2024年5月4日(土・祝)に、鈴木さん、ムロさん、ひーらぎさん、瓢(ふくべ)さん、そしてポリミさんと私で、クリストファー・ノーラン監督の映画『ダンケルク』(原題『Dunkirk』/2017年)をプライムビデオ見ました!
”密度が濃い! 映像の美しさ+絶望、そして少しの希望。” (視聴直後の自身の感想)
ここからネタバレです
あらすじと特徴
『ダンケルク』は第二次世界大戦のダンケルク大撤退(※)を描いた作品です。
台詞がほとんどなく、場面ごとの描写を淡々と描いているのが特徴。
ダンケルク大撤退:第二次世界大戦初期の1940年5月26日から6月4日。イギリス、ベルギー、カナダ、フランスから成る連合軍将兵は、フランスのダンケルク海岸でドイツ軍に包囲され、ダイナモ作戦による撤退を余儀なくされていた。(Wikipediaより)
感想
悲惨な(クオリティの高い)場面を次々とそして淡々と描き、エンターテイメント性がとても薄いというのがまず思ったことでした。
メロドラマを作るとかご都合主義の展開を用意するとか、ストーリーにメリハリをつけるといったことをしない!
そして場面ごとがとてもうまく描かれていると感じました。
兵士の指の関節が擦り切れているリアリティさだとか、画面の切り取り方や構図、色合い、等々。
感情移入に関してですが、遠い他国のことと描き方の影響もあってか、中立な立場で眺め見ていました。
普通は感情移入するであろうイギリス軍(やフランス軍)にそんなに感情移入はしなかったです。
例えるなら、知らない人たちが指している将棋を眺めているような感覚です。
戦争なのでどっちも人が死ぬわけですし、民間人虐殺と兵士対兵士は違うというところですね。
イギリス・フランス連合軍を見て思ったところは「そんな本土の奥深く(イギリスにとっては本土直前)まで制空権を取られる前になんとか手を打てなかったのか」ということでした。
私は歴史を知らないのでそれまでの経緯は知りませんが。
最終的にはドイツは敗北してイギリスは勝利しましたけれど、この1940年5月~6月時点ではイギリス・フランスにとってかなり分が悪かったのだと知りました。
兵器の話だと、イギリス人の「スピットファイア」ヒーロー扱いに、名機だったのだなあと思いました。
「スピットファイアならなんとかしてくれる!」って感じでしたね。
反対にドイツ側は「Uボート」があり、イギリス兵たちが敵国の最新鋭潜水艦に怯える様子は分かる気がしました。
いつどこから来るか分からず、常に狙われている脅迫概念を持たされ、そして一度魚雷が船に命中すればほぼ沈没は免れない。
ただただ恐怖。
あと空戦は『トップガン』などの戦闘機などにあるハイテク機材が一切なく、もっさりした感じを受けました。
ですが、その分生々しさを感じました。
どんな形であれ命懸けの戦闘は緊張感がありますね。
命を落としてしまった少年やトラウマ抱えた兵士とか船乗りのお父さんや勇敢にも助けに来てくれる民間船の人たちなど感情移入ポイントは多々あるのですが、「後手すぎる……」という感覚の方が強く印象に残っていました。
歴史に詳しい方は言いたいことがおありかとおもいますが、私はダンケルクの撤退戦はおろか第二次世界大戦のヨーロッパの状況もこの映画を見るまで全然知りませんでした。
だから再び将棋で例えると、「飛車、角、金、銀全部取られて、手持ちの駒は歩が一枚のみで、王が逃げようとしている」という、もうどうしようもない状況。
なので「そんな本土の――」という感想になったのでした。
ただ、例え全員を救うことができなくとも一部でも救うことができれば次の戦いに活かすことができます。
それに救出を安易に諦め自国の兵士を捨て駒にすることは戦意の問題にも関わってきます。
だから民間人を使ってでもなんとか自国の兵士を帰還させようという姿勢は理解できます。
映画の最後の方に出てきた新聞の文章は、映画を綺麗に締めくくるものであると同時に、国民の戦意高揚をうまく煽っているなと感心しました。引用は映画の字幕です(こちらもチャーチルのものなのでしょうか?)。
撤退による勝利はない
だが この救出劇は1つの勝利だ
奇跡の脱出に感謝する
目を閉じてはならない
フランスとベルギーでの軍事的大失敗に
次の嵐がすぐそこに迫っている
我々は諦めない
フランスで戦う
海で 大海原で戦う
ジョージ・ミルズ 17歳 ダンケルクの英雄
そして、チャーチルの演説は素晴らしいと思いました。こちらも映画の字幕です。
いや増す自身と力で空で戦う
いかなる犠牲を払おうとも
我々は海岸で戦う
上陸地で戦い 野原で 街で戦う
丘で戦う
決して降伏しない
ダンケルクの知識など全然ない私は、映画のラストで33万人が救出されたという情報を見て「そんなに!?!?」でした。
知識がないと理解できない。
『インターステラー』を見た時もそうでした。
これぞクリストファー・ノーラン監督。
それと劇伴について。
視聴時にこのようなコメントをしました。
”劇伴は半音階、不協和音、上昇音型、不安定な音程と、人間が心理的に嫌なものの連続”
ひたすらこれ。
そして最後は不協和音じゃないきれいな和音のオーケストラが流れ、救いや希望の場面を演出していました。
『スターウォーズ』や『ゴジラ』の様な記憶に残るメロディーはなく、音の演出に徹底していましたね。
終わりに
「絶望しかないんですか!!?」
という場面を繰り返し見ることになるので1人では見ようとは思わない映画です。
他の人とテキストチャットで会話をしながら見れたことで、さらに詳しい方の説明があってとても充実感のある時間になりました。
内容的に全て見ると結構疲れたのですが、これがまさか2時間にも満たないものだとは……
密度が濃い!
ノーラン監督の作品は映像と劇伴がとても素晴らしいですね。
こだわりとクセのある監督だと思います。
この映画は最後に救いがあるので鑑賞後はまあホッとできました。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と違ってね!