリートの壁がなかなか見つからなかった。


友人は「共立小学校のプールの壁がいい」と言っていたが、行ってみたら高さが1メートルほどしかなく、その上にあるフェンスも低いため、ちょっとボールが指に引っかかっただけで、ボールがプールの中にまで入ってしまいそうで、諦めた。


家に帰って、DVDで「ぼくんち」という映画を観た。


ぼくんち

僕の好きな西原理恵子の漫画を映画化したもので、主演を観月ありさがしている。
観月ありさとコウイチくん役の真木蔵人は頑張って演じているが、テレビでよく見る芸人の方々は、とても演技が下手で、もう2度と映画に出てくるなって思った。


ぼくんち1


全体として、なんでもありの作り手が楽しんじゃった映画になっている。
B級なんだからこんなもんだろっていう甘えや手抜きを感じる。
今どき、小さな船のなかでハイヒールで足踏みしたら、浸水しちゃって、たいへんたいへんなんてシーンで笑う奴がいるか?
それを冒頭に持ってくるあたり、本当にダメだよなあって思った。


この映画が救われているのは、西原理恵子が漫画のなかで一太や二太に言わせているセリフをそのまま映画で使っていることだ。

ラストシーンはそうだったから、よかった。


この映画が独自で作り上げた世界のどこかがいいというわけではない。

いろんな意味でダメな映画だと思った。


日曜日も洗濯をしたりして、ダラダラと過ごしていた。
窓の外は昨日と同じ、すごくきれいな秋の晴れた1日だった。
ソフトの練習もできないし、特に外に出る必要も感じないので、家のなかでぐだぐだとしていた。


昼過ぎになって一緒にTOEICを受けた女の子からメールが来ていたので、電話をする。
暇そうだったので、「ソフトボールでキャッチボールをしよう」と言った。


「でも、グローブないし。それに、私、キャッチボールなんてしたことないかも。」
「大丈夫だから。すぐできるようになるよ。」


2時30分にコンビニで会って、それからスポーツ・デポに行って、ソフトボール用の一番安いグローブを買ってあげる。
「はい。プレゼント。」
それから、河川敷のグランドに行った。


買ったばかりのグローブは固いけれど、見たところ、スポットが深くて使いやすそうだった。
彼女は最初はぎこちない動きだったけれど、だんだんと慣れてきて、最後は僕が本気で投げた暴投のボールも手を伸ばしてしっかり取っていた。
僕もボールの回転や体の動かし方を確認できて、とてもよかった。


「なんだか、幸せですね。」
ボールを投げながら、彼女がそう言う。
空は青くて、他のグランドでは小学生たちが野球をしている。
川の近くでは釣りをしている人がいて、ボール遊びに夢中になっている子供や家族連れがいる。
「本当だね。なんだか、いいね。」


キャッチボールは2時間くらいして、それから、最初に会ったコンビニにまで送ってあげて、彼女と別れた。

風邪はだいぶよくなっていた。


そういえば、昨年はゴーちゃんにピッチング練習を付き合ってもらったんだよなあって思い出した。


夜には、DVDで「マッチ・ポイント」という映画を観た。


マッチポイント

真面目なテニスコーチが、コーチをしていた上流階級の青年を通じて、その家族と知り合いになり、彼の妹と結婚をする。
彼を家族に紹介してくれた上流階級の青年にはノラという恋人がいて、彼女は男がすべてを投げ出してしまうような抵抗しがたい魅力を持っていた。
テニスコーチは結婚前からノラと関係を持っていたが、次第に夢中になって…。


オープニングが意味深く、映画に一気にのめり込まされる。


「テニスの試合でネットに当たったボールが、上にあがる。その瞬間、ボールがどっちに落ちるか。運良く向こうのコートに落ちたら勝ち。こっちに落ちたら、負けだ。」


とてもいい映画で、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」のような犯罪者側のスリルを十分に堪能できる。
そしてラストも、僕向きだ。


太陽がいっぱい

イギリスに1か月ほど暮らしていたことがあるが、この映画の舞台もロンドンなので、ロンドンの町並みやパブのことなどいろいろと思い出して、懐かしかった。
美術館も数多く紹介され、この映画はロンドンの観光名所案内にもなっているようだ。


マッチポイント1

それにしてもノラの魅力的なこと。僕もあの魅力には絶対に抵抗できない。
相手にされないのが幸せというものだ。


そして、僕はこうも思った。
もういつまでもロックなんて聴いていないで、そろそろオペラなんかも聴いてみようって。




**おまけ**


ノー・サプライゼズ(byレディオ・ヘッド)


ゴミ処理場のようにいっぱいになっている心。
仕事はゆっくりと君を殺していく。
傷はいつまでも治らない。


君はとても疲れて不幸に見えるよ。政府を倒すんだ。
やつらは俺たちのために話すことなんてないんだから。


俺は静かな生活を送るよ。
一酸化炭素とも仲良くやっていくつもりなんだ。
不安なことも、驚くこともない、
不安なことも、驚くこともない、
不安なことも、驚くこともない
静かに、静かに。


これが僕の最後の発作だ。
僕の最後の腹痛だ。
不安なことも、驚くこともない、
不安なことも、驚くこともない、
不安なことも、驚くこともない。どうか…。


なんてきれいな家なんだ。
なんてきれいな庭なんだ。


不安なことも、驚くこともない、
不安なことも、驚くこともない、
不安なことも、驚くこともない。どうか…。