朝、仕事に行く前にシャワーを浴びていた。
洗顔フォームで顔と手を泡だらけにして、手を上下に激しく動かして洗っていたら、右手の小指を勢いよく鼻の穴に突っ込んでしまい、痛みで悶絶した。


職場でその話をしたら、「僕もしたことあります。出血しました。血が出なかったなんて、まだまだですね」と同僚が言っていた。
生まれて初めての経験だったのだけれど、世の中では普遍的に起きていることなのかもしれない。


水曜日には久しぶりに英会話学校に行って勉強をした。
今回のテーマは料理の仕方だったので、料理なんてパスタ程度しか作らない僕はあまり話すことがなかった。
皆がピザやカレーの作り方なんかを話しているなか、僕はベジマイト・トーストの作り方を説明した。
パンをオーブンで焼いて、ベジマイトとマーガリンを塗る。
あまりに短かったが、「ザッツ・オール」と言い切った。
先生は笑顔で「サンキュー・ベリーマッチ」と言っていたが、少し気の毒に思った。


金曜日に飲みに行った。9時頃に飲みにいって帰ってきたのは2時過ぎだった。
つい、タバコを吸いすぎてしまい、そのせいでなんだかお酒を飲む量がいつもより少なかった。


翌朝の土曜日は8時に起きて、DVDで「理髪店主のかなしみ」を観た。


理髪店主のかなしみ

この映画が封切りされたとき、高さが5センチ以上のハイヒールを履いてきた人には、600円くらいの割引があった。
その頃一緒に働いていたイギリス人のチルトンという女の子がいつもヒールを履いていたので、この映画の宣伝を一緒に見て、「割引になるね」と話した記憶がある。


原作はひさうちみちおの漫画らしいが、それを僕はまだ読んだことがない。
ひさうちみちおの漫画は、妙に心に残るへんてこな漫画が多い。
スクリーントーンを使わず、スクリーントーンを使うような背景の模様もすべて手で描いているのだという。


もう細かい内容は忘れてしまったが、彼の漫画で印象深かったものがある。
市営の動物園に「ひと」というコーナーがあって、そこに一家(両親と息子)が暮らしている。
息子も中学校に入学し、自分の部屋が欲しいと言い出す。
父親は市役所に願いを出し、「動物園の「ひと」のところに、子供部屋を作るべきかどうか」真剣に議会で話し合われるが、「子供部屋などというのは、贅沢ではないか」「予算がない」等の意見が出て、結局、息子の部屋は手に入らない。
家族は皆、がっかりするが、夜の暗い動物園にまた帰っていく、というストーリーだ。
本当にへんてこなんだけど、深い漫画なのだ。


映画は脚(靴?)フェチの理髪店主の物語。
この理髪店主は真面目なんだけど、静かにフェチなのだ。
柄本明の演技が実によく、主人公の田口トモロヲの個性を引き立てている。
女性の裸は全くないけれど、エロチックな映像はたっぷりだ。


「なんなのだろう。この映像は。この不思議さは。」
主人公が大好きな女性の脚を真剣にカミソリで剃っていく。
そのあと女性が腕をあげ、柔らかい脇の下に石けんをブラシで塗り、固いカミソリで剃る。
柔らかい箇所に、危険なカミソリというシチュエーションが、緊張感を高める。
何度も映像を止めて、何がこんなに変で、でもいい、のか考え込みながら観た。


靴についた汚れをハンカチで大事そうにきれいに拭き取る主人公の姿を見ていると、プロゴルファーにとってゴルフクラブが体の一部なように、靴も体の一部なんだなあ、と思うようになってくる。
俺もちゃんと靴を履こう、という気になった。


理髪店によく来るマゾのお客が、主人公と公園のボートに乗りながらこう言う。
「(サドの)彼女に命令されたら、私、女房、子供の前でも平気で浣腸とかしちゃうんですよね。(たじろぐ主人公、中略)。でも彼女は私のことを犬畜生以下のものだとしか思っていないんです。(真剣な表情になる)…幸せです。」
深すぎてさっぱりわからない。でもいい。


この映画はもっと評価されてもいいと思う。
いい映画だと思うし、面白い。
ただ、エンディング・テーマはもっと静かな曲がよかった。
本編の音楽がよかっただけに残念だった。


土曜日にはDVDで「ゆれる」も観た。


ゆれる

映画マニアの友人にこのDVDを観るとメールを書いたら、「観なければと思いつつ観れていない」のに「傑作であると断言できます!」と返事が来たので笑った。
もちろん、監督の才能やキャストから判断してのことだとは思うけれど。


でも確かに傑作であることは間違いない。
出だしから、計算し尽くされた感のある映像で、「理髪店主のかなしみ」とはやっぱり違うなあと思った。
先の「理髪店主のかなしみ」もよくできた映画だと思うけれど、わかる人がわかってくれればそれでいい、というあきらめ感をどこか感じる。
この「ゆれる」にはそういった甘えがない。
観た人すべてにすごさをわからせてやる、傑作だって言わせてやるっていう監督やスタッフの思いを感じる。


香川照之とオダギリジョーの演技には文句がつけようがなく、特に香川照之の演技は素晴らしい。
監督・脚本は女性で、女性が描く魅力的な男というのはどこか底が浅いものだが、今回のこの2人の兄弟は本当によく描けている。
男から見ても魅力のある男を描ける女性(小説家、漫画家、映画監督など)は、大成すると思う。


日曜日には、久しぶりに岩盤浴に行き、そのあとゴルフの打ちっ放しに行ってきた。
ドライバーだけはどう打っても僕の能力では全然ダメなので、近々買い直そうかなあ、なんて思い始めた。


家に帰って浅野いにおの漫画「おやすみプンプン」(小学館)を1巻だけ読んだ。
プンプンという小学生のちょっと複雑な日常を描いているんだけど(母親は父親に殴られて入院、父親は逮捕され、無職のおじさんが世話をしてくれている)、関わり合う人たちも皆どこか変わっている人たちばかりだ。


絵もうまいし、ストーリーも(特に後半になって)走っているんだけど、そもそもなぜプンプンやプンプンの家族は子供の落書きの絵みたいなのだろうかと、最後まで違和感を感じたままだった。


石川雅之の漫画「もやしもん」(講談社)は4巻まで読んだのだが、メインのストーリーが走ってこないので、3巻目あたりから読むのがだんだん嫌になってきた。
なぜ、キャラクターを生かさないのかよくわからないし、教授のキャラクター設定の狙いがよくわからない。
主人公が何をしようとしているのかすら不明で、このままダラダラと菌の話ばかりされてもなあって思う。
作者的にはそっちの方が楽なんだろうけど。


やっぱり安定感があるから「のだめ」の続きでも読もうかなあ、なんて思った。