日曜日の朝。ホテルから最寄りのバス停に少し早めについたのでゆっくり写真をとっていた所、実は道路が封鎖されていたらしく、たまたま携帯開いてクラスメイトからのWhat's appのメッセージに気づいて、別のバス停までダッシュ。なんとか授業開始時間ギリギリに到着。

 

 

○高等教育と国際化13

・地球規模化:強制力、論議、実践

・講師:John Davies

・事前購読文献:Roger King, Simon Marginson, and Rajani Naidoo (eds.): Handbook on globalization and higher education: Edward Elgar, Cheltenham, UK and Northampton, MA, USA, ISBN: 978-1-84844-5857   Please read Chapter 2.  

・概要と議論:

(1)基本的な考え方

地球規模の課題に対する組織的な戦略を創出し地球規模での考察を行う

 

(2)地球規模化と国際化

1)地球規模化

・国境や国家による制限に縛られない、国境を越えた検討課題への対応

・地球規模の高等教育機関資本主義:大量消費主義、国家基準に対比される国際基準、世界的知的産業

・共通性への同一化、基準化された製品、規模の経済

2)高等教育の地球規模化

・地球規模課題に関する研究の促進

・新たな植民地化:カリキュラム

・ランキング、評価に基づく序列

・異なった組織、分野間での連携の促進

3)概念として異なる解釈

①超地球規模主義的理論

・地球規模の力学により国家はその役割を減少

・国境を越えた協力が政府の経済的及び政治的活動に置き換わる

②懐疑的理論

・地球規模化は神話:欧米が世界の仕組みを支配し、国境を越えた協力を促進し、新自由主義の考え方を浸透させるためのもの

③移行主義的理論

・現実に世界規模でのイノベーション、金融と起業運営機能を含んだ戦略的基幹活動が存する地球規模経済の活動。この活動は情報革命、経済自由主義、資本と人の移動により可能となる

・国家は消滅せず、国家は地球規模の強制力に対して開示をし、地球規模の強制力は国家の運営を変更する。

4)地球規模化と国際化

①国際化との関係と国際化の定義

・高等教育の諸活動(教育、研究、知の共有、地域発展、学生支援)を国際的な次元に統合するプロセス

・国際的な次元:共同研究、多様な背景を持つ博士課程学生、地球規模で活躍できる人材の育成(インターンシップ、海外留学等

②地球規模化が国際化と異なる点

・国境を越えた課題の中心であること

・諸活動が国境に縛られないこと

・高等教育機関の国内活動への影響があること:エラスムス計画など

・時間的及び空間的関係性の変化があること:必ずしも物理的にキャンパスにで学習する必要がなくなる

・国境を越えた協力が促進されること

③高等教育における境界の消滅

・キャンパスの空間と時間に制約されない

・国境や国家の仕組みに制約されない

・組織と教育主体の関係の曖昧化ー大学と企業の協働教育、成果は研究開発のみならず起業へも

・職業人生と学修者の関係の曖昧化ー生涯学習

④学生の様態・定義の曖昧化

・フルタイムかパートタイムか

・学修者か所得収入者か

・有経験学生:専門分野変更、再挑戦、キャリア更新

 

(3)高等教育の地球規模化の要因・推進力

1)国を超えた地球規模の環境問題、技術問題など

・学際性に対する協力的対応

・開発援助

2)多文化的価値観の現出:倫理との関係

・生起する価値観:高等教育機関による従業な価値観の保持

例)大学マグナ・カルタ・観測機構

3)高等教育機関への影響を伴う国際政治課題

例:ユネスコ

・民主的市民権

・正義、公平、アクセス

・ジェンダー

・生涯学習

・気候変動と持続可能性

・貧困

・COVID

4)経済的相互接続性

・国際労働市場と流動性

・留学生のモビリティと教育

・資格証明(credential)移動

・研究開発

・多国籍

5)知識社会/知識経済とその影響

・デジタル時代における知の産出とその交換に対する影響

・製品およびサービスの付加価値

・神経回路の先端の増殖:複雑な連鎖

・「課題解決策」の普及

・ 第2段階:イノベーションと 学際性

6)高等教育機関における競争

①学術 

・地位/ランキング

②政府

・ 競争的/選択的な資金調達

・国際競争に対応するための高等教育機関の卓越性の確保

・国内における高等教育機関の序列

③市場 

・規制緩和 : 数量、経費

・機関の性質と競争優位性:市場分析

・多様なプロバイダー : 公的、私的

・計画と市場動向間の緊張

・消費者主義:製品、価格、品質、場所、権利

7)個別または国境を越えた競争戦略

・垂直的統合:大学による海外分校設置 例:ノッティンガム大学

・水平的統合:他機関との連携

・コンソーシアム、連合、合併  例:欧州神経科学大学

 

 

8)世界貿易の文脈における高等教育の地球規模化

①サービス貿易の一般協定 (GATS) と GATS および WTO との関連

・対象となる具体的教育サービス : インターネットを介した教育:電子ネットワーク商取引

・電気通信への平等なアクセス: 他国機関による教育サービス提供

・電子成果物に対する課税/関税及びプライバシーの保護の問題

②GATS/WTO による貿易紛争検討フォーラム

・個々の政府:サービスが開放されているか、どのような制限が課されているか、期間指定が可能

・EU は単一の実在として運営され、高等教育機関 を含む 4/5 の下部組織でコミットメント

・EUは現在、米国との「貿易戦争」に関与しているが、高等教育機関は制限には含まれていない

・各国の経済産業省と GATS 決定事項施行の対立

・消費者保護を根拠とした制限の可能性

③「サービスの貿易」に関する問題 : GATS と WTO はによる貿易障壁の撤廃

・哲学的立場:高等教育は取引される商品なのか

・肯定的利益:国の定める教育システムへのアクセス、補足、強化:→教育の質の向上

・否定的可能性 : 植民地主義、頭脳流出、現存する高等教育の溶解、利益追求、不平等の固定化

④海外消費 

・学生の移動を通じた「輸出業者」「見本市」高等教育機関に対する市場機能の障害:入国要件/ビザ制限、 為替、単位認定制度の欠如 

⑤商業的実在としての高等教育機関

・他国に実在/仮想の施設を設置することによる活動:フランチャイズ、共同教育、連携、直接投資(落下傘)

⑥高等教育の国際取引における障壁

・活動に必要なライセンス取得が不可

・直接投資に対する制限

・相手国の国内要件

・試行を経る必要性

・外国人教員採用の制限

・国公立大学による独占

・相手国における学生支援が不適正

・税制上の差別

 

9)国際的基準確立としての地球規模化

①概要

・地球規模化において求められる課題との格闘 : 高度産業化社会の発展の一部分

・技術的な問題に限定されない:利害関係者が戦略を生み出す場→自己利益のための国際的、機関相互関係、超国家的な解決策

・市場統合から政治的統合への波及

②国際的基準

・資格証明 = 品質基準 (中身、評価、肩書)

・価値の象徴 : 劣化 (査読、専門機関)への対抗

・教育自体の質:特に大衆教育化した高等教育機関における、多様化・成果に対する利害関係者の信用・国境を越えた関心

・利害関係者の関心 :

I.  高等教育機関:「伝統、卓越性、査読、外部性、時間的次元への訴求」「評価による競争 : 地球規模化によって激化するエリート機関と新規参入機関との対立」

II.エンドユーザー:「修了に対する資格証明: 将来保証に対する要求」「社会階層における意味付け」「高等教育機関に代わる代替者(企業を含む)の検索」「 エリート機関の維持」

III.政府:「文部科学省・経済産業省・財務省の役割」「条件付補助金提供」「規制と自律性」

③社会の地球規模化

・社会的及び文化的価値観と基準の収斂→全国的議論を喚起

・最良の事例 : 援用、横方向への学修、監査/見直し(OECD、EUA(欧州大学協会)、専門職能・資格認定団体)

・特定の設定

・認証評価の地球規模ネットワーク:「文化的帝国主義」による国家の仕組、 関係性、 適切性の弱体化

④市場の地球規模化

・資本、労働、商品及びサービスの自由移動に対する障壁撤廃と世界市場化: 国内政策の選択肢の減少

・起業家精神:多様な影響力と専門知識 、学生の移動の多様化、英語、資格情報やブランドイメージ(目安としてのランキング→ 国際的に通用するカイトマーク(英国規格協会認証)の不足)、歴史的関係を踏まえた イギリス・フランスの 開発途上国の公共部門と民間部門に与える影響、熾烈な競争と異なる優位性

⑤政治の地球規模化

・開発途上国の教育制度は、先進宗主国の正当性/基準設定に依然依存

・国際的システムの開発における明示的根拠・ヨーロッパ連合化の着手

I. 高等教育市場の政治的構築

→ヨーロッパとアメリカ、授業料における選別、国境を越えた学生の移動枠組 (派遣/受入(数)の対立)、

相互承認 – NARIC (https://www.ecctis.com/)、支配的な「媒介」の認識 (英国、ドイツ)、単一の「媒介」: ECTSー 専門資格の統一的媒介の設定は困難

II. 質保証規格推進と質低下の回避

→質保証のための欧州共通枠組、調和と調整、実験計画の実施、比較から均一性 への移行(EU)

III. 国際的評価という資産の活用 : 利益再構築のための基準設定体制 : 連合とネットワーク

→国内及び国際的な競争力向上、名声と評判による集団、新たな資金活用 (EU の役割)、国家事業の基準点

 

10)大学への戦略的示唆

1)内的要因

①理念・伝統・自己概念

②強みと弱みの評価:プログラム・人材・財政

③組織的・構造的リーダーシップ

2)外的要因

①外的自己認識

②傾向・機会・外的制限の評価

③競争優位性の評価

 

11)結論

・とてつもなく複雑な現象が価値、文化的な考え方の枠組みを含め大学の変革を呼び起こしている

・組織の戦略を示唆するものは、容態、伝統、領域、規模、健康と効率性、持続可能性に関係している

・大学的・官僚的なものと起業的・起業的な考え方の間の緊張とバランスが変化している。

 

12)議論と意見交換

・アフリカでは銀行が提供するビジネス学修プログラムの方が大学より質が高いというケースがある

・高等教育機関の教育・研究機能への焦点化に地球規模化が影響を与えているのでは

・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでは少人数学生に絞った教育を展開しているが、これは多数の学生獲得:収益化という市場化とは異なった動きであると言える。

・学問の自由、透明性、誠実さが大学の規範的価値観という考え方は物議を醸すことがある。地球的規模で認識される価値は何か、という問いである。

・人とその知の自由な往来において、現状の課題に対応する最適解としての学際性が導き出される

・ジャーナル等への掲載だけではない、研究インパクトが重要視されている。例えば地球規模の持続可能性に関する研究には大きな資金がつく傾向がある。

・競争における学術、政府、市場の対立が既存の秩序を脅かしているという側面もある

・地球規模化の推進力はこれまで経験したことのない新たな機会を創出するものでもあると言える

・教育(サービス)を交易するという考え方がそもそもありうるのか。単位の互換は考えられるが学位はそれ自体で存在するものではないか。

・教育(サービス)を商品とする考え方がある一方で、自由に無料でアクセスできるものとする試みもある

・他の商品と同様国境を跨いだ教育(サービス)の提供には例えば相手国の政治体制などの条件が大きな影響を持つ

・国際的な評判(ブランド)の向上のために、例えば認証評価対応などに多大な投資をしているという事例もある

・教育サービスの末端使用者としては自身の学位が国際的互換性を持つことが重要である

 

○高等教育と国際化14

・高等教育と持続性

・講師:Annie Snelson-Powell

・事前購読課題:

1)Augustine, G., & King, B. G. (2019). Worthy of debate: discursive coherence and agreement in the formation of the field of sustainability in higher education. Socio-Economic Review, 17(1), 135-165.

2)Hoover, E., & Harder, M. K. (2015). What lies beneath the surface? The hidden complexities of organizational change for sustainability in higher education. Journal of Cleaner Production106, 175-188.
3)Rusinko, C. A. (2010). Integrating sustainability in higher education: a generic matrix. International Journal of Sustainability in Higher Education11(3), 250-259.

・概要と議論:

(1)持続性の必要性:現代の課題

・地球温暖化

・ESG(Environment Social Governance)投資の増加

・The 27th session of the Conference of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change

 

(2)持続性とは:理論と実践

1)持続性の言葉が示すものは何か

2)持続性とは

・将来世代の必要性を満たすための能力を含むことなく、現代の必要性を満たすこと

3)国連によるSDGs

①議論:高等教育におけるSDGsの17の目標の順位づけ

・大学が単独で貢献できることは限られているのでパートナーシップが重要

・飢餓や水不足など開発途上国と先進国で実情や影響が異なるということがある点からもパートナーシップが重要

・高等教育であるから当然教育の質は重要であるが、全ての活動の土台となる飢餓の撲滅も重要な課題であり、教育・研究はもちろんのこと、経済的に豊かではない学生に対する奨学金なども役割として考えられる。

・大学はビジネスとは違った観点で果たせる役割が大きい。

・現状を維持しようとする姿勢や、SDGsの取り組みが結果としてSDGsの達成を毀損することもあり、議論を醸している

・大学の持続可能性はどの観点で評価するか、ということにも大きく依存すると考えられる。

・先進国でもコロナの影響で孤立した学生や学校給食の提供がなくなった影響による飢餓が発生した。

 

(3)高等教育に何が起きているのか:環境・社会・経済的持続性の活動

1)事例

①学生の未来につながる環境保護に対する著名な学者による宣言

https://www.timeshighereducation.com/blog/why-universities-need-declare-ecological-and-climate-emergency

②高等教育の脱植民地化

・大学のカリキュラムに多様性の尊重や社会的正義の価値観を反映する

③大学の研究と環境保護に関する感受性の増加:石油産業株式への投資運用の引上げ要請

2)意見交換

・ロシアのウクライナ侵攻後、サウジアラビアやナイジェリアは石油の増産を要望された。しかし、こうした危機が過ぎ去ると、環境保護の観点から石油増産に対する批判が起こるようなこともあるが、持続的発展の観点からどう考えれば良いのか。

・持続性を考えるにあたって、間も無く退職する高齢層と若年層では捉え方が全く違ってくるのではないか

・アメリカのインディアンは限られた部族の持続性という観点では大変優れていたという考え方もあるが、地球規模化した現代の世界でどう持続性を確保するのか

・フランスでは大学が投資を行うことはできない

・大学が運用を行うことは米国の大学に由来する

・学費を投資に使うことに批判が出ることは当然では

・国際会議においてトランプ資本のホテルの使用をキャンセルしたり、ロシアの研究者の招聘を取りやめるといった動きは政治的な影響であり、これと同じような影響が持続性にも起こりうるのでは

3)グループワーク・意見交換:各自の大学の持続性に対する高等教育機関の活動

・カタールの2030ビジョンでは全ての人が教育へアクセスできることを目標に掲げている。

・Bath大学では低炭素の考えに基づく工学分野に力が注がれている

・シンガポールはパートナーシップに重点を置いており、アフガニスタンの女性100人に対するプログラムを提供したり、研究成果を他国の開発に資することに取り組んでいる。

・オハイオの大学では学生企画を公募し資金援助をすることで、地域の企業との継続的発展のプロジェクトを支援している。学生は単位の取得や、就職にあたっての業績としてレジュメに記載することができる。

・UAEの大学では学生が持続可能性についての疑問を検討するワークショップを開催さしている。

・エネルギー消費量のランキングづけを行うことで可視化している

・卒業生の持続可能性に関する活動を大学の教育に活用している

 

4)高等教育における持続可能性の主要な活動:以下活動の相互連関が大学の文化を形成

①キャンパス運営

・交通、廃棄物、水、建物、エネルギー、物品購入

②中心的戦略

・戦略、ビジョン/ミッション、政策と計画、経済性とアクセス、幸福と健康、多様性と受容、社会的支援と社会的関与、投資の決定

③カリキュラム

・持続性研究と教育、持続性に係る知の創造と普及

④対話とコミュニケーション

・論議のためのプラットフォーム

 

(4)高等教育における持続可能性進展の推進力と障壁は何か

1)推進力

①推進力5つのOs

・運営の効率性(Operation)

・規則と認証評価体への帰属(Obligations)

・社会の期待への対応と社会的適法性の獲得の機会(Opportunities)

・市場の必要性への対応(Opportunities)

・組織的倫理/リーダーシップ(Organizational)

2)障壁

①何故持続可能性は難しいのか→各自の高等教育機関における障壁について議論

・価値観や信念:例えば全自動洗濯機が導入された後も様々な考え方によりあえて手洗いをするという事例

・持続可能性に対する過度の期待

・リーダーシップ・意思決定における多重階層の弊害

・組織の方向性と個人の利害の対立:冷暖房の使用の制限等

・意思決定におけるコストの検討の必要性

・持続性に向けた新たな取り組み自体が持続性を阻害するという逆説

 

③持続可能性をめぐる二項対立

・競争か協力か

・個人の活動に報いるか組織的に実施するか

・リーダー及び専門家か草の根の活動家

・各領域内か境界を超えるか

・大学の合理的・実践的文化か環境的・全体的世界観か

・役割の固定化か自律した役割か

・各領域の構造化か人間中心の活動家

・既存の価値観の範囲内か新たな考え方を取り入れるか

 

(5)高等教育における持続性のための戦略開発の手段

1)SDGs17のゴールと科目内容の対応表作成

2)Rusinkoの高等教育の持続可能性マトリックス

・縦軸:焦点(広い:異分野融合→狭い:特定分野)

・横軸:実施方法(現存する構造→新たな構造)

①第一象限(狭い・現存する構造)

・既存の科目、専攻、プログラムへの統合

②第二象限(狭い・新たな構造)

・分野に特化した持続可能性のための科目、専攻、プログラムの開講

③第三象限(広い・既存の構造)

・共通要件への統合

④第四象限(広い・新たな構造)

・異分野融合の持続可能性のための科目、専攻、プログラムの開講

3)意見等

・フランスでは大臣の指示により高等教育機関における持続性の統合が必須となった

・高等教育機関が持続性に対する専門性を幅広く浸透させることが重要である