先週末からずっと具合が悪かった。
週末は実家に帰っていたのだが、したことと言えばメダカの水槽の掃除くらい。
あとは寝てばかりいた。
月曜日には咳も激しくなり、咳のし過ぎなのかみぞおちの辺りも痛くなってきた。
熱を測ったら37度1分ほどある。
職場内の診療所に行って、抗生物質と解熱剤をもらって、2時間ほど仕事を休んで帰った。
まだ明るい平日に家に帰るのは本当に久しぶりだ。
長野駅の周辺には若い女の子がいっぱいいて「ああ、こういう世界もあるんだ」と思った。
早朝か夜しか駅の周辺を歩くことなんかないし、職場にはおっさんしかいない。
行き帰りの交通手段とお店の女の子以外にも世の中に女の子がいることを、もうほとんど忘れていた。
「若いって素晴らしいことだよな。」
駅までの道を歩きながら思った。
家に帰って、食事をしようと思ったのだけど、あまり食欲がないのでヨーグルトだけ食べて、薬を飲んで寝た。
2時頃、突然苦しくなって起きた。
咳が止まらない。
していたマスクをはずしたら、鼻水だらけで「おまえはガキンチョか」と思った。
顔を洗ってうがいをして、熱を測ったら37度6分になっている。
体中が痛い。
インターネットで近所の内科医を検索する。
朝になったら電話しようと電話番号を控えて、地図で場所も確認する。
それから寝ようと思ったのだけどなかなか咳も止まらず、眠りにつけなかった。
朝8時になるまで、眠れないまま我慢をして、それから電話をした。
職場にも電話して休むことを伝えた。
診療は8時30分からだと言われたけれど、もう限界に近かったので、着替えて家を出た。
コートを着ていたけれど寒くて震えていた。
病院までたどり着いたのは8時20分頃だった。
保険証を出して、受付で待っていたのだけれど、寒い。
体温計を渡されたので測ったら38度7分もあった。
それから初診だというのでいろいろと看護師に問診を受けて、それからなぜか身長や体重を測って、インフルエンザの検査をしてもらった。
鼻の奥に細くて長い綿棒を突っ込まれる。
思ったより痛いなあ、と思っていたら、片方の穴だけではなくて両方をやられて思わず痛みで涙ぐんでしまった。
検査結果はインフルエンザA型。
きれいにA型の窓にラインが浮き出ている。
C型の窓にもうっすらとラインが出ているが、これは無視していいのだろう。
B型の窓には何もラインが出ていなかった。
その後、医師の診断を受けた。
「タミフルですが、どうしますか?」
「処方してください。快復するなら何でもいいです。」
タミフルとうがい薬を処方してもらった。
タミフルがインフルエンザに劇的に効くことはよく知られている。
これを使うとラムズフェルドが儲かるという図式が非常に気に入らないが、それを除けばいい薬だと僕は思っている。
異常行動っていうけどアルコールほどじゃないだろう、という思いもある。
24時間以内に50%の患者の熱が下がるなんて、本当に素晴らしい。
家に帰って、ヨーグルトとアイスクリームを食べて、タミフルを飲んで寝る。
昨日よりも苦しくなく、寝付くことができた。
タミフルのせいなのか熱のせいなのかわからないが「俺の風邪の具合が、予算の算出に反映してしまう」という妄想に駆られて、ずっとあせっていた。
何度も起きて熱を測る。
あっという間に38度を超えるので、バカバカしくなって測るのをやめる。
汗で濡れた服を乾いた服に着替える。
そんな風にふつうに行動できるのに、妄想だけは止まらない。
咳をする。
「この咳のたびにコンピュータを1台買うことになるんだから、ああ、でも咳とか炎症とかどうやって数値化すればいいんだ?不確定要素が多すぎるんだよ。」
咳の苦しみと、予算の計算の苦しみで僕はずっと悩んでいた。
タミフルは1日2回。通常10錠が処方され、途中で熱が下がってもすべて飲みきった方がいいらしい。
でも、初日は勝手に1日に3回飲んだ。
その日の夕方、まだ熱は38度はあったけれど「どうして俺の風邪とコンピュータの購入が関係するの?」って自分に聞いたとたん、悩みが消えた。
「本当に関係ないんだ。」
何度も自分に確認する。
妄想と決別した瞬間だった。
それからは、随分と安らかに眠った。
翌朝起きたら、熱も37度代だった。
午後から職場に行った。
仕事が溜まって積み上がっていた。
「俺の仕事、減っているかと思ったけど、そうでもないなあ。」と言うと、同僚に「足りない?」と聞かれた。
笑うとまだみぞおちの辺りが痛む。
インフルエンザに感染させてやろうかと思った。