カンターラ「神の降臨」

 

 

 

監督・脚本・主演 リシャブ・シェッティ

出演 リシャブ・シェッティ(シヴァ)

キショール・クマール・G(ムラーリ保安官)

デーヴェンドラ・スットゥール(アチェット・クマール地主)

サプタミ・ガウダ(リーラ)

マーナシ・スディール(カマラ)

 

久しぶりにインド映画を観ました。

本国インドで、ロングランを記録した評判の映画だそうです。

ひと昔前のインド映画というと、ラストは出演者全員の賑やかなダンスシーンで、

訳が分からないけどハッピーエンド、というのが定番でしたが、

今はかなり違うようです。

 

物語は、170年前の伝説から始まります。

インドの王さまは、良い妻に恵まれ、良い部下にも恵まれ、

幸せな暮らしをしていたけれど、

なぜか心の平安が得られません。

平安を求めて、インド中を歩き回ったけど、平安は得られず。

長い放浪の末、たどり着いた深い森の中で、

神と祀られる「石」の前に、

彼は初めて、心の底からの安らぎを感じたのでした。

 

「この石を私にください」

 

王は土地の神さまに願います。

 

「いいだろう。代わりにお前は私に何をくれる?」

 

神さまの問いに、王さまは、

 

「あなたが望むものを」

 

と、尋ねます。

 

すると神さまは、天地に轟くすさまじい叫び声をあげ、

 

「私の声が届く限りの森を」

 

こうしてその森は神さまのものとなり、

王さまは「石」とともに国に帰って、幸せに暮らしましたとさ。

 

そして舞台は現代。

神さまがもらたった村では、毎年、神おろしの儀式が行われ、

住民は昔ながらの伝統を守り、超不便だけど、平和な暮らしを営んでいます。

主要な登場人物は3人。

シヴァは、村いちばんの暴れん坊。強く正しく、を地で行くキャラ。

ムラーリ保安官は、国から派遣された森林保護のための役人。

そして地主。広大な森は自分の土地ながら神の土地でもあって、自由に出来ない、というジレンマを抱えています。

 

伝統的な暮らしと、森林の保護と、経済開発……

現代インドが抱える問題を、三者が体現しているかたち。

 

森の草木を採って薬とし、獣を狩って食料とするのは、村人にとって自然なこと。

森林保安官に、森の動物や植物を勝手に取るなと言われても、

言うとおりにしていたら、生活が成り立ちません。

森林保安官は非情にも見えますが、職務に忠実なだけ。

暴れん坊のシヴァと保安官の対立は深まって行きます。

一方の地主は、森を自分の自由にして開発の波に乗って一儲けを企んでいるような。

 

こうして三者三様の思惑が絡んで、

ラストの大ダンスシーンならぬ大乱闘シーンに雪崩れ込んで行くのですが、

さて、その結末は?

 

監督、脚本、主演で大活躍のリシャブ・シェッティは、

南インドの神おろしの儀式を真近かに見て育った人だそうです。
発展著しいインド、

土地の神さまとか、古い暮らしとか、

忘れられようとしているのはきっと、日本と同じ状況だと思います。

一方で、失われたものへの懐古の思いがあるのも同じかと。

 

そんなこんなをダイナミックに描いた作品です。

それにしても、インドの神さまって、もの凄い大きな声なのね。

日本の神仏の静謐なイメージと比べるとびっくり仰天です。