仕事に余裕が出てきた。
最近の若者のトレンドは5月病ではなくて6月病なのだという。
早速、人事担当者のところに行って「6月病になりそうだから職場を変えてほしい」と言ってみる。
「そりゃ大変だ。でも6月病なら1ヶ月我慢すればいいだけじゃん」とまたも訳のわからないことを言われる。
水曜日には定時に帰り、友達から紹介された映画「転々」をDVDで観た。
キャストといい、小ネタといい「時効警察」に雰囲気がよく似ている。
世間では「時効警察」はかなりおもしろい、ということになっているが、僕はあまりおもしろいと思っていなかったので、ちょっとつらいなあ、と最初のうちは思っていた。
借金を抱える大学生(オダギリ・ジョー)が、報酬をもらう約束で、借金取り(三浦友和)と、吉祥寺から霞ヶ関まで散歩をする話だ。
まだ、できあがっていないような感じがする映画でもある。
オープニングの3色歯磨き粉だって、なぜ、この話なのか必然性が感じられない。
別に何だっていいような気がする。
この映画は、そういった小ネタが山ほどあって、そのほとんどはメインの流れと無関係だ。
例えば、この主人公が駅前でコインロッカーの鍵を拾う。コインロッカーを開けてバッグを取り出す。期待を込めてバッグを開けると、なかから山ほどのダルマと天狗の鼻が出てくる、というシーンがある。
ストーリーには不要なシーンなので、僕なら切る。
でもこのシーンを思いついたあと、最後まで残すセンスと力がこの監督の才能なのかもしれない。
正直言うと最後まで観るとかなりいい映画なのだ。
でも本当に微妙で、絶妙。
ストーリーに不可欠でない小ネタを、僕はどうしてもうるさく感じてしまう。
見終わると、自分も散歩をしたかのように、ぐったりと疲れていた。
「東京を散歩したなあ」という気になる。
小ネタ好きで「時効警察」が好きな人であれば、きっと絶賛する映画なのだと思う。
金曜日の午後には、今年になって初めての年休を取った。
そして長野ロキシーに行き、5人くらいのご老人たちに混じって「Beautyうつくしいもの」という映画を観た。
長野県の伊那谷に伝わる歌舞伎を演じる役者が戦争に巻き込まれ、心に傷を負って帰ってくる話だ。
僕は以前、このストーリーの元になっている大鹿歌舞伎を観たことがあるが、そのときは何もわからず、何がいいのかもさっぱりわからなかった。
観光業の人に言われるままに舞台におひねりを投げていた。
泣かせる映画なので始めから覚悟はしていたけれど、やっぱり涙が出てきた。
ロシア兵の役者はヘタだし、霧ヶ峰で撮ったというシベリアは、どう見てもシベリアには見えなかったし、ストーリーもこれほど先の読める話もなかったけれど、こういう固いストーリーが南信州の人は好きなんだよなあなんて思いながら泣いていた。
歌舞伎役者である片岡孝太郎の演技が素晴らしく、最後に舞う「天竜恋飛沫(こいしぶき)」は、圧巻だった。
映画を見終わって、映画館の外に出たら、仕事でささくれ立っていた気持ちが穏やかになっていた。
泣ける映画は、心のもやもやを洗い流すのかもしれない。
その後図書館に行って、乙5と乙6の試験勉強をして、それから飲みに行った。
11時くらいまでに2軒をはしごして帰ろうと思ったら、俺が初めて就職したときに、たまたま隣の席だった先輩にばったりと会って、それからまた2軒行って、3時過ぎまで飲んだ。
翌朝の土曜日は11時ぐらいに起きて、DVDで「イカとクジラ」を観た。
試験の前日で、そんな余裕はないはずなのだけど、2日酔いもあって全然やる気が出ない。
「イカとクジラ」は両親が離婚して、それぞれの家で、曜日によって暮らすことになった子供たちの話だ。
様々なドラマがあるが、小ネタもなく、基本的には淡々と話が進む。
そのまま淡々と終わり、僕はセンスのいい映画だなあ、くらいの感想しか持たなかった。
あとになって、この映画がアカデミー脚本賞をはじめ、数多くの賞にノミネートされているのを知って驚いた。
僕は映画に、ドラマを求め過ぎのような気がした。
こういう映画をいい映画なのだと、大きな声で言っていいのだと、何か学んだような気がした。
夜の10時過ぎになってようやく勉強を始め、12時には嫌になってやめてしまった。
それでも問題集3冊分の試験該当問題はすべて解いた。できなかった問題は付箋をつけておいた。
日曜日は、できなかった問題をすべて解いて付箋をはがし、昼から試験会場に行った。
前回よりも受験者は随分と少なかった。
乙6の試験はまあまあだったものの、乙5は3冊の問題集でも見たことのないような物質を多数出されて、絶望的な気分になった。
例えばジニトロソペンタメチレンテトラミンは確かに乙5の危険物だけど、問題集の問題には載ってこないようなマイナーな物質だ。
こんな物質の性質って言われても、わかるわけないだろ、とだんだん腹まで立ってきた。
でも、試験は試験。
他の問題も解けないものが多かったので、どうやら乙5は落としたような気がしてきた。
試験終了後、腹立たしい思いのまま、車を飛ばしてゴルフの打ちっ放しに行き、250球ほど打ってきた。
体が疲れてくるにしたがい、試験のことはどうでもいいような気分になってきた。
家に帰ってからネット麻雀をしたら、生まれて初めてダブル役満(字一色と小四喜)を上がった。
試験のことなどどうでもいいや、という気にますますさせられた。
**おまけ**
何万人もの聴衆の前で、キューバのカストロ議長が芝居がかったスピーチをしていた。
「私が権力を握ってから、200もの新しい学校を作った。」
ちょうどそのとき、一人の物売りが大声で「ピーナッツ!ポップコーン!」と言いながら聴衆の間を歩いていたので、カストロはスピーチを中断した。
カストロは少しいらついたが、なんとか落ち着きを取り戻した。
「それから、皆さんが知っての通り、私が権力を握ってから、300以上の病院も作った。」
「ピーナッツ!ポップコーン!」物売りの声に、カストロはまたもスピーチを中断させられた。
カストロは怒りに震えたが、なんとか感情を抑え込み、スピーチを続けた。
「私が権力を握ってから、500以上もの…。」
「ピーナッツ!ポップコーン!」物売りの大声で、カストロはまたもスピーチを中断され、怒りのあまり、マイクに向かって怒鳴りつけた。
「これ以上、誰かが1度でもピーナッツ、ポップコーンなどと資本主義的なことを言ったりしたら、そいつのケツをアメリカのマイアミまで蹴り飛ばしてやる!」
その途端、何万人もの叫び声で、カストロの体が浮くほどだった。彼らは叫んでいた。
「ピーナッツ!ポップコーン!」
(これは、アメリカ人が作ったジョークなのでこうなるけれど、カストロについて調べると、なかなか尊敬すべき人のように思える。キューバに彼の銅像はなく、権力を息子に与えるような馬鹿な真似もしていない。日本に来た際には原爆ドームに献花・黙祷もしている。)